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小正月とは? 〜農と暦の豆知識〜

連載企画:農と暦の豆知識

小正月とは? 〜農と暦の豆知識〜

「♪はやくこいこいお正月……」有名な歌の一節にもあるように、正月は私たち日本人にとって、とても特別な行事です。正月には、稲を守り穀物をつかさどる神様「年神様(としがみさま)」がやって来ると言われ、人々は昔からこの日を大切にしてきました。そんな正月に「大」「小」二つが存在するのをご存じでしょうか。1月1日を中心に祝う正月を「大正月(おおしょうがつ)」、1月15日を中心とした正月を「小正月(こしょうがつ)」といいます。小正月は、大正月とは異なった行事が催されることが多く、そのどれもが農耕に深い関係のあるものばかりです。

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満月の正月、「小正月」

かつて日本では、月の満ち欠けを1カ月の基準として暮らしており、人々は満月となる旧暦の1月15日に当たる日を、一年の始まりである正月として祝っていました。これは、昔の日本人が、満月をめでたいものだと考えていたことに由来するようです。

その後、新しい暦が中国から伝わり、日本でも公的な暦になると、新しい暦の1月1日が正式に正月と定められることとなりました。しかし、一般庶民の間には、新暦が導入された後も「1月15日=正月」という意識が残っていたため、両者は「大正月」「小正月」と区別されるようになったといいます。

地方に伝わる農耕行事

小正月には農耕に結び付いたさまざまな行事が古くから行われてきました。日本各地に伝わる多彩な行事は、主に「豊作祈願」「吉凶占い」「悪霊払い」の3つに大きく分けられ、現在なお執り行われている地域もあります。

豊作祈願

餅花(もちばな)

豊作祈願の代表的な行事に、餅や米の粉などを団子状に丸め、枝に刺して飾る風習「餅花(もちばな)」「繭玉(まゆだま)」があります。一年の穀物の豊作を祈願する意味を込め、稲の花に見立てて作られるのが「餅花」、蚕を育てる養蚕農家などが「よい繭がたくさんできるように」との願いを込めて作るものは「繭玉」と呼ばれます。豊作祈願には、ほかにも、柿の木などの果樹にたくさん実をならせようとする「成木責め(なりきぜめ)」という一風変わった行事も伝わっています。二人組が木の下に立ち、「なるかならぬか、ならねば切るぞ」の“はやし言葉”で一人が木の幹に小さな切り傷をつけたところに、もう一人が果樹になったつもりで「なります、なります」の言葉と共に小豆粥(あずきがゆ)を塗ることで、果実の豊作を祈ります。

吉凶占い

小豆粥

吉凶占いでは、有名なものに「粥(かゆ)占い」があります。かつて神社などでは、大釜で粥を炊き、その炊き上がり方によって、その年の五穀の収穫の吉凶を占っていました。また、小正月に小豆粥を食べると一年間健康でいられるという信仰があり、小豆粥を食べる習わしもあったといいます。前述の「成木責め」に小豆粥が使われていたのは、小豆粥が小正月を代表する縁起の良い食べ物であったからなのかもしれません。

悪霊払い

どんど焼き

悪霊払いの意味を持ち、いまでも全国的に行われているものには、「どんど焼き」や「鳥追い」などの行事があります。どんど焼きは、大正月に飾った門松、しめ飾り、書き初めなどを家から持ち寄って焼く火祭りのことで、「どんと焼き」「さいと焼き」「三九郎焼き」「左義長(さぎちょう)」などと地方によってさまざまな名前で呼ばれます。かつては、この炎や煙に乗って年神様が天に帰っていくと考えられていましたが、ほかにも「送り火に乗って悪霊が立ち去る」「火に当たると若返る」「尻をあぶると長生きする」といった迷信を持つ地域もあったようです。昔の人は、火を特別で神聖なものと考えていたのかもしれません。

一方「鳥追い」は、名前の通り農作物の大敵である鳥の害を取り除こうとする行事のことです。昔はこの日に、子どもたちが小正月の行事用にヌルデやヤナギの木で作った「祝い棒」で地面をたたきながら、鳥追い歌を歌って各家を回り鳥を追い払う光景がよく見られたといいます。

以前は正月として祝われていた小正月が、農耕行事と密接に関わっているというのは面白い事実です。昔は、それだけ農業が人々の生活の中心であったということなのでしょう。月を眺め、一年の五穀豊穣(ほうじょう)を願う……そんな風に1月15日を過ごすのも、また日本人のあるべき姿なのかもしれません。

 

参考
「日本の年中行事百科 民具で見る日本人のくらしQ&A」
著者:岩井宏實(監修)
出版:河出書房新社

「諸国年中行事」
著者:速水春暁斎(著)、森川保之(画)
出版:八坂書房

「日本の年中行事1 1月・2月」
著者:深光富士男(著)、竹内誠(監修)
出版:学研プラス

 
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