『とかち財団』が画像処理技術を担当、地元企業と「車両洗浄装置」開発

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『とかち財団』が画像処理技術を担当、地元企業と「車両洗浄装置」開発

『とかち財団』が画像処理技術を担当、地元企業と「車両洗浄装置」開発
最終更新日:2019年05月13日

企業の技術支援や事業の立ち上げ、商品開発、起業など、十勝の産業振興のために幅広い支援を行っている『公益財団法人とかち財団』。平成18年に財団が設立した十勝産業振興センターでは、財団の持つ電子制御や画像処理といった技術を応用し、地元企業の課題解決に向けて、二人三脚で取り組んでいます。今回は、平成29年5月から『株式会社北土開発』(本社:北海道河西郡芽室町)と共同で開発した、土壌に含まれる病害虫・シストセンチュウ対策用の「画像処理技術を応用した車両洗浄装置」について紹介します。

走るトラックのタイヤを徹底的に洗う技術を、開発したい

『公益財団法人とかち財団』は、十勝の産業振興を目的に、企業の技術支援を行っています。財団が設立した十勝産業振興センターでは、少子高齢化に伴う人材不足の解消を図るため、電子制御・画像処理技術を応用、省力・自動化した製品を受託開発。地域が抱えるさまざまな課題を解決するため、農業機械や食品加工機械、産業用機器など多岐にわたる分野で技術支援に取り組んでいます。

今回ご紹介する「画像処理技術を応用した車両洗浄装置」は、財団と『株式会社北土開発』が共同で開発したものです。

(右から)開発者の『とかち財団』の菅原崇研究主査、『北土開発』の河村技術部長、菊池真喜男課長補佐

車両洗浄装置を開発するきっかけとなったのは、『北土開発』が農業関係者から「シストセンチュウ対策のために、タイヤの溝の中までしっかり洗うことができる洗車設備を作ることができないか」と相談を受けたことからでした。

土壌に含まれる病害虫・シストセンチュウが、農場に出入りするトラックのタイヤの溝などに付着すると、作物の生産現場に病気が広がり、作物の大幅減収につながってしまいます。

シストセンチュウは、直径約0.6㎜の大きさで、堅い殻で守られているため、耐薬性があります。最も有効な対策は「タイヤについた土壌を、徹底的に洗い落とすこと」です。
しかし、タイヤをしっかり洗うためには、手間と時間がかかります。特に、収穫時の製糖工場などでは、1日に500~1000台ものダンプカーが次々と出入りするため、1台ずつ停車させてタイヤの洗浄を行うことは現実的ではありません。

平成29年5月『北土開発』の河村技術部長は、車両は走行状態のまま、タイヤに付いた土壌を確実に落とす洗浄装置の開発に乗り出すことになりました。

小型カメラを使って画像を撮影、動くタイヤをとらえて集中的に洗浄

車両が走行状態のまま洗浄する装置はありましたが、車両検知後に一定時間水を噴射するという単純な仕組みの装置がほとんどでした。この方法では、タイヤだけでなくホイールベース間の車体も洗浄してしまうため、シストセンチュウ対策としては適切ではありません。

『北土開発』の河村技術部長が技術提携を結んだのは、『とかち財団』です。両者は約10年前、てん菜から砂糖を製造するときにできる副産物「ライムケーキ」の粒状品開発を行った際に、その粒状の円形度を評価するシステムを財団の画像処理技術を使って開発したという実績があります。今回の車両洗浄装置についても、財団の画像処理技術を用いることができないかという思いがありました。

依頼を受けた『とかち財団』の菅原崇研究主査は、小型カメラを使って、走行中の車のタイヤの直径や本数、車両の速度などを計測する、画像技術を開発しました。

車両洗浄装置の操作画面。動くタイヤが丸印で表示されています

トラックやトレーラーなど車両の種類や速度の制約がないため、応用がきき、特にトラックが多く行き交う施設にとっては、貴重なシステムです。

この画像処理技術の開発によって、動くタイヤに集中して、最適なノズルの向きや水の強さを調整することが可能になりました。その結果、最小限の水量で、走行中の車両のタイヤだけを狙って、集中的に洗浄することができます。洗浄部分の開発については、『北土開発』が行いました。

屋外での画像処理の難しさ。繰り返し実験を重ね、開発

「開発の中で一番苦労したのは、屋外で行うことだった」と菅原研究主査は話します。早朝から夕方など、装置を運用する時間帯が異なるため、画像を撮影する条件が変化します。特に、太陽などの光が強く入る夕方において、対応するのが大変だったといいます。

また雨や雪、気温などの気象条件をはじめ、泥で汚れたタイヤの検出など、さまざまな外的要因にも対応しなくてはなりません。何度も何度も実験を繰り返し、約半年をかけて開発。そして特許も取得しました(特許630305号)。

屋外に設置されたカメラ

河村技術部長は「早朝や月明りの中で、菅原さんと一緒に実験を繰り返したことが思い出深い。よく付き合ってくれたと思う」と振り返っていました。

ユーザーの声を聞いて、改良を重ねる

洗浄装置開発に当たっては、「形ばかりのものづくりでは何もならない」という河村技術部長の強い思いから、農家やJA、製糖会社の職員など、現場の声を取り入れることになりました。「冬は凍結するので、洗浄時にフロントガラスを濡らさない」など、現場のニーズを拾い上げました。

この画像処理を応用した車両洗浄装置は、『北海道糖業株式会社』北見製糖所で運用しています。現場からは、「今までの洗浄機と比べて効率良く運用でき、土壌除去率が格段に向上している」と評価を受けています。

タイヤ洗浄の様子。タイヤ以外には水がかかっていないことが確認できます

洗浄能力の評価と装置の小型化を目指して

今年度は、従来の装置では決して行われることのなかった「洗浄能力の評価」に取り組んでいます。
具体的には、車両洗浄前後の土壌を採取、分析し、本当にタイヤについた土壌が除去されているのかを調べるものです。これによって、洗浄能力を客観的に評価することができます。

評価実験のため、経済産業省 平成30年度中小企業経営支援等対策補助金(戦略的基盤技術高度化支援事業)を活用して、モータープール内に車両洗浄に関する様々な試験研究が可能な「車両洗浄システム」を設置しました。

すべての実験のデータを記録し、装置の評価・機能改善につなげていく方針です。

「地道な実験を真摯に行うことが、ユーザーの期待に応える唯一の方法だと信じています。将来的には装置の小型化を行い、持ち運べるようにすることが目標です。シストセンチュウだけでなく、家畜伝染病などにも用途を広げたいですね」と、研究開発に当たった菅原研究主査、河村技術部長、菊池課長補佐の3人は声をそろえます。

『北土開発』の洗車装置と財団の画像処理という、互いの強みを生かした今回の開発は、豚コレラ鳥インフルエンザや口蹄疫などの家畜伝染病、コムギなまぐさ黒穂病などの除菌用途にも活用できる技術です。こうした病原虫は、発生場所を事前に特定できないため、車両洗浄装置を可搬する必要があります。

今後については、PC上で行っている画像処理や洗浄制御部を専用処理ボードに集約し、これまでにない小型化を目指していくそうです。

『とかち財団』は、地元企業の課題解決のため、今後もさまざまな産業支援に取り組んでいきます。

公益財団法人とかち財団
住所:北海道帯広市西22条北2丁目23⁻9
電話:0155⁻38⁻8850
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