「棚田アイス」を食べて保全支援に 若き夫婦がアイデア発信
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「棚田アイス」を食べて保全支援に 若き夫婦がアイデア発信

「棚田アイス」を食べて保全支援に 若き夫婦がアイデア発信
最終更新日:2019年09月06日

神奈川県・葉山町の棚田でできた米からこだわりのアイスを作っている30代夫妻がいる。聞けば夫妻は東京から葉山へ移住し、農業は未経験者だったという。非農家だった夫妻が、なぜ棚田で米を作り、さらにアイスを作るに至ったのか、これまでの物語を聞いた。

棚田は存続の危機!

山口冴希(やまぐち・さき)さんとミュージシャンの夫は、ともに横浜育ちの都会っ子。結婚後は都内で生活をしていた。ところが、たまたま訪れた葉山の地で、相模湾越しの美しい富士山に心を奪われた夫は、わずか1カ月後に移住を決めてきた。2015年冬、冴希さんと3人の幼い子どもを連れて葉山へと移り住んだ。そこで出会ったのが棚田だ。
知人から「米作りをしているので、一緒にやってみないか?」と声をかけてもらい、初めて棚田に足を踏み入れた。

葉山町上山口にある棚田は、「にほんの里100選」にも選ばれた美しい景観で地元の人に愛されている一方、所有者の高齢化により、棚田の維持が難しくなっている。
そこで、棚田を応援したいという地元の有志がチームを作り、農作業を手伝っているのだ。山口夫妻が参加したチームは、7人で16枚の棚田を管理している。葉山にはこういった棚田チームがいくつかあるという。

「にほんの里100選」にも選ばれた葉山町上山口の棚田

「農作業は初めてのことだらけで、どれも楽しかったです。私たちは、つい都会的な発想で、無いものは買うという感覚だったのですが、農家の方は何でも自分で作るんです。例えば、田植え前には崩れたあぜを直して、水が漏れないように田んぼの周りを囲ってあぜを作るのですが、あぜから削った土を一度泥にして、それをまたあぜの内側や上に塗り固めて、壁を作っていくんです。ある物と知恵を使って工夫をする農家の仕事を見て、純粋にかっこいいなと思いましたね」と二人は当時を振り返る。

アイスを食べて棚田の保全を

本格的に棚田チームとしての活動を始め、年間の米づくりを経験した山口夫妻。そこで見えてきたのは、棚田が置かれている厳しい現実だった。
棚田は山の斜面に階段状に作られており、一枚の耕作面積が小さく大型の農業機械を入れられないことから、普通の田んぼの2倍人手が必要だ。有志チームには会社勤めの人もおり、手伝える頻度も限られている。全員が長期的に活動できる保証もない。
加えて、葉山の棚田は水田が60枚と規模が小さく、収穫量の少なさから市場流通ができないため、地元の人でも棚田の米を食べられる機会はほとんどない。
夫妻は、農作業を手伝う他に棚田を守る方法はないかと考えるようになった。

季節や時間帯によってさまざまな顔を見せるのも棚田の魅力

この年に夫妻が手伝った棚田から収穫して分けられた米は30キロだった。食べてしまえばすぐになくなってしまうこのお米を、多くの人に楽しんでもらいたい。そこで、米を発酵させて甘酒アイスを製造することを考え付いた。試作は料理上手な冴希さんが担当した。「周りの方にも食べてもらい、感想をいただきながら試作を繰り返しました。アイスにするとお米10キロから1000カップ作れたんです。多くの人に棚田の米を楽しんでもらうチャンスが生まれました」
小ロットでもアイスを製造してくれた工場や取り扱いをしてくれた飲食店など、新しいことを受け入れてくれる葉山の人々のおかげで、構想から約1年で「葉山アイス」が完成した。

このアイスの面白い点は、売り上げの一部を棚田に還元する仕組みになっていることだ。還元されたお金は棚田の保全活動に使われる。
「寄付ではなく、楽しみながら応援する設計ができないかなと思ったんです」と語るのは、発案者である冴希さんの夫。実際、「棚田の応援になるならぜひお店に置かせて」と、多くの飲食店から共感を得られ、町のふるさと納税の返礼品にも選ばれた。

優しい味わいの「葉山アイス」

「葉山アイス」のもう一つの特徴は “ビーガンアイス”であること。葉山はオーガニックやビーガンの飲食店が多く、食への感度が高い街。親和性のあるアイスにしたいと思った。
「材料は甘酒とココナッツと豆乳がメインで、砂糖はきび砂糖。乳製品を使わずにコクや滑らかさを出すために試行錯誤を繰り返しました。また、ビーガン料理はストイックな味が多いけれど、普通のアイスのような食べごたえも欲しくて、正直な子どもたちの意見も参考にしました」
ビーガンアイスを作ったことで、思いがけずうれしい出来事があったと冴希さんは言う。
「あるイベントでアイスを売った時に、乳製品アレルギーでアイスを食べたことがないという男の子に出会って、お母さんがアイスを買って下さったんです。人生で初めてのアイスを食べてすごく喜んでいる姿を見て、こちらもうれしくて泣きそうになってしまいました」

葉山から全国の棚田へ

笑顔を生む「棚田アイス」の取り組みは、人々の共感を呼び、新たな広がりをみせている。
全国の棚田農家が集う「全国棚田サミット」への参加を機に、同じ悩みを抱える高知県・嶺北(れいほく)地域の棚田農家と出会い、早速、コラボレーションが実現した。嶺北の米を葉山に送ってもらい、冴希さんがアイスを作る。完成した「嶺北アイス」は嶺北地域で販売し、棚田の保全活動に還元される予定だ。他の地域でも同様のことができるよう、2018年には会社を設立した。

ほかにも、ミカン農家や葉山の茶屋など多方面でコラボレーションを始めている。その背景について、ミュージシャンならではの視点を夫が語ってくれた。
「どう伝えるかって、とても大事だと思うんです。歌詞と曲のバランスに似ていて、歌詞だけ読むと重たい内容でも、音楽に乗せるとスッと入ってくることがある。『棚田の存続が大変なんです!』と主張すると、聞いた側は『難しいことを言われている』『重い』と感じてしまうかもしれません。まずはアイスを食べておいしいと感じてもらって、これって実は棚田のお米を使ってるんだってところから、応援したいと思ってもらえたらいいなと。わくわくする取り組みの方が、多くの人に知ってもらいやすいと思っているので、今後もさまざまなコラボをしていきたいですね」

「BEAT ICE(ビートアイス)」と自身のアイスブランドに名付けた夫妻。「舌鼓を打ち、鼓動が高鳴るアイスクリームの探求ラボ」という意味が込められている。アイスで棚田を応援するアイデアを生み出し、穏やかな人柄と熱意で周りを巻き込んでいく冴希さんの夫と、どんな状況も楽しみながらアイデアを実現していく冴希さん。新しいことにチャレンジしていく2人の話を聞いているうちに、こちらの胸も高鳴っていた。

BEATICE

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