土壌や作物の活性化に欠かせない苦土=マグネシウム
苦土=マグネシウムとは、作物の栄養となる炭水化物を合成している葉緑素の主成分であり、リン酸・ケイ酸との相乗効果が得られるほか、植物体内の重要酵素の活性剤としても大切な役割を担っています。
ところが以前は「特別に施さなくても、苦土は土壌中に十分含まれている」との判断が大勢を占めており、また苦土石灰に含まれる苦土だけで(さらに追肥しなくても)足りるだろうという認識もあって、あまり注目されていませんでした。
ところが一方で、苦土は植物体内に吸収されたり雨に流されたりすることで土壌中から自然に失われます。苦土が欠乏すると、葉緑素の生成が低下し光合成が衰えて炭水化物の合成が減ってしまうため、土壌にとっても作物にとっても補充が不可欠。その役割を果たすのが苦土肥料であり、苦土肥料販売の最大手がナイカイ商事株式会社です。
「苦土の原料は大きく分けて海水由来と鉱物由来があります」と説明するのは同社の由井貴志さん。同社のルーツはなんと江戸時代。現在の親会社であるナイカイ塩業株式会社が岡山で始められた塩田経営までさかのぼります。海水由来の苦土肥料(硫マグ25、スーパーマグ他)と鉱物由来の苦土肥料(エコマグ他)を東京、大阪、名古屋、福岡の4カ所を拠点に、全国各地に販売しています。

ナイカイ商事株式会社が販売する『硫マグ』(左)と『スーパーマグ』(右)

『エコマグ』(左)と『葉面マグ』(右)

『マグマンボ』
土壌分析の結果から苦土を補充し、野菜も元気に!
苦土が野菜も土壌も元気にする
「苦土が効くと葉の緑が濃く、ニスを塗ったように艶やかになります」
こう語るのは、静岡県浜松市でセルリーを生産する川合諒さん(27歳)。東京の農業大学を卒業後、家業を継ぐために浜松へ戻ってきた若き営農者であり、20~40代の若手9名でセルリー青年部を結成し、収穫祭などのイベントやレシピの公開などを通してセルリーの普及・拡大に取り組んでいます。
そもそも川合家が苦土の使用を始めたのは今から10年以上前のこと。セルリーを栽培しているハウス内で特有の病気が発生したため、土壌学・肥料学の権威に土壌分析を依頼した結果、土壌のバランスの問題を指摘。解決策の一つとして注目したのが苦土だったそうです。
先進的なJAとぴあ浜松の取り組み
農業大学で土壌についても学んだ川合さんですが、苦土の取り扱いに関しては「やはりJAの影響が大きい」と言います。組合加入数や生産高などで全国でも有数の規模を誇っているJAとぴあ浜松では、生産者の土作りのために分析室を開設し、最新の土壌分析器を導入しています。通常、研究機関に分析を依頼すると通常1カ月以上かかりますが、JAとぴあ浜松では比較的短期間で結果を出し、それに対して指導員の方がしっかり目を通してきめ細やかに指導しています。こうした科学的データに基づいて苦土の施用を含めたきめ細かな技術指導が行われているため、川合さんも「非常に心強い存在」と絶大な信頼を寄せています。今後もJAと連携して「いい土を作り、質の高いセルリーの生産に繋げたい」と語ります。
長年にわたって築かれた信頼が次世代への礎
畑にとって大切なのは”栄養バランス”
JAとぴあ浜松の営農アドバイザーの鈴木栄祐さんに話を伺いました。
「私たちがナイカイ商事の苦土肥料を取り扱うのは、同社の製品が苦土の”単材”であることが大きいですね。私が携わっているセルリー部会では年に一度、土壌を分析器にかけて状態をチェックする”畑の健康診断”を行っています。このデータを基に施肥などを指導するのですが、基本は「足りないものは入れて、不要なものは入れない」ということ。苦土が不足している畑には苦土を入れればいいのですが、問題は他の成分とのバランス。苦土を補充したいからと苦土石灰を入れてしまうと、石灰が過多な状態となり、土壌内の成分バランスが崩れてしまいます。その点、苦土単材であれば苦土のみを補充できるわけです。また、単材の方が安価である点も生産コストの抑制に繋がります。特にセルリーは種から収穫までのサイクルが半年と長いため、健全な成育を助ける苦土を重要な肥料と捉えています」
何世代にもわたって使われ続ける製品へ
今後については「土壌診断を基にしたアドバイスを続けながら、分析のリアルタイム化やよりきめ細かな診断結果の提示に取り組んで行きたいと考えています。苦土はチッソ・リン酸・カリ・カルシウムに続く重要な成分。そのため今後もナイカイ商事さんへの期待は大きいですね」と鈴木さん。
一方、生産者の川合さんは、長く使い続けたいからこそ「撒きやすさの向上とムラなく溶ける製品の開発」を課題として挙げます。
こうした話を受けて、同社の由井さんに伺いました。
「当社の最大の使命は、農家さんが安心して苦土肥料を使っていただけるよう、安定的に供給すること。当社の苦土肥料によって、土も野菜も、そして農家さんも元気になって継続的な農業経営ができることを望んでいます。おかげさまで長年にわたって使ってくださっている農家さんも多いので、こうした信頼関係を次の世代にもつなげていきたいですね」
長い歴史をかけて育ててきた農業に携わる方との信頼関係のもと、これからも何年、何十年と苦土肥料は使われ続けることでしょう。
【取材協力】
セルリー農家・川合さん
JAとぴあ浜松 東・中央営農センター
〒435-0001 浜松市東区上石田町800番地
TEL053-443-8022 FAX053-433-0288
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問い合わせ先/ナイカイ商事株式会社
〒106-0032 東京都港区六本木7-15-14 塩業ビル5F
TEL03-5785-1250 FAX03-5785-1255
E-mail:honsha09@naikaishoji.co.jp
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