農業も化学だ! 野菜づくりの3大栄養素【畑は小さな大自然vol.24】

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農業も化学だ! 野菜づくりの3大栄養素【畑は小さな大自然vol.24】

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農業も化学だ! 野菜づくりの3大栄養素【畑は小さな大自然vol.24】
最終更新日:2019年06月03日

こんにちは、暮らしの畑屋そーやんです。野菜が育つ時の3大栄養素と言われるチッソ、リン、カリウム。野菜づくりに興味がある方なら一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。でも、あまり馴染みのある言葉ではないですし、イメージが湧きにくいですよね。でもこれらの栄養素は常に地球上で絶え間なく循環しているもので、その循環の一部として植物が利用しているにすぎません。その循環の仕組みを知ることで、イメージしやすくなりますし、またその循環を利用することで野菜づくりに応用することもできるようになります。ぜひ最後まで読んでください。

野菜づくりの3大栄養素って?


野菜が育つのに必要な栄養素は種類によっても微妙に異なりますが、基本的には17種が必須栄養素とされています。そのうち必要量がもっとも多いのが酸素(O)、水素(H)、炭素の3つです。しかし、これらは空気と水から吸収することができるので、野菜づくりの時はほぼ考える必要はありません。確かに二酸化炭素(CO2)と水(H2O)の中にこのO、H、Cが含まれていますね。

その次に多く必要な栄養素がチッソ(N)、リン(P)、カリウム(K)です。この3つが特に野菜作りに大切だということで、3大栄養素と言われています。他の微量しか必要としない栄養素はもともと土の中にある量で足りることも多いのですが、これら3つはよほど肥えた土地でなければ不足してしまいます。まずはこの3大栄養素について理解していきましょう。

野菜づくりの3大栄養素の働き


チッソ、リン、カリウムの3大栄養素。まずはこれらがなぜ必要なのか、どんな働きをしているのかを見ていきます。

チッソ(N)は「葉肥え」

植物の体を作るタンパク質や光合成をする葉緑素の元となります。また遺伝情報を継承したり、発現するDNAなどにも必要となりますので、とても大事な栄養素です。チッソを入れると茎や葉が大きくなるということで、「葉肥え」と呼ばれることもあります。この窒素が不足すると野菜が大きくならなかったり、葉緑素が不足して葉が黄色くなり、光合成ができなくなります。

リン(P)は「実肥え」「花肥え」

代表的な役目は、DNAの材料やエネルギーの運搬役です。特に子孫を残すために大切になる実や花が育つのに必要だと言われていて、リンが不足すると実や花の付きが悪くなります。そのため「実肥え」、「花肥え」と呼ばれることもあります。

カリウム(K)は「根肥え」

上の2つは植物の体の元となる栄養素でしたが、カリウムはこれとは違って、サポート的な働きをします。例えば光合成でデンプンを作る時、それを糖に変える時、糖からビタミンを作る時などにカリウムがその反応を助けます。細胞壁は糖分からできていますし、植物は寒さから身を守る時に体内の糖度を上げることで凍らないようにするため、カリウムが不足すると寒さや病害虫に弱い野菜になります。

またカリウムは根や芋の成長を促すということで、「根肥え」とも呼ばれます。これは植物は根にカリウムを溜め込み、浸透圧を高めることによって水分を吸収しているからだと考えられます。またジャガイモやサツマイモなどのデンプンを溜め込む野菜にとっても、デンプンを作るときにカリウムが必須になるため、この点も関係してきそうです。

いずれの栄養素も野菜全体の成長には不可欠

ちなみにチッソ、リン、カリウムはそれぞれ葉肥え、実肥え、根肥えと呼ばれますが、これは決して使われる部位が葉・実・根に別れているという意味ではありません。3つとも野菜全体の成長に必要で、根が発達する時期、茎や葉が成長する時期、花を咲かして実をつける時期に必要な割合が違うというような意味で覚えていただければと思います。

自然界での3大栄養素の循環

チッソ循環の例。微生物が大きな役割を担っている

自然界では不足しがちな栄養素とはいえ、自然の植物たちはこの3大栄養素をどこかかしら調達し、そして排出するという循環が行われているはずです。一体どんな循環が行われているのでしょうか。

チッソの循環

チッソは植物に限らず、ほぼ全ての生き物にとって、その身体を構成するためにとても重要な栄養素です。理科の授業で習った通り、空気中の約8割を占めていますが、非常に安定している状態であるため、植物をはじめとするほとんどの生き物たちはこれを直接利用することができません。
しかし、ある種の微生物たちは空気中の窒素を土中に取り込むことができます。この働きを「窒素固定」と呼びます。マメ科植物はこの窒素固定を行う菌と共生関係を築くことによって、痩せた土地でも成長しやすい性質を持っています。また雷の放電によっても、窒素固定は行われます。雷のことを「稲妻」と呼ぶのは、窒素固定によって、稲の成長を促すからだと言われています。

動植物の死骸や排泄物の中にあるチッソをリサイクルするという方法もあります。土の上に積み重なる生き物の死骸や排泄物を微生物が分解して、その中のチッソを植物が吸収しやすい形にすることで、次の世代の植物が育ちやすい良い土壌になっていくわけです。そして最終的には土壌中のチッソを空気中に放出する微生物もいて、過剰なチッソが空気中に還されることでチッソの循環が行われています。

リンの循環

リンは特に日本の土壌では不足しがちな栄養素だと言われています。なぜかというと火山灰土などに含まれる鉄やアルミニウムとくっついてしまい、植物が吸収しにくい形になってしまうためです。そのため日本の土壌はもともと植物が利用しやすいリンが少ない土地が多いようです。
リンもチッソと同じように生き物の身体や排泄物に含まれているものを再利用することでの循環が行われています。特に動物の糞や骨には多く含まれているため、これらを発酵させたものや、堆積物を細かく砕いたものが、農業では積極的に活用されます。

カリウムの循環

カリウムは地球上の鉱物に多く含まれています。そのため植物は根から酸を出して、鉱物からカリウムを溶かし出して吸収しています。そしてそのカリウムは落ち葉としてまたは自身が枯れることによって、土中に還元されていきます。そのため落ち葉や枯れ草にはたくさんのカリウムが含まれています。

自然の循環から考える3大栄養素の補給


これら3大栄養素の循環を知っていると、それを利用して畑への3大栄養素の補給に応用することができます。

チッソの補給

チッソは動植物の死骸や排泄物に多く含まれていますので、基本的にそれらを発酵させた堆肥を使って補いましょう。また特に痩せている土壌では積極的にマメ科植物を植え、窒素固定菌を土の中に増やすことで、土中のチッソを増やすことができます。

リンの補給

日本では土中にリンがあっても、植物が使えない状態になりやすいため、自然に生える雑草はリン酸が不足した状態でも生きられるようになっているものが多いようです。
しかし野菜だとなかなかそうはいきません。特に夏野菜は実を大量にとるものが多いため、意識的にリンの補給することと、それを効率よく吸収する工夫が必要となります。リンを多く含むのは動物の糞や植物の実や種です。有機堆肥として使われる牛糞、鶏糞、豚糞などはこれにあたりますし、イネの種である米の削りかすである米ぬかも、リンの補給として期待できます。

またリンはカルシウムとも結びついた状態であれば、植物でも吸収することができます。そこで、カルシウムを土に補給することで、リンの吸収効率が上げることができます。一般的にはカルシウムとして石灰や草木灰が使われます。
花咲爺さんでは灰をまくことで桜の花が満開になったという話がありますが、これはカルシウムを多く含む灰をまくことでリンが吸収しやすくなり、花が咲きやすくなったという話かもしれませんね。

カリウムの補給

落ち葉や枯れ草にはたくさんのカリウムが含まれますので、これらで堆肥を作ったり、灰にしてまくことでカリウムの補給ができます。ただしカリウムは水に溶けやすいという性質もあるので雨の多い時期は特に注意が必要です。まとめて一度にたくさんのカリウムを土に入れようとしても、吸収できないものは流れ出てしまうので、こまめにまくようにしましょう。

化学的知識があると応用が利くようになる

土の栄養の量は化学的データがあると、とてもわかりやすい

今回は3大栄養素について解説してきましたが、いかがだったでしょうか。
チッソ、リン、カリウムとだけ聞いたり、肥料としてそれらを使っているだけだと、なかなか自分に身近なものとして感じられないですよね。僕も最初はとっつきにくい感じがして、そういう化学的な知識はいらないとさえ思っていました。
しかし、それらの知識があると自分で色々工夫したり、考えを組み立てることができるようになります。農法だけを知っていてもただそれを真似するだけで、応用はなかなか利きません。しかしその裏助けとなる化学的な知識を知っていると、「ここで灰をまくのはこの栄養素を補うためなんだな」とか、「じゃあこの時はまかない方が良いかも」というように自分でその時の条件に合わせて柔軟に対応することができるようになります。
少しずつでも良いですので、ぜひ栄養素の化学的な知識を身につけましょう。
 
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