NEXT AGRI PROJECT in東京 2019 開催報告

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NEXT AGRI PROJECT in東京 2019 開催報告

NEXT AGRI PROJECT in東京 2019 開催報告
最終更新日:2019年09月19日

様々な課題を抱える日本の農業界の中で、農業の新技術や伝統的な農法など多種多様な取り組みやそれを支援する人々が情報発信するイベント、「NEXT AGEI PROJECT in 東京」が2019年9月11日、品川インターシティホールで開催。16の講演・セミナーと並行して12の展示ブースでも各社の取り組み紹介も行われました。その模様をダイジェストでお伝えします。

【ただ今開催中!】NEXT AGRI PROJECT in大阪
農業の今と未来が分かるイベント
農業の今と未来が分かるイベント
【開催日時】 2019年9月19日(木)・20日(金)10:00~17:00 【開催会場】 大阪国際会議場(グランキューブ大阪) 大阪市北区中之島5丁目3-51 3F イベントホール

マイナビ農業のこれからの展望

マイナビ農業のこれからの展望について
執行役員 農業活性事業部 事業部長 池本 博則

「マイナビ農業は2017年8月に“いちばん大きな寄合所になりたい”という思いをもってスタート。農や食に関わる方をすべて情報でつなぐことを目的として事業を展開してきました」とこれまでを振り返り、そのメディアとしての成長や農業関係の多方面との連携の広がりを紹介しました。
今後については、マイナビ農業が新たに展開する農業マッチングアプリ「農mers」を発表し「就農のハードルを下げ農業人口の底上げを図る」としました。その他にも農業をビジネスとして発展させる取り組みを展開していくとして、「農業関係人口を増やし、ビジネスとして農業に取り組む人を幸せにし、農業の課題解決につなげる」という従来のマイナビ農業の姿勢を改めて強調しました。

本講演は、9月20日の大阪会場でも聴講することができます
NEXT AGRI PROJECT in 大阪
NEXT AGRI PROJECT in 大阪
【開催日時】 2019年9月19日(木)・20日(金)10:00~17:00 【開催会場】 大阪国際会議場(グランキューブ大阪) 大阪市北区中之島5丁目3-51 3F イベントホール

「農業関係人口を増やす」取り組みを発表

マイナビ農業アワード表彰式・パネルディスカッション

農家や農業関係者の取組みを表彰するコンテスト「マイナビ農業 アワード2019 ~関係人口を増やそう~」。今回は、8月末に発表された受賞者のうち5名の表彰式と、受賞者によるパネルディスカッション行いました。

今回受賞された皆さん(写真右から)

  • 団体の部 優秀賞 株式会社ビビッドガーデン 秋元里奈(あきもと・りな)さん
  • 農業法人の部 優秀賞 大野農園株式会社 大野栄峰(おおの・よしたか)さん
  • 個人経営の部 優秀賞 手島農園 手島孝明(てしま・たかあき)さん
  • 教育・福祉の部 優秀賞 宮城県農業高等学校科学部 山口誉人(やまぐち・たかと)さん
  • 教育・福祉の部 優秀賞 元気ファーム 百合川祐司(ゆりかわ・ゆうじ)さん

パネルディスカッション

ファシリテーターは小谷あゆみさん

パネルディスカッションのファシリテーターは、農業ジャーナリストでフリーアナウンサーの小谷あゆみさん。まずは小谷さんから「農業関係人口」という言葉について、「生産者は高齢化し農村に暮らす人は減少しているけれども、棚田オーナーなどになって畑を支えたり、ふるさと納税で買い支えたり、たまに農村に旅したりなど、いろんな方法で農業に関わる人増やすことで、新たな農業関係人口を増やすことができるのではないか。そういう意味で、大切なキーワードになっている」と説明。今回のマイナビ農業アワード受賞者を「農業活性化のビジネスを展開するとともに“農業関係人口を増やす”取り組みをした方々」と紹介しました。

■これまでの取り組みの紹介

ビビッドガーデンの秋元里奈さん

株式会社ビビッドガーデン代表取締役の秋元里奈さんは、自社のオンラインマルシェ「食べチョク」を通じた取り組みを紹介。「スマホのサービスで“一度買う”というところから生産者と消費者をライトに結びつけ、次第に定期購入へと両者の結びつきをより強くしていく」という面で、農業関係人口を増やすことにつながっているのではと述べました。他サービスとの差別化については「生産者自身が販売の主体となること」が決定的な違いであるとして、
消費者にとっては農家と直接やりとりし農家から直接野菜が届くので、安心して新鮮なものが食べられるというメリットがあり、生産者にとっては自分で価格を決められ間に物流も介さないので利益率が高いと説明しました。直接2者がつながることで、生産者にファンがつく仕組みであるため、安定した収益につながりやすい仕組みとなっています。
秋元さんの実家は廃業した農家で、新卒で入社したのはインターネット関連企業のDeNA。その経験から、ITの知見や大企業とのコネクションを活用して事業を展開しているとのこと。食べチョク以外でも、大企業の社内食堂でのマルシェやSNSを有効活用した生産者の魅力の発信などの取り組みについても発表しました。

これを受けて小谷さんは、秋元さんの着ていた「こだわり農家の朝どり野菜をご自宅で、食べチョク」と書かれたTシャツについて触れ、「生産者と消費者の有機的なつながりを作った素敵なサービス」とコメントしました。

大野農園の大野栄峰さん

福島県でモモやリンゴの生産・加工販売を行う大野農園株式会社代表取締役の大野栄峰さんは、個人経営から法人に移行して7年間に、家族経営だった農園が農業関連イベントなど多彩なコンテンツで収益を上げる法人になった過程を紹介。まずは会社経営のインフラ整備として、家と会社の電話回線を分けるなどの基本的なことから着手したと、農家あるあるを交え振り返りました。
また、法人化前は果物が出荷できる半年間しか収益がなかったが、現在は果物の売上の無い時期も加工販売や農園を使ったイベントを開催することで、年間を通じて収支のバランスを整ったそう。イベントなどを通じて消費者との交流し、ファンづくりつながっていると言います。
現在社員24名を抱える大野農園が大切にしているのは「エースで4番を作らない」こと。誰か頼りの仕事は、もしその人が抜けたらお客様との約束を果たせなくなってしまう。そうした会社として当たり前の経営の大切さを語ってくれました。

農業の課題として自然災害による作物への被害に対するリスク分散について震災の影響は大きかったかという小谷さんからの質問に対し、大野さんは「震災の時には風評被害、それがなくても毎年台風やひょうの被害がある。しかし、傷ついた果物も傷を再生しようとして栄養価や糖度が高くなると言われている。フルーツカルチャープロジェクトというチームを立ち上げて、そこに価値をつけて販売することができないかという研究などをしてリスクヘッジを考えている」と述べました。

手島農園の手島孝明さん

埼玉県で「男気トマト」というトマトを生産・販売する手島農園の手島孝明さんは、農業の魅力を消費者だけでなく様々な方面にダイレクトに伝えることの大切さを訴えました。納品先のスーパー店頭でのイベントは、消費者に対し、トマトのおいしさだけでなく日ごろの農作業の楽しさ、おいしい野菜の料理、農家の日常がどういうものなのかを客にダイレクトに伝える機会だと言います。また、農園に直接トマトを買いに来た方に収穫体験を勧め、体験の際に手島さん自身の栽培方法や作物への情熱を伝えことで、生産者と消費者の壁を低くなる気がすると発表しました。また現在は研修生2名を受け入れ、農作業だけでなく、農業に不可欠なマーケティングや営業に関しても教えているとのこと。
マスメディアに対してニュースリリースを送ったのをきっかけにテレビ出演を果たしたそう。また今年3月に始めたTwiterはすでにフォロワー1万人を突破、より多くの人に農業の魅力を広く伝える活動を重ねています。「我々生産者は目先の利益にとらわれず、多くの人に農業の魅力を発信し、理解・共感してもらうことが必要だと確信しています」と締めくくりました。

研修生の受け入れのきっかけは何かという小谷さんからの質問に対し、手島さんは「一人はTwitterを通じて私の取り組みに共感して一緒にやってみたいと自ら連絡してきた方、もう一人は納品しているスーパーで知り合った方の息子さんで、うちの子を預かってほしいといわれた」とのことで、情報発信の活動が就農者の育成にもつながっている様子がうかがえました。

宮城県農業高校科学部の山口誉人さん

宮城県農業高校(以下「宮農」)科学部の代表で発表したのは、宮農3年生の山口誉人さん。正式名称「宮城県農業高校科学部復興プロジェクトチーム」として、宮城県沿岸の復興に役立てればと緑化活動をしている部活動です。

2011年の東日本大震災の津波に耐えた宮農の校庭の桜の木が花を咲かせて人々を勇気づけたことから、それを復興のシンボルにしようと、宮農の高校生たちがその桜を組織培養して苗を育て、沿岸部に植えたのがこのプロジェクトの始まり。これまで桜の植栽法を試行錯誤して緑化に努力してきたそうですが、次第に生育不良に。その原因を調べたところ、木の根が土壌改良エリア外のチッソ量が不足している場所まで伸び、枝の成長に影響を与えていることがわかりました。そこで堆肥を与えることにしましたが、課題は経費と労力の不足でした。
そんな時高校の授業で、桜の花を摘み取ることで木への負担を軽減できることを知り、摘花した桜で桜塩を生産し、その売り上げで堆肥を購入して桜の成長を促すという循環型6次産業にしようと開発を始めました。桜を乾燥させるための家庭用乾燥機の製作にも取り組み、地域産業の定着も図り、産官学連携で商品が完成。ストーリー性を重視して「被災地の桜de塩」と名付け、特許庁に商標登録を出願しました。
高校生の取り組みはひきこもりがちな元農業者も巻きこんでいます。住民グループ「にこにこばぁ」が結成され、桜塩の産業化を加速させているとのことで、「桜塩の売上を寄付したり堆肥の購入に充てたりして、さらに緑化を推進できているうえに、地域の方々に生業の道しるべを示せている」と取り組みの成果を語りました。

震災の後、農地を失いモチベーションを失ったという話を聞くが、高校生が地域の方々に声をかけることによって、地域の人々に変化があったか?との小谷さんの質問に、山口さんが「我々高校生が声をかけることで少し明るくなったといわれることも多い」とコメント。小谷さんは、宮農の取り組みや山口さんの今後の活躍に期待を寄せました。

元気ファームの百合川祐司さん

障害福祉サービスを提供する社会福祉法人が母体の元気ファームは、職員が障害者の方と一緒に周囲の遊休農地を借りて立ち上げた収穫体験型の観光農園。収益はそこで働く障害者の手当てに還元し、農福連携を実現しています。
年間を通じてイチゴ・ブルーベリー・タマネギ・サツマイモなど作物を作ることで障害者の作業を生み出す努力をしているとのこと。また埼玉県の鴻巣市という立地もあり首都圏から近く多くの客に足を運んでもらえ、作物を出荷するよりも収益は高くなっています。中でもひまわりは、福島から種をもらって栽培し種を福島に返してヒマワリ油にする“栽培ボランティア”。これまで支援される側だった障害者が、ボランティアをして支援する側に回ることにも意義を感じていると、取り組みの効果を語りました。
いちごは高設栽培で障害者にとって作業がしやすく、車いすも通るためお客様にとっても過ごしやすい環境とのこと。無農薬での栽培は害虫被害もあるが、それがお客様にとっても安全の証明になると、農福連携の派生的な効果も語りました。

■これからの展望について

ビビッドガーデンの秋元さんは、今後単品野菜の売り先として、または社員の福利厚生の一環として、法人に対してのサービスの展開を強化していくと具体的な事業の広がりを説明。先日発表された神明ホールディングスとの提携について言及し、彼らの物流網でもっと安く野菜を流通させることで、生産者・消費者にメリットのある事業展開を実現させようとしています。

また、大野農園の大野さんは地域資源を活用したイベントを強化し、購買につなげたいと話しました。また、「農作業」を「体験」にして労働力確保につなげるイベントも行っているとのこと。果物の枝を拾ってその枝で焼き芋をするイベントなどを企画し、農作業をただの作業ではなく価値に変え、収益をあげていると発表しました。今後はこれをさらに企業研修などにも展開したいと意欲を見せました。

手島農園の手島さんは、活動は続けなければ意味がないので、これまで通り農業の魅力を発信する取り組みを続けていく、としたうえで、さらにそれを強化するために収穫祭の実施を企画しているとのこと。
また、雇用体系などを整えもっと多くの研修生を受け入れ、農業を志す人に私の持つものをアドバイスしていきたいと力強く語りました。

宮農科学部の山口さんは、今後も沿岸部の土壌改良を目指して堆肥の投入を続けることを目的とし、住民グループと協力して桜塩の生産など循環型6次産業を続けるとのこと。また、「高校生が作った桜の国」を打ち出して沿岸部の桜を観光地化し国内外の多くの人に訪れてもらうことを考えていると、地域全体の経済への貢献も視野に入れていました。
山口さんは卒業後も部活に参加し、後輩へのアドバイスやサポートを続けたいと語りました。

元気ファームの百合川さんは、働く障害者が農業を通じて訓練を積んで、社会に出せるよう取り組みを続けるとともに、農家に負けない農業技術を身に着けたいと意気込みました。

小谷さんからの「障害者の方と一緒に働くようになって変わったことはあるか」との質問に対し、百合川さんは「障害者が携わるということは私たちの価値観・認識ではできない。どういう風にすれば、彼らが作業をできるようになるかという視点で考える。そういう視点を持つことで、より多くの来場客を受け入れられる」としたうえで、「社会に対して障害者の能力が高いということを示していきたい」と語りました。

小谷さんは最後に5人の発表を聞いた感想として、ソーシャルインクルージョン(社会的包摂)といった人々のつながりの真ん中に農業があるということを5人の発表から感じたと締めくくりました。

★残る3人の受賞者によるパネルディスカッションは、9月20日のNEXT AGRI PROJECT
大阪会場で開催します。
NEXT AGRI PROJECT in 大阪

【ただ今開催中!】NEXT AGRI PROJECT in大阪
NEXT AGRI PROJECT in 大阪
NEXT AGRI PROJECT in 大阪
【開催日時】 2019年9月19日(木)・20日(金)10:00~17:00 【開催会場】 大阪国際会議場(グランキューブ大阪) 大阪市北区中之島5丁目3-51 3F イベントホール

将来、農業に関わる人を増やすには=学生の本音に迫る=

ベンチャー企業の経営者・生産者・メディアといった農業各分野のプロが、農業に関係する現役大学生20名とともに、日本の農業の現状と未来について語り合うトークセッションが行われました。

登壇者

西辻一真さん(上段左)、玄成秀さん(上段中)、会津宏樹さん(上段右)、斎藤純太郎さん(下段左)、窪田新之助さん(下段中)、三沢楓さん(下段左)

■ファシリテーター
玄成秀(げん・せいしゅう)さん
株式会社アグリペイ 代表取締役CEO

■パネリスト
★経営者の立場で
西辻一真(にしつじ・かずま)さん
株式会社マイファーム 代表取締役

★生産者の立場で
会津 宏樹(あいづ・ひろき)さん
アルファーム 園主

★メディアの立場で
窪田新之助(くぼた・しんのすけ)さん
ジャーナリスト

★学生代表
斎藤純太郎(さいとう・じゅんたろう)さん
東京農業大学醸造科学科4年

三沢楓(みさわ・かえで)さん
東京女子大学英語文学文化専攻4年

まずは現状を語る

まずは玄さんからこれまでの農業の発展の歴史の振り返りがあったうえで、農業の現状をそれぞれの立場でどうとらえるかというテーマでセッションが行われました。
青森県のリンゴ農家である会津さんは生産者の立場で、農村の高齢化と後継者不足に言及し「自分の経営を考えると、果樹は技術が必要なのでこれ以上の拡大は難しい」と述べました。
耕作放棄地を活用するビジネスを展開する株式会社マイファームの西辻さんは、「大量生産時代に自然を切り開いて畑にしたものの、今は優良農地だけが使われている状態。耕作放棄地を有効活用することで、多様な食に対応できるのでは」と農地の現状を解説。消費者がまず農業の現状を知り、「生活者に農に近寄ってもらうことが大事」と、農業関係人口を増やすことの意義を語りました。
スマート農業を中心に農業に関する取材をしている農業ジャーナリストの窪田さんは、作物に対する需要の変化や生産現場の人手不足の現状を見てきたとこれまでの取材を振り返りました。その上でロボットを活用するなど、従来の生産システムを変える取り組みの必要性を語りました。

そこで玄さんは会場にいる学生20名に対し「農業に魅力があると思う人は?」と問いかけたところ、大半の学生が手をあげ、その一人は「農業を学ぶ前は農業はきついとか稼げないと思っていたが、実際に生産者と会うようになって『農家は儲かっている』と思うことが多く、そこが魅力」と発言。
それに対し実際の農家である会津さんは「農業は本当に難しくて、試行錯誤した結果おいしいと言ってもらえることが魅力。妻はシャインマスカットが好きなので家庭菜園で育ててたべてもらい『おいしい』と言ってもらえたのが本当にうれしかった」と実体験を交えて語りました。

未来を語る

「未来を語る」のセクションでは、最初に未来を見据えて行動を始めている2人の学生が、自分の取り組みを紹介しました。
東京農業大学食料環境経済学部4年の新堀洋紀(にいぼり・ひろき)さんは、農地に存在する「もったいない!」を商品化する取り組みを紹介。山梨の完熟スモモは流通の間に熟しすぎてしまうため、一番おいしい状態で出荷することができないという現状から、これを活かす「スモモの塩ジャム」を開発。マイナビ農業のクラウドファンディングサイト「クラウドマルシェ」でこのプロジェクトへの寄付が目標額の154%集まったという実績を発表しました。

同じく東京農業大学で造園を学ぶ石坂暢琢(いしざか・まさたか)さんは、昨年の第56回技能五輪全国大会の造園職種で金賞を受賞、先日行われた第45回 技能五輪国際大会(ロシア連邦・カザン大会)の日本代表となり世界4位の成績をおさめた実力者。造園に携わる立場から「農業は天と地とつながる感覚が魅力。自分たちは地球の一部である、自分が人間であることを感じられる素晴らしい職業」と語りました。

以前から石坂さんを知る窪田さんは、石坂さんの活躍に触れたうえで「農業は本当に学問として間口が広い。石坂さんのほかにも東農大にはいろんな学生や先生がいて、様々な専門がある」と農業を様々な角度からとらえることの面白さに言及しました。

それをうけ玄さんは、農業は畑仕事だけでなく様々な分野にまたがって展開する中で、どの分野に注目しているかという質問を投げかけました。

「環境に優しいオンナ」を自称する東京女子大学の三沢楓さんは、「メディア」「経済・経営」「加工」に興味があると回答。自身のドイツへの留学経験から「食べ物を作ることはお金やSDGs(持続可能な開発目標)などの社会課題に関わると思う。加工では特にパッケージング。ドイツでは土が付いたまま売られているものが多いが、日本ではプラスティックフィルムに包まれている。どんなことも農業界隈と無縁ではないと感じる」と発表しました。
それを受け玄さんは「やはり農業は社会課題につながっている。海外と比べるとまだ日本では消費者はそういう意識が低いように感じる」とコメントしました。

一方、生産者である会津さんは「テック」に興味があると答え、草刈りなど現状の課題をロボットなどの新技術によって解決できる未来への期待を寄せました。

西辻さんは事業化の立場から「それぞれがどう関連しているのか考えないとビジネスは成り立たないので全部に注目している」としたうえで、農業界がより魅力的になって発展するためには、食べる人たちが近寄ってきてくれないかと思う。興味を持ってもらえれば農産物の購入価額が上がるはず」と生産者と消費者の距離が近づくことの効果を訴えました。

窪田さんは、アグリテックを加速度的に進歩させたくてもできない現状を紹介。「日本の農地は大型農機が走るには狭すぎ、また集積されていない。2ヘクタールの集積された農地であることが必要だが、そういう土地が日本にはあまりない。農業のマイナスの課題もきちんと考え伝えていくことが必要」とメディアについて語りました。

東京農業大学で発酵を学び、自ら家でアボカドを育てている斎藤さんは「現状として農業に対する理解が少ないと思う。幼いころの芋ほり体験ぐらいしか経験がなく、スーパーに行っても野菜がどう作られているかわからない。消費者の知りたいことと生産者が伝えたいことのギャップもある。そこを埋めるためにメディアの発信の仕方が重要」と発言しました。

同様に、実家が酒蔵で後を継ぐ予定だという東京農業大学醸造科学科の梅津久敬(うめづ・ひさたか)さんは、「ただお酒を造るだけではだめで、蔵見学などファンづくりをして蔵に愛情を持ってもらうことが大事。いろんな人がいろんなことができる時代だから、メディアに注目している」と語ると、玄さんは「インフルエンスさせることが重要」とメディアの役割をまとめました。

「人口が20年後には100億人に達すると言われ、新たな農業分野の構築が必要だと思います。皆さんが新たに取り組んでいることは?」との玄さんからの問いかけに対し、西辻さんは、リデン株式会社の農業プラットフォームAgmiruで展開するラクーザというネット上の市場のシステムを紹介。「今農業者は個々で差別化をしようと努力しているので、自分の野菜の価値が本当に評価される場所が必要。今市場には“相場”というものがあって、生産者は不本意な価格で出さざるを得ない状況。味などの品質がきちんと評価される場所やしくみがあれば、それが生活者の農業への理解につながる」とその意義を説明しました。

生産者の会津さんは「関東に来た時にスーパーで、1個30円以下で出荷したリンゴに158円の値がついていてぞっとした。消費者の方が値段イコール味だと思って買って食べて『マズい』となると、正当な評価につながらない」と現状の市場の価格設定に苦言を呈しました。

一方西辻さんは「来年あたり、どこでも気軽に野菜が作れるサービスを作ろうとしている」とも。それを受けて実際にアボカドを自宅で育てている学生の斎藤さんは、「僕は都内に住んでいるので、遠くの畑に行くのは難しい。身近なところにちゃんと農業ができるところあるといいなと思う」とマイファームの新サービスに期待を寄せました。

学生からの「顔の見える食材の需要」は今後高まると思うか?」という質問に対し、西辻さんは「間違いなく高まる。情報が世の中に出回れば出回るほど、この人(生産者)とつながりたい、と思う人が多くなる」と答えると、三沢さんも「自分もそういう野菜を買いたい。消費者にも背景を知ったうえで食材を買ってほしいと思う」と西辻さんの意見に賛同しました。

また「海外から安い農産物が入り人口も減少していく日本で、農家を増やすことで農家は儲かるのか」という会場からの質問も。
西辻さんは「日本は大量生産にどれだけ貢献できるのか、冷静になって考える必要がある」と課題を投げかけ、世界で一番良質なものを作り、消費者に理解させることができれば、世界の中でキラリと光る国になれる、とコメントしました。

農業関係者を増やすには

当日参加した20名の学生への事前アンケートで「農業・食関連の仕事につきたいか」という質問に対しYESと答えた人が70%近かったという結果が発表され、その中でYESと答えた筑波大学生物資源学部の門田楊子さんは「農業はかなりポテンシャルあると思っていて、今後活性化されていく分野だと思う。大学で農業の悪い面も学んでいるがそれでもこの分野に進みたい」とその理由を答えました。

玄さんから改めて「農業関係者を増やすにはどうすればいいか」というテーマに関して「もしかしたら多すぎるのでは、という議論も出てくるかと思うが」としながら改めて問題提起が行われました

それに対し西辻さんは「農業界全体の話では、人を減らして少ない人数で効率的に、という話になっている。農業者の数が減るのは自然の流れなので、危機感をあおらなくても良いのではないか。今後は従来の生産者ではなく、新しいタイプの農業者が増えていく。例えば兼業農家とか、農泊をやる人とか。農業はより経営能力が問われるものになる」と答えました。
また会津さんは、かつて会長を務めていた全国農業青年クラブ連絡協議会(4Hクラブ)について触れ「世界70か国以上に4Hクラブはあるが発祥の地であるアメリカや韓国では若手農業者の組織ではなくなった。農業に興味のある社会人がリーダーになって、その下で子供達が活動している。農業人口が不足している先進国では農業関係者を増やすためにアプローチする年齢をどんどん下げている」と海外の現状を説明したうえで、教育という部分で子供たちにアプローチしたいと語りました。

最後に「農業界のあるべき姿とは」との問いかけに対して、窪田さんは「農業を食という産業でとらえたときに面白くなる。農業の新しい捉え方が大事なのでは」と答えました。一方会津さんは「農家として多様化していないといけない。ただ作るだけでは生き残っていけない」と農家の自助努力の必要性についても言及。
また西辻さんは「会津さんがおっしゃるとおり、農家が多様性をもって食べる人がどうやったら幸せになるか考え、たまにはそこからフィードバックをもらってコミュニケーションをしながら栽培できるような、そういう農業を実現していきたい」と締めくくりました。

その他の講演・セミナー

顧客ライフスタイルに合わせた農産品プロデュースと、次世代の生産者に求めること(三越伊勢丹)

三越伊勢丹さん 三越日本橋本店 食品・レストランMD統括部 日本橋食品・レストラン営業部 計画担当長
林 真嗣

様々なチャネルで農産品の販売が行われ情報も溢れかえるマーケットの中で、顧客に支持される価値を提供し続けていく方法を具体的な事例をもとに紹介。

DEEP VALLEYアグリテック集積戦略~儲かる農業都市 ふかやの実現に向けて~(深谷市)

深谷市 深谷市長
小島 進

多様な農産物を産出する深谷市がめざす、日本の農業が抱える課題の解決に挑戦するための「アグリテック集積都市 DEEP VALLEY」の戦略について紹介。

都市と地方をかきまぜる(株式会社ポケットマルシェ)

ポケマル 代表取締役CEO
高橋 博之

「地方と都市をかき混ぜる」をモットーに、生産者と消費者が直接生産品を売買するCtoCプラットフォーム、ポケットマルシェ。「かき混ぜる」ことによって開かれる農業の未来について講演。

農業×日産のものづくり~異業種連携による 農業生産性向上の実践~(日産自動車株式会社)

日産 生産企画統括本部 APW推進部 APW改善コンサルティング室 課長
伊藤 嘉津美

製造業のモノづくりの考え方は農業の分野でも適用できるものであるとして、実例を通して生産性向上の取り組みの進め方を紹介。

豚の体重推定システム「デジタル目勘」のご紹介(伊藤忠飼料株式会社)

伊藤忠 業務部 情報システム開発チーム長
福永 和弘

NTTテクノクロスと伊藤忠飼料が共同開発中の小型軽量の携帯型豚体重推定システム「デジタル目勘」。豚を撮影するだけで体重を推定するシステムの具体的なメリットについて紹介。

DWファイバーによる土壌改善事例(大建工業株式会社)

国内事業企画部
新治 良太

DWファイバーとフルボ酸による、収量が落ちていたり生育がよくないなどの困りごとを抱える農地の改善事例について紹介。

協業が拡大しているプラットフォーム事業アグミルの紹介(リデン株式会社)

リデン(株) 代表取締役
ソフトバンク・テクノロジー(株) 公共事業部 副事業部長
上原 郁磨

データ活用で確実性の高い農業経営を実現する農業プラットフォーム「AGMIRU」。 情報配信・資材購入・画像診断・生産管理・作物販売・会計・金融等をスマホで一元管理できるシステムについて紹介。

「ハタチの畑」プロジェクト シャインマスカットの超省エネ栽培で稼げるゼミ(株式会社Playest JAPAN/未来農業Short Legs Group)

雨宮 幸生起・加賀見 進・長谷部 野歩

果樹の超省エネ栽培技術をマニュアル化するなど、山梨を始めとして日本の耕作放棄地の解消にチャレンジする山梨県立大学と拓殖大学との共同プロジェクトについて紹介。

自然エネルギーとIoTや栽培技術融合で八幡平の農業活性化(MOVIMAS×八幡平市(スマートファームPJ)/八幡平スマートファーム×東洋製罐グループ)

株式会社MOVIMAS 代表取締役
兒玉 則浩
鋼鈑商事株式会社 取締役
江口 規和

岩手県の八幡平市で進められている、地熱を利用した自然エネルギーと最新のIoTや栽培技術の融合で、農業者の高齢化と施設の老朽化で放棄されたビニールハウス群を再生する農業振興プロジェクトを紹介。

農家だって、座銀でシースー!(アンビアンインターナショナル株式会社)

古山果樹園 代表
古山 浩司

コーンコブミラクルを使用して、限りなく世界一甘い桃作りをしている古山果樹園の代表が、「農家だって銀座で寿司を食べることができるんだ!」を語る。

“むかしながら”が現代の最先端!自然農からの新産業創出(日本豊受自然農株式会社)

代表取締役
由井 寅子

戦後の日本農業の常識を超えることで、地域の農業が健康の最先端産業として雇用を創出し、都会の人も健康する「豊受式新農業革命」について語る。

ICT活用した多機能自動給水栓「水まわりくん」の導入事例(積水化学工業株式会社)

環境・ライフラインカンパニー 総合研究所 エンジニアリングセンター
田中 正

農林水産省と連携した実証試験の事例など、水田用の多機能自動給水機「水まわりくん」によって実現できる、水管理の省力化効果や高品質・高収益効果などを紹介。

日本におけるバイオスティミュラントの展望(日本バイオスティミュラント協議会)

協議会理事 技術・調査委員(所属:愛知製鋼株式会社)
鈴木 基史

「植物の能力と農作物の価値を高める資材」として期待される、農薬とも肥料とも異なる新しいカテゴリーの資材「バイオスティミュラント」。協議会の活動と日本での展望を紹介。

展示ブース

アンビアンインターナショナル株式会社

アンビアン 土壌改良、地力改善で、安全で、美味しく、安心な農産物を作ることを応援します。

伊藤忠飼料株式会社
NTTテクノクロス株式会社

デジタル目貫 カンタン操作で豚を撮影すれば体重を推定する「デジタル目勘」

植木屋革命クイック・ガーデニング

ガーデニング 個人邸・オフィス等の植木の手入れ(剪定)業

スプレーノズルの世界ブランド TeeJet

スプレー 農業用スプレーノズル及び関連機器、制御機器

積水化学工業株式会社

三越伊勢丹さん 多機能型自動給水栓「水まわりくん+エアダスバルブ」

リデン株式会社/ソフトバンク・テクノロジー株式会社

アグミル 「agmiru」スマート農業プラットフォーム

大建工業株式会社 × 国土防災技術株式会社

大建 DWファイバーとフルボ酸による土壌改良事例

デンヨー株式会社

デンヨー 長期・広域停電に備えた非常用発電機のご提案

日産自動車株式会社 日産コンサルティング

日産 クルマづくりで培った「日産生産方式」で農業の生産性向上を実現

日新商事株式会社

日新 ①ハウス用遮熱資材『明涼』
②CO2局所施用『ブレス』

農業法人 日本豊受自然農株式会社

日本豊受 在来種自然栽培、化粧品&食品製造、農場レストランと健康事業

MOVIMAS×八幡平市(スマートファームPJ)
八幡平スマートファーム×東洋製罐グループ

MOVIMAS 新たな農業ビジネスモデルとして耕作放棄された熱水ハウスを再生し新規就農者を育成するスマートファームプロジェクトを推進

「ハタチの畑」プロジェクト
シャインマスカットの超省エネ栽培で稼げるゼミ

ショートレッグス 山梨県立大学と拓殖大学との共同プロジェクトです。果樹の超省エネ栽培技術をマニュアル化し、さまざまなニューコンビネーションにより、山梨を始めとし、日本の耕作放棄地の解消にチャレンジします。

会場風景

参加者の声

「農業関係の企業に就職したいと考え自分の勉強している分野が活かせる会社などがないか見に来た。こんなにいろんな企業があるとは知らなかった」(大学院生)
「長野に移住し就農したが、今日はどうしても聞きたいセミナーがあり、上京した。ほかの農家ももっとこういう機会を活かしたらいいと思う」(果樹農家)
「農業の多方面からの見方を学びたいと思って来た。まだ知らないことが多いので、とても勉強になる」(学生・農業ベンチャー企業のインターン)

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