「無農薬」とは?
商品としての「無農薬」
よく耳にする「無農薬野菜」「無農薬栽培」。この「無農薬」という言葉、実は農林水産省が定めた「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」によって、“原則的に表示をしてはならない語(表示禁止事項)”として定められています。
このガイドラインは、農産物につけられた表示によって消費者に誤解や混乱を与えないために作られました。順守の義務や罰則はありませんが、場合によってはJAS法による指導や公正取引委員会による排除などの対象になることがあります。
表示禁止の理由としては、農薬を全く使わない栽培をしても、土壌に残っていた農薬や周辺の土地から流入または飛散してきた農薬が含まれる可能性があることが挙げられます。
全く使用していなくても影響を受けた可能性があり、「無」と付くだけでは正確な情報が伝えきれていない場合があるのです。
そこで“自分が栽培している限りでは農薬の使用はしていない”ということを示す言葉として、「農薬:栽培期間中不使用」の表示が推奨されることになりました。
そのほか、ガイドラインに沿った表示を行うことを前提として、「農薬未使用」「農薬無散布」「農薬を使っていません」などと表示し、消費者に栽培方法を伝えることもできます。
農薬を使わないことによるメリット
ガイドラインでは、農薬を使用しない、または低減することについて、その目的を「農業の自然循環機能の維持増進を図るため」としています。
自然のサイクルを利用し、農業がその一部になることで、環境への負荷を減らすことができるというものです。
また、消費者の中には、できるだけ自然環境にないものは使ってほしくない、とりたくないという考えの人もいるでしょう。農薬は定められた基準に沿って使われていれば問題ないとされていますが、気になる人にとっては安心を得るための一つの材料となるでしょう。
農薬を使わないことによるデメリット
農薬を使わない野菜栽培のデメリットとして挙げられるのが、害虫や雑草の問題です。そもそも農薬は、農作物の品質を保ち、効率よく安定して生産し、生産コストを抑えるために開発されているものです。農薬使用の主な目的には、害虫や雑草の駆除があります。ですから、農薬を使わないとなるとそのほかの手段を使って病害虫や雑草の影響を受けにくいような栽培をしなくてはなりません。
土壌の状態が悪く土地が痩せ過ぎていると、野菜は健康に育つことができず、病害虫の影響も受けやすくなります。その場合は、有機肥料や堆肥(たいひ)などを使って土壌を改良する必要も出てくるでしょう。
農薬を使わない野菜の入手方法
野菜を作る
家庭菜園が趣味という人の中には、自分でも農薬を使わずに野菜を作ってみたいと思う人がいるかもしれません。プランターと有機栽培用の培養土があれば、家庭でも手軽に栽培を始めることができます。ただし、除草や害虫駆除に時間をかける必要がありますので、最初は自分の目が届く小規模な範囲から始めてみることをおすすめします。
手間を軽減するため、害虫を寄せ付けないための防虫網を利用してみたり、害虫の天敵となる虫を使ってみたり、身近な食品を使ったスプレーを試してみるなど、自分の栽培環境に合った方法を模索していくのもいいでしょう。
野菜を買う
自分で栽培するより、手っ取り早く購入したいという人は、まずは大手スーパーをのぞいてみてはいかがでしょうか。近年では野菜売り場の一角で、農薬を使わない(または減らした)野菜を取り扱っているところも増えてきています。また、都市部を中心に、そのような野菜を中心に取り扱う「自然食品店」「オーガニックスーパー」などと呼ばれる店舗もあります。
近くに取り扱いのスーパーがない、探すのもちょっと大変……という人は、インターネットで探してみましょう。野菜を購入できる通販サイトがいくつも見つかります。自宅でゆっくり選んで、届くのを楽しみに待つのもいいですね。
監修:農研機構 本部 松村正哉