「たかな祭り」当日。忙しくお客様対応をしている佐藤さんになかなか取材ができない中、謎の男が高菜の解説をしてくれました。細かな栽培管理や生育状況、収穫にかかる手間からイベントの収支に至るまで、あらゆることを教えてもらいました。
怪しい。横文字をぶつけられると眉間(みけん)がこそばゆくなってしまう筆者は、この宮本という男についていろいろ聞いてみることにしました。
農業をはじめた経緯 ~「1億円稼ぎたい」
すると社長が「農業高校行っても1億円稼げんぞ」と言われて「ええ!? そんな!」と素直に思いました。すぐに農業高校の校長に電話して、「校長でも1億円もらえないんですか?」と聞いたら「もらえない」という回答だったので、臨時採用が決まっていた農業高校は蹴って、実際に稼いでいるその社長のところで修行するようになりました。それから365日朝から晩まで農業漬けの日々ですね。
農業を辞めるという選択 ~「空っぽな自分」を知った
地震そのものもですが、震災というのはいろんなところに影響が表れてしまうもので、生産物を供給できなくなったんです。
でも卸先は全然待ってくれなくて……。「そんなの作り手の問題でこっちには関係ない! 他の頑張れている会社もあるだろう」って売掛金も回収できないような状態になってしまい……。そこからは裁判沙汰で。
「私のトマトをなぜ食べないといけないのか」の説明なんてできなかったんです。佐藤さんは自身の生産物を食べるべき理由を全部説明できます。
じゃあ、そうではない「モノづくりの本質」って何だろうって思います。
佐藤農園で私が実際にやっていることは、佐藤農園に頻繁にやってくる取材や行政からの問い合わせ窓口になったり、ギャラ交渉したりブランドイメージをどう構築するかを話し合ったりといった内容が主なのですが、実はこういう仕事って農家が一番嫌うところなんですよね。目の前の仕事に集中していると、電話にも出たくない気持ちは農家なら分かると思うんです。でも、それではなかなか思いが社会に広がっていきません。私が中に入ることで農家個人が持っている思いを、スピード感を持って、最大限社会に共感させることができると感じています。
共感されるかどうかということは、確かに、農業のみならず、これからの社会において大きな価値となり得るのではないでしょうか。
アグリコーディネーターという生き方。一つの新しい農業へのかかわり方を見せていただきました。
宮本さん、ありがとうございました!