障害者の働く農園が子ども食堂を支える取り組みとは?【農業と子ども食堂#3】

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障害者の働く農園が子ども食堂を支える取り組みとは?【農業と子ども食堂#3】

障害者の働く農園が子ども食堂を支える取り組みとは?【農業と子ども食堂#3】
最終更新日:2019年05月07日

子どもたちの新たな居場所として注目が集まっている「子ども食堂」について、農業を通して見つめる全3回の連載企画。今回は、千葉県松戸市の子ども食堂と、その活動を農作物の寄付という方法で支えている、障害者の就職支援を行う会社の取り組みをご紹介します。福祉的な側面だけではなく、子ども食堂を支えることによって社会の障害者に対する理解を深めるという大きなメリットがあるという新たな考え方をもとに広がる支援の輪。その取り組みの詳しい内容や、そこに込められた思いに迫ります。

食べて学べる「こがねはら子ども食堂」の歩み

「こがねはら子ども食堂」の外観

「こがねはら子ども食堂」は、千葉県松戸市で地域の人たちの憩いの場所となっている「飲み食い処よっけ」で2016年2月から始まりました。代表を務める高橋亮(たかはし・りょう)さんは、給食を食べるために学校に来る子どもや、暗くなった公園の街灯の下で宿題をしている子どもの存在を知り、危機感を抱いたそうです。「育ち盛りの子どもたちにきちんとした食事を食べさせてあげたい、そして勉強も教えてあげたいという思いから、学習支援を柱とした子ども食堂を立ち上げることを決めました」と話します。

開始当初、「おためし食堂」をしたときの様子

会場には、以前塾を開いていた店主が営む「飲み食い処よっけ」の一部のスペースと隣の建物を使用できることになりました。民生委員や町内会長、さらに学習支援ボランティアの経験がある教員にも声をかけ、食事の提供と学習支援を行う「こがねはら子ども食堂」がスタート。子どもたちを中心に、地域の憩いの場となりつつあります。

「こがねはら子ども食堂」で食事をとる子どもたち

「こがねはら子ども食堂」では子どもたちへの食育に力を入れていて、特に「栄養バランス」と「季節感」、「豊かな彩り」、「手づくり」の4点を重視してメニューを考えています。高橋さんは「もともと野菜が嫌いで、子ども食堂に来て食べられるようになった子もいる。食の大切さも伝えていきたい」と話します。その食事を支えているのが、地元の人たちやスーパーなどから寄付してもらった食材。中でも大きな支えとなっているのは、障害者が働く農園からの農作物の提供です。

障害者の雇用を農園で可能に!野菜を寄付する仕組みとは

「わーくはぴねす農園 千葉わかばファーム」での農作業風景

「こがねはら子ども食堂」に食材提供の協力をしているのは、障害者の雇用を支援している株式会社エスプールプラスです。障害者がいきいきと働ける場所を農園という場として提供することによって、障害者雇用を推進したいと考えている企業のニーズに応えています。自社では障害のある人を多く雇用するのが難しいという企業に農園の一部を貸して、そこで障害のある社員に農作業を担ってもらいます。できた農作物は、福利厚生として社員に配ったり、社員食堂の食材にしたりと、企業ごとにさまざまな方法で活用されています。

「こがねはら子ども食堂」に寄付されたダンボール3箱分の野菜

株式会社エスプールプラスでは、千葉県を中心に10か所以上の農園を運営していて、2016年から子ども食堂への支援を開始しました。2017年に開設された「わーくはぴねす農園 柏ファーム」でも子ども食堂への支援を行いたいと考え、2018年から農園を利用している企業を通じて「こがねはら子ども食堂」に農作物を提供。農園のメインの作物である小松菜やホウレンソウなどの葉物野菜を中心に、2か月に1回ほどの頻度で食材を届けています。

「わーくはぴねす農園 柏ファーム」

「わーくはぴねす農園 柏ファーム」では、後からできた「柏第二ファーム」とあわせて約25,000平方メートルの土地で、30社の約190人の従業員が農作業を行っています。農園では養液栽培の装置を導入するなど、重度知的障害者でも働けるような工夫がされています。働く障害者人の内訳は、知的障害者が7割、精神障害者が2割、身体障害者が1割と、知的障害者の割合が多いのが特徴です。
農園では作業効率を求めるのではなく、あくまで障害のある人が働きやすい場となることを目指しています。農園長の梶祐太朗(かじ・ゆうたろう)さんは、「結果的に質の高い野菜ができて、評判もとてもいい。従業員の農作業スキルがどんどん上がっているので、完成度もそれに応じて上がっていますね」と話していました。

「わーくはぴねす農園 千葉わかばファーム」

子ども食堂の取り組みについては、「栽培した野菜を活用できるとともに、社会貢献、地域貢献にもなると、多くの企業が賛同してくれた。スタッフも『自分が作った野菜が子どもや地域の人たちのためになっている』と実感し、働くモチベーションになっているのでは」と梶さんは言います。
これからの展望は、子ども食堂への寄付を通じて子どもたちや子ども食堂の利用者に障害者への理解を深めてもらうこと。具体的には、ほかの子ども食堂に対しても寄付を広げていくことや、障害者の働きぶりをみてもらえるツアーを企画することなどを検討しています。梶さんは、「活動に理解してもらうことで、働くスタッフのモチベーションをさらに高めることができると期待しています。子ども食堂との新たなかかわり方も、模索していきたい」と話していました。

障害のある人から子ども食堂への支援をさらに広げていくために

「こがねはら子ども食堂」と株式会社エスプールプラス、どちらも双方のニーズに応えていて、その取り組みはうまく軌道に乗っているようです。ただ、その関係づくりは簡単ではありません。「こがねはら子ども食堂」の高橋さんに、信頼関係を築くために大切なことを聞くと、「普段から交流をすることで、寄付を受けるときの受け皿をしっかりと作り、信頼を得ることが重要。どんな活動をしているのか、どんな理念があるのか、きちんと言葉で伝えて理解してもらわなければいけない」と話していました。
また、エスプールプラスの梶さんも、「子ども食堂への寄付が多くの人に私たちの活動を知ってもらうきっかけになっていて、大きな意義を感じています」と話しています。

食事の後に勉強する子どもたち

高橋さんはSNSなどを使った広告、宣伝活動にも力を入れていて、寄付をもらったら、その企業の名前を必ずSNS上で発信しています。その理由については、「障害者を雇用する企業側にも、その名前を広く知ってもらうというメリットにつながると考えています。寄付してもらっている以上、こちらにはきちんと公表する責任がありますよね」と語っていました。SNSでは、企業名だけでなくもらった食材の写真や、添えてあった手紙の内容を載せることもあり、具体的にどのような支援を受けたか、こまめに更新を続けています。

寄付された野菜に添えられていた手紙をSNSで公開

高橋さんはこれからの目標について、「とにかく継続すること。これまで3年以上続けてきて、こうした支援を受ける機会が増えているので、ぶれずに続けてやっていくことで、支援の輪は広がっていくと感じます」と話していました。
 

子ども食堂と農業について、これまで全3回の連載で、さまざまな取り組みについて紹介してきました。取材をしていて耳に入ってきたのは、「子ども食堂の未来のためには、農業とのかかわりが必須だ」という声でした。子ども食堂は、子どもだけではなく地域に暮らす人すべてを対象とした居場所となりつつあります。そんな子ども食堂にとって、農業の持つ大きな役割には今後も期待が高まります。
 

こがねはら子ども食堂
開催日:不定期(無料学習支援は毎週土曜日10時~15時)
場所:千葉県松戸市小金原8-28-1「飲み食い処 よっけ」内
連絡先:kogane.kodomosyokudo@gmail.com

写真提供:高橋亮さん、株式会社エスプールプラス
 

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