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Eat Local時代。さあ、直売所の出番が来た!【直売所プロフェッショナル#01】

Eat Local時代。さあ、直売所の出番が来た!【直売所プロフェッショナル#01】

都内で直売所を複数展開する民間ベンチャーの創業者たちが、直売所運営のイロハについて事例をまじえて紹介していく連載。第1回はプロローグとして、これからの時代に求められる直売所について熱く語る。まず「脱・場所貸し業」が必要だと筆者は説く。

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いま直売所のプロフェッショナルが必要とされている

直売所のプロフェッショナル。

この言葉を聞いて、違和感を覚えるだろうか?

平成時代に、農産物の直売所は一気に広がった。
ひとつの大きな産業と言ってもいい。

しかし、直売所は農業界においては一定の地位を築いたものの、ビジネス界、あるいは小売業界のなかにおいて注目される存在かといえば、けっしてそうではない。
考えてみれば、スーパーマーケットには、「プロのバイヤー」がいて、「プロの店長」がいる。そこには働いている人のプライドが存在し、またノウハウの蓄積が存在する。

直売所がより大きな存在になっていくには、もっと店側が直売所を経営していることにプライドを持つべきだ、と強く思う。
いま、農業界ではプライドを持った直売所のプロフェッショナルがたくさん必要とされている。

直売所のプロフェッショナルとはなにか。
「私たちが選んだから、売れる」
「私だから、伝えられる」
「私の接客があるから、客が来る」
そう自信をもって言えるということである。

そう言えるスタッフがいないならば、その直売所は小売業をやっているとは言えない。
直売所の多くは委託販売という形式だから、商品は預かっている物だ。預かった商品を並べ、残ったら返品するだけでは、単なる場所貸しである。誰でもできる。誰でもできるところにプライドは生まれない。

プロの料理人は、素人には作れない料理を作るからプロなのである。
誰にでもできたらプロではない。

すなわち、「脱・場所貸し業」。これが直売所を前へ進める第一歩だ。

ちなみに、私たちが経営する直売所「しゅんかしゅんか」は委託方式ではない。品物は100%買い取りだ。売れ残りはすべて当社のリスク。そうすることである意味「無理やり」に、売る力を高めてきた。
買い取るかわりにマージン(手数料)がやや高くなる。その分、家賃は高いが利便性の高い場所に出店する。それが東京で直売所を展開する当社の基本戦略である。

私たちの店のうちのひとつ、西国分寺店は中央線の駅の改札の目の前にある(下写真)。
補助金を前提とした地域のアンテナショップ的なものが利便性の高い場所にあることはままあるが、このお店は補助金とは無縁である。もちろん相応の家賃も払う。
JR東日本の商業施設の1テナントとして、営業を継続している。2017年度には優秀なテナントとして表彰もされた。他に表彰されたのは有名なチェーン店が多かったが、それらと伍すことができた。
直売所とは本来、それだけのポテンシャルをもった小売りの一形態なのだ。

この連載「直売所プロフェッショナル」では、月に2回、私たちが持っている拙いノウハウを具体的に公開していく。その底流にある思いは、直売所を担う人(農家やスタッフ)は、もっとそのことに誇りを持っていいんじゃないか、ということなのである。

令和時代、直売所はさらに成長する

平成の時代、直売所業界は成長してきた。しかし、これからの時代もさらに成長すると私たちは考えている。

直売所業界の規模が大きくなった理由のひとつに、これまでは「安い」ということがあった。マクドナルドやユニクロがデフレの申し子と呼ばれた時があったが、直売所もまたデフレ時代の消費者のニーズをつかんだのである。
もちろん、今後も安いというだけでは限界があるということは、関係者はみな直感しているところだろう。

そして今度は「Eat Local」にスポットがあたると私たちは考える。それが新たな直売所の成長の源泉になっていく。すでにそれをつかめるお店とそうでないお店の優勝劣敗が始まっているように思う。Eat Localとは、地域の食材を積極的に食し、地元の一次産業や文化・コミュニティーを支えていこうというライフスタイルだ。

なぜEat Localが着目されるようになるのだろう。

クラフトビールに、クラフトジン。お酒の業界では「クラフト○○」という言葉が流行している。
原義は「手作り」とか「工芸品」といった意味だが、つまりは生産者自身にスポットがあたるようになってきている。
どんな方法で作っているのか。この生産者はどんな背景があってこの業界に入ったのか。
そんなストーリーも含めて消費する場面が増えている。
(場面、と言ったのは、ふつうの人は一方で大量生産品を買いながら、その一方でクラフトな商品を買ったりするからだ。)

あるいはグルメサイト業界も、旧来の「ぐるなび」や「食べログ」と違って、新興勢力の「ヒトサラ」は料理人個人にスポットライトをあてる。お店の本質的魅力を伝えるためには、料理人をフィーチャーすることが効果的なのだという。
そういう時代になってきているのである。
その点、生産者が明らかである直売所(しかもその多くはすぐに会いに行ける距離にいる)は、新しい消費スタイルの恰好の舞台ではないか。
Eat Localとは、特定の生産者の作った野菜や果物を食べるということだ。

さらに人口動態も拍車をかける。
アクティブなシニアが増え、引退した後に地元をベースに活躍する人が増えている。また、全体の人口が減るから、街どうしの競争、人口の奪い合いがおのずと激しくなる。
そうすると、「よりよい街にしよう」というのは、どの街でも大義になってくる。
そしてEat Localという消費行動は、よりよい街にすることに貢献するライフスタイルなのである。

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直売所を複数展開する民間ベンチャーの創業者たちが、直売所運営のイロハについて事例をまじえて紹介していく連載。街や地域という観点から見渡してみると、直売所がかなり特異な商売であることが見えてくる。その理由とは……?

街の生産と消費を結ぶ拠点として

直売所という存在は、農業側から見れば、重要ではあるがひとつの販路にすぎない。
しかし、まちづくりという観点から見れば、ものすごく大きなポテンシャルを持っている、たいへんに特異な存在だ。

街のなかに、地域の生産者と地域の消費者をつなぐビジネスはほとんど存在しない。
生産と消費を結ぶ拠点としての直売所。
この機能は見逃されがちだが、街のなかでは実に希少だ。街どうしの競争が激しくなる時代において重要な価値を持つことは間違いない。
この連載でも生産者と消費者を結ぶためにできることを考えていきたいと思っている。

直売所がまちづくりにプレゼンスを発揮していないとすれば、直売所そのものに主体性が足りないからだ。繰り返しになるが、直売所は単なる場所貸し業であってはもったいない。

直売所が生産者と消費者を主体的に結ぶ。
そういう存在になれれば、直売所は令和時代においてその街の主役になれるだろう。

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