日本農業の温故知新 ~農業革命の”革命前夜”
恵まれた自然に育まれた日本のおいしさ
「日本には古くから四季があり、肥沃な土がありました。南北に長い国土には地域ごとに異なる気候があり、その土地ごとの特性に合う『おいしい』農作物が生まれてきました。しかし今は数々の課題がある」と現状を嘆く農業革命株式会社・代表取締役の石橋学(いしばし・まなぶ)さんは、青果等で日本一の取扱規模を誇る大田市場で20年以上にわたり仲卸や生産地と組んで商品開発などを行ってきました。
農業を、産業として充実させていく
市場で働きながら、農業の衰退を感じたという石橋代表。
「仲卸の存在というのは、まさに生産者の皆さんがあってこそ。農業が衰退して生産者が苦しむ中、僕らがこのままでいいのかと考えるようになりました。就業人口の減少や、土壌の汚染、経営環境…。課題は多岐にわたりますが、生産者が自ら農作物の価値を決めるということをほとんど主張しなかった点もその大きな要因です」
石橋代表は、農作物の価値とは相場に左右されるものだけではなく「おいしさ」だと強調します。「おいしいを伝えたい」、この思いから石橋さんは農業革命株式会社を創業しました。
農業革命が考える“正しい農家の在り方” ~ただ“儲けたいだけ”はお断り
農作物そのものの魅力を伝える
農業革命株式会社は「おいしい」を伝えるために3つの柱を追求しています。
1つ目は「農作物そのものの魅力を伝える」こと。
おいしい農作物は、消費者に喜ばれて売上につながり、生産者も幸せになると考えるからです。石橋代表は仲卸の仕事をしていた当時、バイヤーに向けて自分の見つけてきたおいしい農作物を販売してきました。
「そこはプロ同士の、言わばガチンコ勝負の場。買ってもらうためには商品の特徴や作り手の思い、安心安全で『おいしい』をしっかり伝えることが一番の武器でした」と実体験から学びました。
安心安全も大事な魅力のため、自然体系を崩す化学的な薬剤などは使わないように土壌改良することも大事と付け加えます。石橋さんは今も生産者のもとへ足を運び、自分の五感で「おいしさ」を感じるようにしています。
適切な販売方法を選ぶ
2つ目の柱が「おいしいものを届けるために、適切な販売方法を選ぶ」こと。味や栽培にこだわっても、量ばかりを求められる販路だけでは相場に左右される一方。これでは農業を続けるモチベーションが下がります。
「複数の販売方法を持つ生産者は強いです。例えば、有名スーパーに農作物を扱ってもらうことは、野球チームの一軍に入るようなもの。ライバルは多く、何かあれば降ろされて、経営上命取りにもなりかねません。ですから限界量での出荷計画ではなく、必ず死守できる量で予定して出荷し、残りは他の直売所などで調整する。すると収益や事業計画も立てやすくなります」
計画が立てられると、さらなる「おいしさ」を追求する余裕も生まれるでしょう。同社は販路の知識・経験・ネットワークを持つため、生産者ごとへ適切なアドバイスができることも強みです。
地域と共存していく
そして3つ目の柱が「地域と共存していく」ことです。
「地方生産地は閉鎖的な場合が多く、生産者同士で情報を共有することは少ない。ですが、周辺生産者同士が連携して、販路や物流の共有が可能になれば、地域の農業はもっと活性化されるはずです。OB生産者や大学や専門機関、農協……。地域農業の活性化は、シルバー世代の雇用や、新規就農者の増加、ひいては農業の発展につながる。自治体にとっても税収向上も見込めるでしょうし、さまざまな課題解決につながると考えています」
「私も”農業革命チルドレン”です!」~現役農家が証言
「私のサンチュをおいしいと言ってくれた!」
千葉県香取郡でサンチュや春菊、インゲンなどを生産するグリーンファームササモトは、農業革命株式会社とパートナーシップを結ぶ生産者の一つです。代表取締役の笹本明彦さんは「情熱家の、この男に賭けたいと思った」と同社の石橋代表に厚い信頼を置いています。同ファームでは主に完熟たい肥など有機肥料を使って土壌改良に力を入れていましたが、それでも連作障害など課題がありました。新しい土壌改良資材を探す中で、石橋代表と知り合ったそうです。
「石橋さんはウチのサンチュを食べて『おいしい!』と言ってくれました。私にとってはその一言が一番のやりがい。石橋さんのように全国の野菜を食べている人の言葉だったから、特に嬉しかったです」
笹本さんは、石橋代表が薦めた天然化石サンゴ100%でミネラルを豊富に含む肥料『どなん』を使い始め、土壌改良にも手ごたえを感じています。
「おいしい」の感動を伝えたいから商品化
石橋代表は、笹本さんが作る野菜の「おいしい」を雄弁に語ります。
「柔らかさやうま味に正直ビックリしました。いただいたサンチュと春菊を家でサラダにしたところ、2歳の娘が頬張る姿に二度ビックリ。子どもの味覚は正直です。どう料理しても味の悪い野菜だと娘が食べてくれず妻も私も不機嫌になるんですが、『おいしい』と言ってくれると食卓は幸せな空気になります。『おいしい』は家庭円満にもつながりますよね」
こうした感動を伝えるべく、同社ではサンチュなどを商品化。ネーミングやパッケージデザインも提案し、これを同社で販売しています。
相談も無料。販売力で、生産者の負担を軽減
こうした相談や出張などの費用を同社は無料で行います。まず、すでにある「おいしい」農作物を販売し、その手数料を受け取ることで収益を上げるという、結果が見えないうちは生産者にコストを生じさせない仕組みを取っています。
新規商品開発についても、まずは同社でネーミングやパッケージデザインなどのコストを負担し、そのロイヤリティを後に受け取るというもの。笹本さんのサンチュも、同社は相場の倍近い値段で買ってそれを取引のあるバイヤーへ販売しています。
笹本さんのサンチュを扱う株式会社九州屋もその一つ。
「売れる農作物は生産者が思いを込めることが大事。おいしさの背景にある思いなどを10分以上語ってくれるかが扱うかどうかの判断基準にもなります。農業革命が扱う野菜は、『心が通っている』ことが特徴。石橋さんは生産者の思いを伝えてくれます」と九州屋の中野さんは語ります。
「おいしい」を世の中へ広げたい
笹本さんは「農業革命はデザインや情報拡散、流通、販売まで任せられることがありがたい。今まで私は、自分のサンチュのおいしさをアピールすることすら不器用で難しかったですし、『おいしい』という言葉を聞けず、やりがいにもつながらなかった。でも農業革命のおかげで従業員も私もモチベーションが上がりました。今は農業革命と一緒に、農園の将来を考えることが楽しいです。後輩農家のためにも自分が頑張らないと」と話します。
笹本さんのように、ポジティブに話す生産者を見ると嬉しいと石橋さん。
「当社は生産者が作る『おいしい』を見つけて、それを世に広げることで事業が成り立っています。生産者の皆さんには、まだご本人も気づけていないたくさんの可能性があります。それを見出し、生産者と具現化する楽しさと喜びこそ、この仕事をしていて本当に良かったと思える瞬間だったりします。そんなやんわりした会社ですがやるときはやりますよ」と、使命感たっぷりに熱を込めました。
■取材協力/有限会社グリーンファームササモト
〒289-0624 千葉県香取郡東庄町小南1241
TEL0478-87-0686
E-mail:info@greenfarmsasamoto.com
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■問い合わせ先/農業革命株式会社
〒220-0051 神奈川県横浜市西区中央1-3-21
E-mail:info@revocompany.co.jp
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