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ともに人手不足。農業と物流はどう変わっていくか

齋藤 祐介

ライター:

ともに人手不足。農業と物流はどう変わっていくか

今日、私たち消費者の食卓や近所のスーパーにはさまざまな食材が並びます。そのほとんどが他の地域で生産されたものではないでしょうか。その多様な食材の供給を支えるために、遠く離れた生産地と消費地を結ぶ物流が重要な役割を担っています。
物流業界に目を向けると、農業と同じように人手不足が起こっています。2017年から「物流クライシス」という名で問題が表面化してきました。ともに人手不足で、互いに深い関わりを持つ農業と物流。本記事ではその関係性を見ていくとともに、課題解決に向けた取り組みを紹介します。

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農産品を運ぶ物流

農産品の物流は、遠く離れた生産地と消費地を結び、多様な食生活を支えています。東京都中央卸売市場にも全国各地から農産品が集められ、野菜においてはその半数程度が関東外から入荷している状況にあります(2015年度、農林水産省調べ)。

このように重要な物流ですが、農産品という搬送物はその特性から配送業者に敬遠されています。農水省資料によると、輸送のほとんどをトラック輸送が担っていますが、農産品輸送は他搬送物に比べて難しい搬送品のようです。

まずひとつ目の問題は、長時間の拘束です。出荷量が直前まで決まらないことから手待ち時間(すぐに作業できる状態で待機している時間)が長く、長距離の輸送があることが拘束時間を増やしています。また、小ロット配送と帰り荷がないことで積載率が高められないことも問題視されています。加えて、いまだに手積み手降ろしが多く、重労働ということも敬遠要因のひとつです。

これから生産者と消費者を直接結ぶ産地直送も広がっていくと思われます。そうなるとますます小ロット配送が増えることから、上記の課題の難易度はさらに上がっていき、現行のオペレーションが立ち行かなくなることは容易に想定できます。そのため、省庁や各企業は構造的改善に向けて歩みを進めています。

農業と同様に高齢化する物流業界

農産品物流だけでなく物流産業全体に目を向けても、人手不足という大きな課題があります。主な原因は、Eコマース(電子商取引。ネットを介した販売など)の普及が背景となる配送量の増大と、時間指定や再配達といった手間のかかるサービスの拡大です。

2017年にヤマト運輸や佐川急便など業界大手各社は運賃の値上げと集荷量の制限を行うことで対応していますが、これからも増え続ける配送量やサービスニーズに対応するには根本的な改革が必要なようです。

また、農業ほどではありませんが、物流業界でも高齢化が問題視されています。大型トラックドライバーの年齢構成に目を向けると、20代・30代の割合が、2001年には5割以上を占めていましたが、2015年には約2割まで比率を下げています(厚生労働省調べ)。長距離輸送もある業界なだけに、高齢化が進むと対応できないサービスも増えてくるかもしれません。

共同配送を手がけるやさいバス

さまざまな課題を抱える農業×物流の領域ですが、多くの企業や行政が課題解決に向けて動き始めています。

静岡県を中心に活動する「やさいバス株式会社」は、野菜の共同配送を実現する物流システムを提供しています。「やさいバス」と名付けられたトラックが、特定のルートにあるバス停を巡回しながら、そのバス停で生産地からの集荷と販売店や消費者への出荷を行うという仕組みです。

画像提供:やさいバス株式会社
地図データ ©2018 Google、ZENRIN

いままで小ロット配送で積載率が低く、その割に手間がかかっていた野菜物流ですが、バス停を巡回する共同配送を行うことで、物流費を抑えたサービスを展開しています。

このような共同配送を実現することは、単なるコスト削減だけではなく、農産品流通の大きな課題を解決するかもしれません。

都内の中央卸売市場の約半数は関東以外からと上述したように、地方で生産された農産品は物流の過程で、一度都市の中央卸売市場に集められてから、再配送をされるという仕組みを取っています。具体的には静岡県産の野菜が一度東京の大田市場に集められて、また静岡のスーパーに並ぶということが起こっているのです。

物流を集約することには、コスト削減や情報交換の促進などの良い効果もありますが、輸送コスト増大や農産品の鮮度低下といったデメリットもあります。また、テクノロジーが発展した昨今、集約しなくとも効率的な物流は構築可能なはずです。

やさいバスのような共同物流は、農産品の地域内流通の活性化にも一役買ってくれるかもしれません。

 
やさいバス株式会社
 

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