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省スペースで少量多品目を実現! 40代脱サラ有機農家のパッチワーク農法

省スペースで少量多品目を実現! 40代脱サラ有機農家のパッチワーク農法

神戸市西区で新規就農をした「fresco,fresco(フレスコフレスコ)」の丸山倫寛(まるやま・みちひろ)さん。農薬と化学肥料を使わない有機農家で、“丸ちゃん”の愛称で親しまれています。「丸ちゃんの畑は面白いぞ!」との噂を聞き圃場(ほじょう)を訪ねると、畝がパッチワークのように小さく区切られ、多品目の野菜が入り混じった独創的な畑がありました。なぜこのような畑を作るのか、お話を伺いました。

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脱サラし憧れの農家に

脱サラ有機農家

──丸山さんはなぜ農家になったのですか。

僕はね、農家になるのが子供の頃からの夢だったんです。出身が岡山県の瀬戸内市で、漁業と農業が盛んな町で。少年時代は海と畑に囲まれた自然の中で走り回っていました。漁師って昼間から酒飲んでますでしょ、僕も近所のおっちゃんに呼ばれて七輪で焼いた魚を一緒に食べてたんです。ただ僕は野菜が好きなので、子供の頃から農家になりたくて。漁師のように、自分で作ったものを食べながらお酒を楽しむ生活に憧れました。

──以前は何のお仕事を?

前は福祉関係の仕事で、44歳で辞めました。まずは組織に勤めて40代で農家になるのが人生計画だったんです。退職してから最初の1年間は、神戸市内の兵庫楽農(らくのう)生活センターに通って農業を学びました。その後、神戸市西区に農地を買い、2016年に就農しました。所有地は約1反(約10アール)で、今はビニールハウス1棟と露地栽培です。他に飛び地として3つの農地を借りていて、合計すると4~5反です。

──脱サラして就農することに奥さんは賛成してくれましたか。

結婚する前から、いずれ農家になりたいとは伝えていましたからね。とうとう来たかという感じでした。話し合いは何度もしましたよ。妻は保育士で今は育休中なんですが、今後は保育士の仕事に復帰する予定です。

脱サラ有機農家

丸山さんは小学2年生と1歳のお子さんを持つパパでもあります

独自のパッチワーク農法

──無農薬の有機農家になった理由は。

僕、面倒くさがりなんですよ。農薬の使い方も学んだんですけどね、分量を量ったりするのがもう面倒くさくて。農薬を使わなくても野菜はできますし、結果的に有機農業になりました。有機農業は楽農生活センターで学んだ方法を自分でアレンジしています。

僕は80代まで農業をしたいので「無理をしない、お金を掛けない」の2つを心がけています。野菜も自分の好きなものを選んで植えてます。

あ……僕の話なんか参考になりますか? いいんですかね、これで。

──いいんです(笑)。では、野菜は年間で何品目を?

品目は50ぐらい、品種は100は超えています。トマトとニンニクが主品目です。僕はトマトが大好きで、トマトだけで10品種以上やっています。以前、イタリアやポルトガルを旅した時にマルシェに並ぶカラフルなトマトに感動して。赤、黄色、緑、紫、でっかいクレヨンを並べたみたいで見ていて楽しかったんです。トマトは葉っぱの香りもいいですよね。
ハウス栽培に関しては、全体で10~20品目を植えています。今はビニールハウスが一棟しかないので、畝を2~3メートルおきに区切り、1つのブロックに2~3品目を組み合わせて植えています。限られたスペースで多品目を栽培するために、この方法を自分で考えました。多品目栽培の場合、畝ごとに品目を分ける人が多いのですが、ここまで細かくブロック分けするのは珍しいようです。

通常、トマトの棚もシーズンが終わったら撤去するものなんですが、僕は一年中このままです。ときどき農家の先輩が見に来て片付けるように注意されます(笑)。でも棚上に育苗トレーを置くこともできますし、空中にあいたスペースの有効活用になっていますよ。先輩には「パッチワーク農法」だと言われますね。

──なるほど! 確かにパッチワークです。

区切ったブロックごとに土作りの方法も変えています。ネギのブロックにはヌカだけを混ぜてみたり、ほうれんそうのブロックには大豆かすを混ぜてみたり。土によって虫の付き具合も変わりますし、その時の自分の感覚でいろいろ試しながら、独自に生育を研究しています。

土作りでも、植え方の組み合わせでも、同時にたくさん試せるところがパッチワーク農法の良い点でもあります。

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ホウレンソウとニンジンを交互に植えたブロック。もみ殻がまいてあるラインにはニンジンが植えてあります。しま模様がパッチワーク風!

──野菜の組み合わせ方にはコツがあるのですか。

自己流なんですが、アブラナ科、ユリ科、キク科、と異なる科の野菜を組み合わせて植えるようにはしていますね。害虫と連作障害の予防のためです。

ブロックごとの見た目の美しさも考えています。僕は自分の畑を見るのが好きで、ずーっと見ていられるんですよ。ハウスは自分の箱庭です。

脱サラ有機農家

異なる形の葉っぱを組み合わせるとキレイで、例えばここでしたらホウレンソウ、カーリーケール、ネギですね。この組み合わせのままお客さんに持っていくのを想定して栽培しています。

現在の販路と次の夢

脱サラ有機農家

──経営面についても教えて下さい。現在の販路はどうなっているのですか。

野菜セットの個人宅配、ファーマーズマーケット、産直市場での店頭販売などです。売り上げは少しづつですが上がってはいて、ニンニクとトマトが主軸となっています。特にニンニクは需要が高いですね。飛び地の圃場では、主にニンニクを露地栽培しています。

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その他、現在は5年間の農業次世代人材投資資金(旧・青年就農給付金)を利用しています。就農前の研修期間(2年以内)と経営が不安定な就農直後(5年以内)の所得を確保するための給付金制度で、年間最大150万円。半年に1回支給されています。サラリーマン時代に比べると収入は減ってしまいましたが、給付金が終了する頃には自立経営できる見通しをつけています。それを見越して1年後、5年後、10年後……と栽培計画を立てていて、今のところ予定通り進んでいます。

──丸山さんにとって今まで一番辛かったことは何ですか。

去年の台風です。ハウスも壊れましたし、2~3カ月後に売る予定だったものが雨風でほとんど流れました。もう、どうしようかと思いましたね。それでも、地域の農家仲間と励まし合ったり、ファーマーズマーケットでお客さんに声を掛けてもらったりして、続けて来られています。

すでに農業を辞めてしまった同期もいます。確かに経営の大変さはあります。でも僕は、農家を苦しめているのは孤独感のような気がしていて。農業を続けていく秘訣は、地域の人と協力することじゃないでしょうか。

──これから新たに挑戦したいことは。

果物ですね。去年ハウスにイチゴを植えたんですが、子供たちが喜んで家で全部食べちゃって(笑)。またイチゴもやりたいし、畑の周囲に柑橘(かんきつ)類やオリーブの樹を植える予定です。

僕はいつも70代80代になった自分を想像して畑づくりをしているんです。色とりどりの果実と好きな野菜に囲まれて、クワを持って働く自分の姿を想像しながら。仕事のあとは、ビールを飲みながら自分が作ったニンニクを素揚げして食べる。最高でしょ! 僕は今、胸を張って「農家やってます」って堂々と言えるのが本当にうれしくてね。これからも楽しみで仕方ないですよ。

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神戸市のファーマーズマーケットにて。お客さんと野菜の話をするのも楽しみのひとつだそう

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