農業の消費税8%と10%
――消費税率は、2019年10月1日から標準税率10%になり、同時に軽減税率制度が導入されました。農業関係は、軽減税率8%と10%が混ざることがありますよね。どういった線引きに注意すればよいでしょうか?
報道では軽減税率の大変さばかり言われていますが、大丈夫です! 分かってしまえば何でもないです。頑張りましょう、軽減税率!
まずは軽減税率について説明しておきますね。軽減税率制度の対象品目は、飲食料品(酒類・外食を除く)及び定期購読契約の一定の新聞です。軽減税率の対象品目の消費税率は、軽減税率8%に軽減されます。
――飲食料品、という点が分かるようで分かりづらいと思うのですが、具体的にはどのようなものでしょうか?
農業に関する8%軽減税率と10%の例をあげてみました。ぜひ参考にしてくださいね。
8%軽減税率(増税しないものの例)
人間が直接食べるものとして販売されるもの、と考えていただければわかりやすいと思います。
- 農作物の販売(野菜、果物、米、麦など)
- 食肉、生乳、食用鳥卵、花(食用)、魚介類(食用)、海藻などの飲食料品の販売
- 加工した食料品(麺類、菓子類、調味料、飲料等、ジャム、総菜、漬物、お茶など。ただし酒類は除く)の販売
- 農家レストラン等の持ち帰り食料品の販売(酒類は除く)
10%になるもの(増税するものの例)
人間が直接食べられないものは標準税率10%、「なにかしてあげた」というサービスの対価も標準税率10%となります。
- 生きた家畜(畜産業の肉用牛の販売等)の販売
- 家畜用の飼料、ペットフードの販売
- わら、いぐさの販売
- 苗木のような植物、種子(食用は除く)の販売
- 観賞用の花や魚の販売
- 農業体験を含む農園入園料などのサービスの提供
- 販売手数料(自動販売機設置手数料等も含む)
- 農作業受託収入(酪農ヘルパー等)
- 農泊収入、農業機械の売却・レンタル代金
- 農家レストラン等の店内飲食物の提供
などなど。
事例! 観光農園での消費税率は?
――たとえば、軽減税率8%と10%とが混在する農家さんのケースには、どういったものが考えられますか?
観光農園さんの場合には、8%と10%が混在することが多いと思います。
収穫体験を行っている観光農園では、入園料や農業体験料をいただくケースが多いと思います。
例えば、もぎとり体験料を含む「梨農園の入園料1000円」の場合には、消費税率は10%です。
もぎとり体験に来られた方が、追加でお土産用に購入した梨は、農作物の販売なので消費税率は軽減税率8%です。
――なるほど、農業体験料はサービスの提供で10%、お土産は農作物販売で8%なのですね。
事例! 通販やワイン、ジャムの消費税率は?
他にも、ワインなどのアルコールや、ジャムなどの加工品を販売する農家さんも、8%と10%が混在するケースです。
ワインは酒類なので、消費税率は10%です。
ジャムは食料品なので、消費税率は軽減税率8%です。
詰め合わせ商品は?
――農家さんは野菜や果物を加工して販売するケースも多いです。贈り物などで、ワインとジャムの詰め合わせ商品を見かけることがありますが、こういう場合、消費税率はどうなるのですか?
酒類と食料品の詰め合わせ商品を販売する場合には、内容のバランスでその詰め合わせ商品の消費税率が8%か10%かが決まります。
詰め合わせ商品全体の税抜き価額が1万円以下であり、かつ、軽減税率対象品目の価額の合計が全体価額の2/3以上である場合には、すべてが軽減税率対象商品と考えて、詰め合わせ商品に関する消費税率は軽減税率8%とします。
――大きさで判定しないところが難しいですね。ワインとジャムだと、商品の価格が1万円以下でも価額の多くはワインが占めるでしょうから、消費税率は10%になってしまいそうですね。ジャムの部分だけでも8%になりそうなものですが……。
確かにそうですね。別々の商品として販売する場合には、ワインは10%、ジャムは8%となります。お客様がご自分使いにワインとジャムを分けて別々に注文できるようにすると、ワインは10%ですがジャムは8%ですから、お客様は少しお得かもしれません。ですが、農家さんの事務負担等を考えると、あまりお勧めできないですね。
お客様の利用目的が贈答品ですと、軽減税率の適用にこだわらずにセット商品の販売がよいでしょう。この場合には一体商品となりますので、ワインとジャムのセットなどは多くの場合、消費税10%となりそうです。
最初のうちは、だれでも軽減税率の判断に迷います。ひとりで悩まずに税理士や税務署にお電話をくださいね。
――ジャムだけ買えば8%、ワインだけ買えば10%。セット商品は内容によるのですね。
通信販売の送料は?
――インターネットなどの通信販売では、追加で送料をお客様が負担するケースがありますよね。送料の消費税ってどうなるのですか?
送料や保冷剤などの包装料は原則として消費税率は10%となります。
ただし、「送料込み商品」の場合のように追加送料をいただかない場合で、その商品が軽減税率対象商品であれば軽減税率の対象となります。
――先ほどの事例の場合には、ジャムだけ購入し、送料が別請求であればジャム代は8%で送料は10%。本体価格を値上げし送料を含めてあれば送料相当値上げ額も8%で済む。そういうことですか?
そうなのですが、送料を含めると本体価格が高く見えてしまいますので経営状況判断です。
先ほどのワインとジャムの詰め合わせ商品は消費税率が10%でした。これを発送する場合、別途請求する送料は消費税率10%です。
一方、送料を本体価格に込みで請求する場合には、送料相当額も本体価格と考えます。そのため、食料品を送料込みで販売する場合には、送料相当額も消費税率8%となります。
レストランなどに継続的に野菜などの食料品を送っている場合には、お店側から送料を本体価格に含んでほしいとお願いされるケースもあるかもしれません。余力があれば、応じてくださいね。
このように、お客様のニーズに合わせて経営戦略を練るとよろしいかと思います。
軽減税率は難しいと思われがちですが、分かってしまえば何でもありません。慣れるまでは戸惑いがあるかもしれませんが、大丈夫です、できます!
実務的には個別の状況により異なります。説明不足の部分も多々ありますが、今日の記事が少しでもご参考になればうれしいです。ご質問など、ぜひお待ちしています!
――マイナビ農業に、軽減税率に関するご意見やご質問などをぜひお寄せくださいね。