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農地に縛られない「旅農家」を提案 石川から全国へ「KNOWCH」のサービスとは

農地に縛られない「旅農家」を提案 石川から全国へ「KNOWCH」のサービスとは

農地と切っても切り離せない農家の生活。そんな常識を覆す「農地に縛られない農業」をキーワードに、土地に縛られず季節やライフステージの変化に応じて農家が移動しながら農業ができる仕組み作りに取り組んでいるのが、石川県金沢市の農地所有適格法人「KNOWCH(ノウチ)」です。農地に縛られない農業とはどのような仕組みなのか、代表の村田智さんに同社が目指す農業の姿について伺いました。

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農業を魅力的な職業に 思い立った時に耕せる環境つくる

――農地に縛られない「旅農家」というアイデアはどのように生まれてきたのでしょうか?
現在の農業は担い手不足や耕作放棄地の問題が深刻化する一方で、農家出身でない人が農業を新たに始めることは、まず農地を見つけるところからハードルが高い。農業に興味を持つ若い人自体は多いと感じているので、リスクを負わずに農業を始める仕組みを作れないかと始まりました。

村田智さん

農家として独立していく仲間を増やすということが最終目的ですが、農業をさらに魅力的な職業にするためには、土地に縛られない在り方を提案することも有効なのではないかと思っています。石川県かほく市高松地区にある竹中ブドウ園の代表で、現在KNOWCHの取締役を務める竹中浩記は元プロスノーボーダーで、サーフィンも大好き。「サーファーやスノーボーダーのように、シーズンはその土地で趣味を楽しみながら、農業もきちんとやるという生活もありなのでは」という話から、地域を自由に選びながら農業をする「旅農家」のコンセプトが生まれました。

ある新聞記事では、収穫など繁忙期の農家でアルバイトをして転々とする20代、30代を中心とした「農業バイト」が全国に3万人ほどいると報じています。自由な反面、結婚して家族を持ったり年をとったりして安定的な収入が欲しいと思っても、収穫や植え付けだけしか経験していないと技術的に農家として独立するのは厳しい。自由に働けるフィールドを用意しつつ、農業の一連の流れを経験し農家としても一人前になれる仕組みを整えるつもりです。

データで熟練農家の技術の言語化・共有も

――具体的にはどのような仕組みになるのでしょうか?
2018年5月から石川県内に計1.2ヘクタールの農地を借り、コマツナやジャガイモを育てる実証実験を始めています。また、昨年末には農地所有適格法人の条件もクリアし、2019年は北海道と宮崎県に農地を取得する予定で動いています。まずはこの3拠点から、アルバイトでも、委託契約でも就農希望者が望む形で農業を始めてもらう。ただ、正社員としての採用は考えておらず、技術を身に着け3年ほどで独立してもらうというのが基本です。

KNOWCHが提唱する「旅農家」の仕組み

独立して収穫物が出来てきたら、事前の契約に基づいて運営費を回収していきます。農作物の売り先についても、KNOWCHがバックアップしていきます。

――土地の気候などに合わせて適切な栽培方法を習得するのには時間がかかりませんか?
技術の共有、つまり「農知」をつなぐこともKNOWCHの重要なテーマの一つです。現在、3つの農家が協力を申し出てくれています。すでに農業で成果を上げている農家ばかりですが、皆さん「なんでも教えるし協力するから一緒にやろう」というスタンスです。うちブドウ農家とネギ農家には、それぞれ栽培技術を丸ごと教えていただいています。

あまりに親切になんでも教えて下さるのでその理由を尋ねたら、「今の農業の現状では隠している余裕がないから」と言うんです。一流の農家は「競争をするより仲間を増やすことが先決だ」という考えなんですね。

石川県のある梨農家さんを例に挙げると、そこの梨は本当にみずみずしくて甘く美味しい。一キロ離れただけの別の梨農家と何が違うのか聞いても、それぞれ「普通のことを普通にやってるだけだよ」と言います。味が違うので何かが違うはずなのですが、何が違うのか、本人たちも意識していない違いを、きちんとデータをとることで言語化し、共有できるようにしていきたいです。それにより、最短距離で一人前の農家になれる仕組みです。

有機であれ慣行の栽培であれ、こういう理由でこの時期にこの工程を入れてという栽培情報をオープンにすることは、消費者にとっても安心で納得感のある消費につながります。また、技術や知見をデータの形で公開する生産者にとっても、他の生産者との差別化につながるのではないかと思っています。

「旅農家」現役農家の期待値も高く

――法人化してまだ数か月ですが、手ごたえは
昨年12月から募集を始めてまだ広告などを出して募集しているわけではないので、応募はまだ数名ですが、本業を続けながら農業に携わりたいという日本画作家の方がすでに登録しています。考え方に賛同してくれる人は多いので、現在農業バイトで全国を転々としている方にもリーチしていきたいです。

さらに現農家の期待値が高いのを感じます。いろんな方に「旅農家」のコンセプトをお話すると、例えば北海道のある農家さんは「冬場にはスキー場でアルバイトしているけど、冬にも別の地域で農業ができるなら嬉しい」と。いろいろな価値観の方を農業に呼び込む呼び水としてだけでなく、「旅農家」はプロの農家にも需要があるようです。

実際に、2月に東京で開催された青年農業者の会合では、仲間の発表を聞く合間に会場からスマートフォンで農場の環境制御をしている若手農業者もいました。テクノロジーが発達する中で、農業をするには農地の近くに住み続けなければならないというような前提が根底から変わる時代になるのではないのでしょうか。農家が自由に移動でき、全国の耕作放棄地の問題も一緒に解決できるような仕組みに育てていきたいです。

KNOWCH

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