ヤシガラ栽培をした農家さんに直撃!
今回は、2つの農家さんを取材しました。
一人目は、関厚子(せき・あつこ)さん。御年86歳で、トマト農家歴48年の大ベテランです。去年まで水耕栽培でトマトを作っていました。
もう一人は土屋慎一郎(つちや・しんいちろう)さん。35歳でトマト農家歴は12年! 土屋さんは土耕でトマトを栽培しています。
元々、関さんが別の方に事業承継を考えていたところ、承継直前に話が白紙に。
関さんを以前から知っていた土屋さんがその話を聞いて、土屋さん主体、関さんがサポートという形でトマト栽培を続けることになりました。
その際に他の方からの提案もあり、関さんのハウスでヤシガラ栽培にチャレンジすることになりました。
つまり今回はヤシガラ栽培について
- 水耕栽培をやっていたトマト農家さんの感想
- 土耕栽培を現在もやっているトマト農家さんの感想
この2つが同時に聞けたわけです!
ヤシガラ栽培ってそもそもなんだ?
まず、ヤシガラ栽培について確認しましょう。
ヤシガラは、熱帯地方などでよく見られるヤシの木になるヤシの実の繊維などで作られたものです。
ヤシの実からできているので繊維質で軽く、100%有機物なので廃棄も容易にできます。
ヤシガラ栽培は、このヤシガラを土の代わりに使って野菜を育てます。
水分と養分はかん水チューブを使って与えます。
ちだ
そんな方のために、今回は初めてヤシガラ栽培にチャレンジしたプロのトマト農家さんの声をお届けします!
プロトマト農家が実際にやって感じた、ヤシガラ栽培のメリット
では、プロのトマト農家が実際にやって感じたヤシガラ栽培のメリット・デメリットについて聞いてみます。まずはメリットから。
※ お二人は今回がヤシガラ栽培初年度です。
※ 経費等については個人的な実感、としてお話しいただいています。
水耕栽培との比較
水耕栽培と比較してあげていただいたメリットは3点です。
- ランニングコストの減少
- 投入する肥料の量の減少
- 導入コストが比較的安価であること
■ランニングコストの減少
ヤシガラは3年に1回取り替えればいいそうです。
一方で、水耕栽培では水を流し続けなければなりません。
関さん
■投入する肥料の量の減少
水耕栽培の場合、水は循環しています。
肥料(液肥)を使っても、これまではトマトがその肥料を吸いきれず水の循環によって流れていってしまう部分がありました。
吸いきれなかった肥料は、一部廃棄されるものもあったそうです。
しかし、ヤシガラの場合はヤシガラそのものが肥料を含んだ水分を吸って、そこからトマトが吸収するので無駄が少なく、結果肥料の使用量が大きく減少したそうです。
しかも、味はヤシガラの方がいいね!!
関さん
■導入コストが比較的安価
関さんは元々水耕栽培をしていたため、今回は水耕栽培に使われていた栽培棚の幅を狭くして、そこにヤシガラを詰めただけで栽培準備が終わりました。
こちらは、その栽培準備の様子です。
関さん
水耕栽培からヤシガラ栽培へ移行するのにかかった費用はおおよそ70万円とのことでした。
しかし、これにはヤシガラだけではなく老朽化によるパイプの水漏れやタンク等の修繕費用も含まれているそうです。
ちだ
土耕栽培との比較
土耕栽培と比較してあげていただいたのは2点です。
- 栽培コントロールが容易
- 土作りが不要
■栽培のコントロールが容易
ヤシガラの場合は、水分、肥料の管理が土耕と比較して容易だそうです。
土耕の場合も点滴チューブを使って水分、肥料をやることは可能ですが、「じんわり」行くので効果が見えるまでに時間がかかるそうです。
一方でヤシガラは、水分や肥料の効果がダイレクトに届く、という実感があります。
つまり、それらの効果がわかりやすいと感じます。
コントロールできる分、自分が理想としているトマトに近づけやすい!と感じています。
土屋さん
■土作りの必要がない
土耕栽培をする場合、ハウス内の土をトラクターなどで耕し、肥料等を散布して、畝を立てて、という作業を植え付け前にする必要があります。
ハウスのトマトはこの作業を主に夏場に行うため、その辛さはかなりのものです。
土屋さん
プロトマト農家が実際にやって感じた、ヤシガラ栽培のデメリット
省労働、省費用で栽培コントロールがしやすいというヤシガラ栽培、メリットばかりのようですがデメリットはないのでしょうか。
ここも農家さんに聞いてみました。
水耕栽培との比較
■天候等による水分調整が必要
常に水が流れている水耕栽培と違い、ヤシガラ栽培の場合は与える水分量を自分で調整しなければならないそうです。
ちだ
システムで完全にコントロールすればいいけど、コストが……
土耕栽培との比較
■導入コストがかかる
土屋さんが業者さんに尋ねたところ、ヤシガラの導入には1反(約10アール)あたり500万円程度の費用がかかると言われたそうです。
ちだ
ヤシガラ栽培の収量
では、ヤシガラで栽培すると収量にはどんな影響が出るのでしょうか。
- 初めてのヤシガラ栽培
- 初めての夏トマト栽培
と初めてづくしだったので、単純に比較するのは難しいですね。
むしろ初めて、ということを考えると思ったよりも取れたという感想です。
土屋さん
ちだ
投資回収という点ではいかがでしょうか。
しかし、今回やってみて栽培方法の改善点もいくつか出ました。
水耕栽培の方は、施設を利用したことで投資を最小限に抑えることができました。
なので、今後収量を上げていくことで回収は見込めるかなと思ってます。
土屋さん
ヤシガラ栽培まとめ
今回は、ヤシガラトマトについて水耕栽培、土耕栽培それぞれの視点からお話を聞くことができました。
水耕栽培からヤシガラへの移行は、導入コストが比較的安価でかつランニングコストが抑えられるという点でメリットがあると関さんは考えていました。
一方で、土耕栽培からの移行は土屋さんの一言が思いを表現してくれました。
投資できるなら、切り替えたい
やはり、ランニングコストの減少と土作りのコストをゼロにできるというのは大きな魅力なんですね。
省労働、省費用、そして栽培コントロールがしやすいヤシガラ栽培、一度検討してみてはいかがでしょうか。