家庭菜園から宇宙農業まで! 超好熱菌の可能性を探る【畑は小さな大自然・番外編】
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家庭菜園から宇宙農業まで! 超好熱菌の可能性を探る【畑は小さな大自然・番外編】

連載企画:畑は小さな大自然

家庭菜園から宇宙農業まで! 超好熱菌の可能性を探る【畑は小さな大自然・番外編】
最終更新日:2019年08月19日

こんにちは、暮らしの畑屋そーやんです。前回に続き、80度以上の高温で発酵する微生物「超好熱菌」を利用した土づくりを行っている企業、金澤バイオ研究所を取材しました。高温で分解発酵を行うことで、堆肥化のスピードを格段に早め、病原菌や化学物質も分解してしまうという超好熱菌。この超好熱菌の実際の利用例や意外な活用の可能性について伺いました。

【プロフィール】

金澤先生 金澤晋二郎(かなざわ・しんじろう)
株式会社 金澤バイオ研究所 所長。元九州大学農学部教授。専門は土壌微生物、土壌生化学、環境微生物学、未利用有機物の資源化など。2001年の九州大学で行われた「学内ゼロエミッションプロジェクト」で提供した超好熱細菌をもちいた「超高温・好気発酵法」による有機質肥料「土の薬膳」が好評だったことをきっかけに、退官2年前に株式会社 金澤バイオ研究所を設立し、土づくりに取り組む。常時80度以上の高温で好気発酵を行う超好熱細菌を利用した「超好熱・好気発酵法」を開発し大腸菌、害虫病原菌、寄生虫、雑草種子などを死滅させたクリーンで高品質な肥料「土の薬膳®」を開発する。その他、様々な企業や機関との共同研究やプロジェクトも手がける。
聡子さん 金澤聡子(かなざわ・さとこ)
金澤バイオ入社前は東京で音楽系雑誌の編集の仕事に携わっていたが、父・晋二郎さんの研究の仕事をアルバイトとして手伝ううちに土の魅力にはまり、金澤バイオ研究所の正式スタッフとなる。九州大学ブランドグッズ「土の薬膳®」をより使いやすく、広く知ってもらうための商品開発や企画を行う。

金澤バイオ研究所の培養土とは

「土の薬膳®」を中心にブレンドされた培養土。このまま植物を植えることができる(写真提供:金澤バイオ研究所)

――僕は都市部で箱庭菜園などを作る仕事もしているのですが、土がないところで畑を作るときは、いつも金澤バイオさんの培養土(※)を使わせていただいていて、とても重宝しています。本当に丈夫な野菜が育つんですよね。

※培養土:そのまま植物を植えられるように栄養成分が調整されている土

聡子さん: ありがとうございます。最初は土に肥料のように混ぜて使う「土の薬膳®」だけを販売していたのですが、雑貨店さんからそのままプランターなどで使える培養土が欲しいということで、培養土も作りました。ホームセンターで売られているようなものよりは値段的に高いのですが、土を入れ替えなくても良く、野菜も良くできて虫や病気の発生も抑えられるので喜んでいただけています。

――土の入れ替えがいらないのはなぜなのでしょうか?

金澤先生: それはね、普通の培養土は化学肥料のように野菜に吸収されやすい状態で栄養素が入れてあるんだ。その栄養素を野菜が吸って大きくなるんだけど、それを吸いきっちゃうと栄養がなくなるから、土ごと入れ替えないといけなくなる。

でも「土の薬膳®」の場合はね、「腐植」っていう栄養素を貯めておく貯蔵庫のような役割をもつ物質がたくさん含まれているんだよ。この腐植はね、黒い色をしているから、良い土は黒いところが多いだろ? それがこの腐植の色なんだ。この腐植に貯められている栄養で野菜は大きくなるんだけどね、一度に全部は分解されずに栄養は土に残り続けるからね、野菜を植え替えるたびに少しずつ有機物の追加として「土の薬膳®」を足していくだけで、土を丸ごと入れ替えなくても栄養が足りるんだよ。もちろん他の有機質の土にも腐植は含まれているけどね、「土の薬膳®」は超好熱菌で好気発酵させているから特に良質な腐植質の多い土になるんだよ。

――なるほど、土の中に栄養が貯められていて、そこからが少しずつ栄養素が吸収されていくようなイメージなんですね。化学肥料は吸収されやすい分、なくなるのも早いと。

金澤先生: そう!

金澤バイオ研究所の培養土を使ってそーやんが野菜やハーブを植え付けした直後の様子

植え付け後1カ月の様子。葉の色艶がよく、茎や葉が丈夫に育っている

――いつも土の入れ替えいらずで楽だなと思っていたんですよ。メンテナンスが楽だと、家庭菜園での野菜の栽培もとても簡単で楽しくなりますよね。

聡子さん: 微生物の違いや、土の違いってなかなか目に見えるものではないので、販売する際に金澤バイオの土の良さをアピールするのが難しいのですが。
家庭でも当たり前に野菜が作れる世の中になれば、野菜の高騰とか健康の問題とかこの土でクリアできるのはないかと思っています。

――農家でこちらの「土の薬膳®」を使っているところはあるのでしょうか。

聡子さん: 使っているところもあるのですが、やはり農家の場合は培養土の場合よりも毎回使う量が多いので費用がかかりすぎるのがネックになっています。
今は高価で良質な原料をお金を払って集めて、培養土を作っています。実は今「産業廃棄物処理業」の許可を申請していて、許可が下りれば産業廃棄物の処理費としてお金を頂き原料を集めることができるようになるんです。そうなれば原料代が抑えられるので、販売価格もだいぶ下げられると思います。
さらに、配送料が高くつくので、各地域で出る産廃や資源を使って堆肥を現地で作ってもらうようなこともしていきたいですね。

――それはいいですね! 各地域の地域資源や産業廃棄物を堆肥として再利用する循環が当たり前になると面白いですね。

聡子さん: 今は、鹿児島で農家さんに委託という形でお茶の生産も行なっています。こちらは100%「土の薬膳®」で土づくりを行なっているのですが、虫や病気の問題もほとんどなく、味も良いと評判です。

鹿児島の指宿で委託生産しているお茶(写真提供:金澤バイオ研究所)

――なるほど。費用面での問題がなくなれば、農業での利用も十分期待できそうですね。

超好熱菌は今後どう役立つか

――宇宙関連のプロジェクトにも参加されていたとお聞きしたのですが、金澤バイオの土づくりに欠かせない超好熱細菌は宇宙でどのように役立つのでしょうか。

金澤先生: それはね、宇宙農業よ。現在、火星で宇宙ステーションを作ろうという計画があって、それができたらね、そこで農業しようという話。やっぱり宇宙でもここと同じようにおいしい野菜を食べたいじゃない。それに宇宙ステーションで一番問題になるのが、生ゴミ、人の排せつ物や汚水などの処理の問題。宇宙空間にいろんな廃棄物を放り投げるわけにいかないからね。それを超好熱細菌を使ってリサイクルして、有機質肥料を作って、また農作物栽培に利用するんだよ。

――宇宙とはまたすごいですね。大地がない宇宙でも微生物の力で、循環が生まれちゃうんですね。

聡子さん: それから、あるテレビ番組の企画で、福島第一原発事故によって汚染された土から放射性物質を取り除く実証実験の中で、超好熱細菌が使われたことがありますよ。
汚染された土壌でヒマワリを育て、土から放射性物質を吸わせることで汚染土を浄化するという方法です。でもその放射性物質を吸った後のヒマワリの残渣(ざんさ)がとてつもない量になるので、今度はその処分が大変という問題があるんです。そこで、超好熱細菌を使って有機物を分解し、残渣の量を大幅に減らそうという企画でした。
結局、私たちが現場に行くことができなかったため、その企画自体が途中でストップしてしまったのですが、超好熱細菌の新たな可能性を感じられた出来事でした。目に見えない微生物の役に立つシーンは、私たちの想像を超えているとつくづく思いますね。

――へ〜、そんなことも! 超好熱細菌はこれからいろんな分野で活躍していきそうですね。

金澤先生: 研究ってのはね、実際に世の中の役に立ってこそだと思ってるからね。農業だけではなくて、いろんな分野での問題を解決できればと思ってるよ。

株式会社金澤バイオ研究所

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