軽減税率制度は農家に影響大? 税理士に聞いた制度の内容と注意したいポイント

マイナビ農業TOP > マーケティング > 軽減税率制度は農家に影響大? 税理士に聞いた制度の内容と注意したいポイント

マーケティング

軽減税率制度は農家に影響大? 税理士に聞いた制度の内容と注意したいポイント

軽減税率制度は農家に影響大? 税理士に聞いた制度の内容と注意したいポイント

最終更新日:2019年03月07日

いよいよ2019年10月1日の消費税増税にあたって、導入される軽減税率制度。商品や買い方によって消費税の税率が異なる制度なのですが、食品を扱う農業関係者にとっては知っておくべきポイントが多いようです。そこで「農業に特化した専門家」として知られる公認会計士・税理士の佐藤宏章(さとう・ひろあき)さんに、軽減税率制度と、農家にとって注意したいポイントについて聞きました。生産農家も農業に携わる法人にも必見です。

  • twitter
  • facebook
  • LINE

消費税が8%と10%に分かれる軽減税率制度

2019年10月1日から消費税が変わる

今年、消費税が10%に引き上げられます。これにともない、低所得者への負担に配慮するために、飲食料品と新聞の一部について軽減税率制度が実施されることになりました。

誰にでも関係がある軽減税率制度

公認会計士・税理士の佐藤宏章さん

では、軽減税率制度とは何なのでしょうか。
簡単には、商品ごとに消費税が異なるという制度です。標準税率(10%)のほかに、軽減税率(8%)が適用されるものがあり適用範囲が定められています。
また、複数の税率があることから、請求書の形式も変わるのだとか。特に、飲食料品を扱う農業者にとっては、非常に身近な問題となります。
そこで、農業税務に詳しい、公認会計士・税理士の佐藤宏章さんに話を聞きました。

農家が知っておきたい「軽減税率制度で何が変わるの?」

まずは軽減税率の対象かどうかを知ること

軽減税率の対象となる飲食料品の範囲

まず、農家にとっては何が変わるのでしょうか。
「農家さんに限ったことではありませんが、複数税率になるため、それに対応した対策が必要です。何が8%で、何が10%になるかを、まず知っておきましょう」と佐藤さん。
軽減税率の対象となる飲食料品は、お酒や外食・ケータリング等を除いたものになります。

◆軽減税率の対象品目の具体例(全国農業新聞等を参考に作成)

【軽減税率(8%適用)】
米、酒米、野菜、果物、花(食用)、製菓材料の種子、食肉、テイクアウト弁当、送料(農産物価格に含まれている場合)、包装代(農産物価格に含まれている場合)、果物狩りで採った果物を土産用に販売
【標準税率(10%適用)】
飼料用米、種もみ、日本酒、花(観賞用)、栽培用の種子、苗木、肉用牛などの生きた家畜、農家レストラン内での飲食(外食)、廃棄食品、送料(農産物と別に請求する場合)、包装代(農産物と別に請求する場合)、果物狩りの入園料、販売等手数料

経理事務への影響も

さらに、複数税率になることで、「適用税率ごとに区分した経理」や「複数税率に対応した請求書等の発行」などが新たに求められます(区分経理)。
これは取引先にとっても税率を知る必要があるためです。
例えば、課税仕入れ等にかかわる消費税額控除のためには、区分経理に対応した帳簿および請求書等の保存が必要です。
また、免税事業者(課税期間の基準期間における課税売上高が1000万円以下の事業者)からの仕入れは、2023年10月から仕入税額控除ができなくなります。ただし、2023年10月から導入される「適格請求書等保存方式」(インボイス制度)の導入後3年間は、仕入税額相当額の80%、その後3年間は同50%が控除可能です。

適格請求書等保存方式(インボイス制度)とは

適格請求書等保存方式(インボイス制度)とは、「仕入税額の控除を受けるためには、インボイスと呼ばれる適格請求書等の保存が必要になる」という制度です。
「適格請求書等」とは、商品と個々の消費税率など必要事項を記載した請求書、納品書などを指します。2019年10月から2023年9月までの4年間は移行期間として簡易的な記載も認められています。

適格請求書等の制度についての詳しい説明はここでは省略し、以下では、8%か10%か迷いがちな、農家にとって具体的ないくつかの事例を見てみましょう。

軽減税率が適用される農業の事例

花きも、観賞用と食用では税率が異なる(写真はイメージ)

農協等での販売

軽減税率によって、米や野菜、果物、食肉などの飲食料品には軽減税率(8%)が適用されます。ですが、農協等の販売手数料には標準税率である10%が適用されます。
このため、農協等での販売額と販売手数料とを別々に計上する必要があります。

農家レストラン

農家のなかには、自分たちで飲食店を開いて、農作物を調理して提供する農家レストランを営んでいる人もいるでしょう。
その場合、農家レストラン内での飲食は外食に当たるため、消費税率10%が適用されます。ですが、持ち帰り用のお弁当は8%です。

果物狩り農園

イチゴやブドウなどの果物狩りを行う観光農園も、細かく税率が分かれます。
入園料は10%ですが、土産用に販売する場合は8%です。
詳しく説明すると、入園料は、お客様に果物を収穫してもらい、収穫した果物をその場で飲食してもらうという“サービス”を提供していることに当たり、軽減税率の対象外です。
一方で、土産用の果物や加工したジャムの販売は、飲食料品を販売しているため、軽減税率の対象となります。

食品と器のセット販売


例えば、お茶と急須をセット販売する場合は、何%でしょうか。
これは食品と食品以外の資産があらかじめ一体となっている「一体資産」と呼ばれるもので、場合によって税率が異なります。
この場合、「税抜価額(※)が1万円以下」かつ、「食品の価額の占める割合が2/3以上」であれば、全体が「飲食料品」と認められ、軽減税率の対象となります。
つまり、例の場合、セット販売価額が1万円以下で、お茶の価額の占める割合が2/3以上であれば、軽減税率である8%となります。

※ 「価額」とは、一般的に認められる客観的な価値のこと。一方で「価格」は、売り手が主観的につけた値段を示す。

インターネットショップ

インターネットショップで農作物や加工品を販売している場合はどうなるのでしょうか。
インターネットなどを利用した通信販売でも、商品が飲食料品であれば軽減税率の適用対象となります。
注意したいのは送料や包装代です。
送料や包装代は飲食料品ではないため、軽減税率の対象とならず10%になります。これを避けたい場合は、「送料込み商品」として、別途送料を求めない飲食料品とすれば軽減税率の対象となり8%となります。

準備しておきたいポイント


軽減税率の導入に備えて、こうした税率の違いによる影響を、まずは知っておきましょう。
さらに、軽減税率制度で注意しておきたいポイントを佐藤さんは「資金繰り」と話します。
「今までは仕入れも売上も消費税率8%でしたが、今後は基本的に仕入れが10%、売上は8%になり、負担が増えます。農業機械など金額が大きいものは特に影響も大きく、資金繰りは大事になります」

農業経営者は何が軽減税率の対象になるのかをチェックして、スムーズな移行を目指していきましょう。
 
公認会計士・税理士 佐藤宏章事務所

事務所案内

代表 佐藤宏章 プロフィール

秋田県の農家出身。東京農業大学農学部農学科卒業。「農業経営の発展に貢献する」という信念のもと、コンサルティング・セミナー・執筆等を通して、農業経営者へ経営・税務・会計をわかりやすく伝えることをモットーに活躍中。「農業経営」や「6次産業化」に関するコンサルティングの第一人者として全国を駆け回っている。

画像提供:公認会計士・税理士 佐藤宏章事務所

>>農家のための確定申告と今後の対策 記事一覧はコチラ

シェアする

  • twitter
  • facebook
  • LINE

関連記事

タイアップ企画

カテゴリー一覧