「値段を付けて売って!」農家に頼んだ意外な食材【本当に求めている食材#05 七草 前沢 リカ】
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「値段を付けて売って!」農家に頼んだ意外な食材【本当に求めている食材#05 七草 前沢 リカ】

連載企画:本当に求めている食材

「値段を付けて売って!」農家に頼んだ意外な食材【本当に求めている食材#05 七草 前沢 リカ】
最終更新日:2019年05月08日

理想の料理を作るために、日々食材を探す一流の料理人やバイヤーたち。そんな一流の目を持った人が求めている食材とは何でしょうか。日本の「食」を牽引する人々に、いま欲しいものやこれから作って欲しい食材を取材する連載。5回目は、東京の人気和食店「七草」の店主 前沢リカ氏。豆、野菜、乾物を主役とし、独自のセンスで新しい和食を提供する前沢氏に、影響を受けた食材や求めている食材について話を聞きました。

【プロフィール】

七草(ななくさ) 店主 前沢 リカ
会社勤務を経て、渋谷の野菜料理店、大塚の江戸料理店で修業後、2003年に旬の野菜や乾物を中心とした和食料理店「七草」を開店。2017年には築50年の骨董店をリノベーションした新店に移転し話題に。料理教室の運営やフィンエアーの機内食の監修など活躍の幅も広い。

時代の流れで変わった飲食店の仕入れ方法

——七草には魚料理がないそうですね。前沢さんのこだわりを感じます。

「七草」は、豆、野菜、乾物を主役に、旬の素材の味を楽しんで欲しいと思っています。
開店当時はお客様から「刺身や煮魚はないの?」と聞かれることが多かったのですが、野菜を立たせたいから、あえて皆が求める魚は置かないことにしました。

——とはいえ、開店当時の10年程前といえば、鮮魚の産地直送がブームでしたよね。

まだまだ野菜は脇役の時代でした。そんな中で野菜と乾物を主役にした料理を提供することは、少し勇気がいることでした。周りからも「かんぴょうや芋がらでは商売は出来ないよ」と心配されました(笑)。
でも16年経った今、そんな事を言う人はいません。時代が変わったなと感じます。

落ち着いた日本家屋で四季折々の食材を楽しめる七草

——時代の流れが変わったと感じた瞬間はありますか?

野菜のパッケージに、産地や生産者の顔写真が紹介されるようになった頃でしょうか。
魚の産直ブームが徐々に野菜にも流れ、産地や鮮度を気にする意識が根付いていったと感じます。

——生産者の情報も入ってくるようになりましたよね。

情報が入るようになって、「七草」でも海老原ファームさんとお取引きするきっかけが出来ました。少し時期が遅れると入荷できないくらい、その瞬間の“旬”を提供してくれるところがありがたいです。

食材の味が染みわたる絶品料理「すり流し」。季節によって旬の食材を使う

農家の食材で変わったスペシャリテの一皿

——生産者から直接仕入れるようになって、変わったことはありますか?

メイン料理の「豚バラ肉と大豆の味噌炊き」は変わりました。
私は“肉の出汁と味噌の味が染みた大豆料理”として作っているので、大豆を主役にしたくて、添え物は付けずに提供していたのですが、ある日、海老原さんからたくさんの旬野菜が届くようになり、全部美味しく食べていただく方法を考えた結果、お肉の脇に野菜を添えてみることにしました。
お客様から好評だったこともあって、今ではお野菜付きが定番になりました。

捨てずに、値段を付けて売って欲しい

——この連載のお約束の質問なのですが、前沢さんが求めている食材を教えて下さい!

春菊やルッコラなどの小さな野菜の花です。
見て美しく、食べて美味しいのでお客さんにも喜ばれます。
取り扱いのきっかけは、ルッコラの花を市場で偶然みつけた時でした。海老原さんにお取り扱いがあるか尋ねてみると、「売り物ではないけれど、花は咲いているから送るよ」と送って下さったのです。
私は継続して納品して欲しかったので、「そんなこと言わずに値段をつけて欲しい」と伝えて商品化しました。
それからは、毎年春になると「お花を入れて!」とお願いし、その時々に咲いている野菜の花を納品いただいてます。

野菜の花はブーケのように綺麗に束ねて納品される。農家の気遣いを感じる

——農家さんが商品として認識されていなかったのは、勿体なかったですね。

市場にも野菜の花は売っていますが、水が落ちてしまっているので日持ちしないんです。
農家さんからくるものは鮮度が違うし、茎ごと送ってくれるので観賞用の花を同じように扱えて、とにかく持ちが凄い!!

——他の農家さんにも、ぜひ値段を付けて欲しいです!!
はい。市場より高くても農家さんから欲しいです。それに、野菜の花の周りについている葉っぱも華奢なので、料理や皿とのバランスがとても良いです。商品価値があるので、積極的に提案して欲しいです。

農家と料理人に大切なのはコミュニケーション

——料理人として、農家さんへリクエストしたいことはありますか?

リクエストするのはおこがましいのですが……。農家さんとのやり取りで嬉しいのは、コミュニケーションです。
海老原さんとの関係で言いますと、例えば畑の脇に育ったフキノトウやツクシを「好きかな?と思ってさ」と、気持ちとして入れてくださったり、「今回はお任せで」リクエストすると、たくさんの野菜の花を入れてくれ、私が野菜の花を好きなことをよく理解してくださっていると感じることがあります。
“注文と納品”のやり取りを越えたコミュニケーションが本当にありがたいですし、温かい気持ちになります。

——どこか、接客業にも通じるところがありますね。

私たち飲食店は、お客様の好きな料理やワインなどを覚えておき、次にご予約をいただいた時に用意して会話の糸口にするのはごく自然なことですが、それに近しいかもしれません。 
相手の好みや考えを理解したいと寄り添う気持ちは、接客業に限らず大切なことだと思います。

——互いを理解したい気持ちは、商品やサービスの質も上げていくような気がします。

以前、仲卸の方が店に食べに来てくれたのですが、それ以降、「この野菜はお椀に使うから、このサイズが良いよね」と言って、皿にあったサイズを提案してくれるようになったんです。
私も「今日は里芋を六方むきにしてそそと出したいから、形が整っているものを揃えてくれるあの仲卸さん頼もう」となります。
お付き合いとしてのコミュニケーションを越えて、料理も含めてすごく発展的な関係性だと感じています。

農家さんと飲食店が良いコミュニケーションをして、お客様により良い料理を提供していきたいと思っています。

【取材協力】
七草

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