スマート農業を加速化する全国プロジェクト
「スマート農業技術の開発・実証プロジェクト」は、ロボットやIoT、AI等の先端技術を使ったスマート農業の社会普及を支援するために設けられたプロジェクトです。名前にもあるように、研究開発というよりも、現場での実証を目指したプロジェクトです。
プロジェクト期間は2年間、予算は約61億円あり、全国で複数の案件が採択される予定です。公表はされていませんが、各都道府県からまんべんなく採択されることが予想されます。
応募をするにはコンソーシアム(特定の目的のため複数機関から構成される団体)を組織する必要があり、そのメンバーとしては農業者や農業関連メーカー、研究機関、行政機関などの参画が想定されています。実証場所となる農場が必要ではありますが、農業生産者のものである必要はないそうです。
対象は水田作、畑作、露地野菜・花き、施設園芸、果樹・茶、畜産と幅広くカバーされています。提案者は、この一つの分野を選び、栽培から収穫、経営管理までを一貫して改善できる案を提出する必要があります。
プロジェクトの公募は、2019年1月4日より開始されており、同年2月4日に締め切られます。委託先の決定は3月中旬~下旬ごろが予定されています。
進む高齢化に求められる省力化技術
上の図は、農業就業者数の推移を表したものです。農業就業者の半分以上がすでに65歳以上(赤グラフ)となっており、高齢化の進んでいる事が一目瞭然です。人口減少も著しく、2014年に261万人いた農業就業者数は、2018年には175万人と90万人程減少し、このままのペースでいくと2025年には100万人を割ることが予想されます。
農業就業人口が10年以内に半減すると予想されるなかで、国としても、より人手のかからない、より効率的な農業を支援する必要が出てきました。
一方で、ロボットやドローン、IoTやAIといった農業現場でも使えそうな先端技術が他産業で生まれ、大きく発展しています。
まさに現在はスマート農業が必要とされ、かつ実現可能になってきた時期なのかもしれません。
スマート農業での注目技術
今回のスマート農業加速化実証プロジェクトでは、さまざまな技術を使った提案がされることになるかと思います。その中でも注目すべき技術をピックアップしてお伝えします。
トラクター等農機の自動運転技術
AI技術の発展にともない、自動運転技術は急速に開発されてきています。農業分野でも、大手農機メーカーのトラクターやコンバインといった農機に自動運転機能が搭載されはじめています。
自動運転といっても自動の範囲がいろいろとあり、運転手のアシストをするものから、人の操作が完全に不要で自動的に作業を行うものがあります。
成果として期待されるのはもちろん省力化、そして、新規就農者の技術習得の簡易化です。
ドローン技術
農場の上空を自由に移動できるドローンも注目される技術の一つです。使い方としては大きく2つあります。センシングと作業代行です。
センシングは、ドローンに搭載したカメラから圃場(ほじょう)状況を確認することです。簡易的なセンシングでは写真を撮りに行かなくても状況がわかる、というような効果が得られます。また、人間の目で見えない波長が撮影できる「マルチスペクトルカメラ」などを搭載することで、人間では知覚することのできない植物の状況を知る事ができ、収量向上に役立てることも期待できます。
また、いままで人手で行っていた肥料・農薬散布といった作業を、ドローンが代行してくれる事も期待されています。
ビッグデータとの連携
露地・施設園芸問わず、すでにいくつかの農業データを持っている農場でも、それをうまく活用できているところは少ないと思われます。データに意味を持たせるためには、必要な項目の十分な量のデータを整理しておく必要があるのです。
今回のプロジェクトでも興味深い点として、各案件で取得されたデータを、事業主体である農研機構が集めて保管します。また、そのデータを「農業データ連携基盤(WAGRI)」(※)と連携することでスムーズなデータのやりとりを目指しています。
複雑な農業データをどのようにまとめるのか、整理しながらもどの程度の自由度を保つのか、難しい点もあるかと思いますが、日本全国の農業が底上げされる可能性もある取り組みです。
今回のプロジェクトは実証ですが、最終的な経営メリットまで言及されたプロジェクトとなります。実証に留まらず、次世代を担う「スマート農業」の成功事例が生まれることを楽しみにしています。
※ 農業データ連携基盤(WAGRI):民間企業などの間で、農業データの連携・共有・提供を目指すプラットフォーム。
参考
「スマート農業技術の開発・実証プロジェクト」及び「スマート農業加速化実証プロジェクト」について:農林水産省
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