自治体による地域ブランディングが移住促進の鍵となる
株式会社マイナビ 執行役員 農業活性事業部 事業部長
池本 博則(いけもと・ひろのり)
ライフスタイルやワークスタイルの多様化により、移住したいと考えている人は年々増えてきています。
一方で、その多くが “検討はしているが時期は未定” というところにとどまってしまっているように感じられます。不安要素として挙げられるのは、雇用の問題や日常生活の質、交通の便への懸念でしょう。
移住前にある程度収入が減るというのは納得していても、いざ移住してみると思ったより支出が減らないことに困惑し、もとの居住に戻ってしまうというケースも多く、ここに移住へのイメージと現実とのギャップを感じます。
そのため、ワークスタイルや経済的な面ではなく、その土地ならではの暮らしや暮らしやすさに価値観を見出し、共感できることが ”うまくいく移住の形” と言えるでしょう。
しかしながら、どの自治体も人手不足なので、移住者の獲得競争が非常に厳しくなっているのも事実です。地域の魅力や特色を他と差別化して伝える地域ブランディングの必要性が、いま強く問われています。
年齢や性別の壁を越えた“食”のコミュニティが地域活性につながる
株式会社キッチハイク 代表取締役
山本 雅也(やまもと・まさや)
『キッチハイク』とは年齢や性別に関係なく、あらゆる人が食でつながるWebサービスです。「初めましての人と一緒にごはんを食べよう。食を通じて人とつながろう」という趣旨に賛同してくださった方の数が増え、現在は登録ユーザーが7万人に増えました。2017年から地域とコラボレーションした「地域食材PRイベント」をスタートし、現在は自治体や生産者の方約30団体と一緒に仕事をさせていただいています。
イベントに参加される方のほとんどは、「食を通じて食材や地域について知りたい」、「生産者さんとお話したい」と、地域に関心の高い方です。「地域食材PRイベント」は、その土地で暮らす方と直に交流することで、なじみのない地域であっても身近に感じてもらい、つながりや現地に行くきっかけを提供するのが目的です。
徳島市役所様とのコラボレーション企画は100人規模のイベントでしたが、その内の約1割の方が実際に現地に足を運んだという大きな成果が出ました。地域とのコラボレーションイベントならではの濃密な空間をきっかけとして生まれる地域のファンは確実にいるので、一回限りで終わらない身近な関係を築いていけるようになれば、徐々に関係人口は増えていくのではないでしょうか。
キッチハイク×マイナビ農業対談~オンライン×オフラインで考える地域ブランディングの未来~
株式会社マイナビ 農業活性事業部 佐々木 康人(ささき・やすひと)
株式会社キッチハイク 地域活性事業担当 古屋 達洋(ふるや・たつひろ)
佐々木:知らなかった町を知っている町、好きな町、住みたい・住んでいる町に変えていくのが僕たちのミッションであると考えています。『キッチハイク』のユーザーは、食や生産地に対する意識・アンテナの感度が高く、「生産者と地域のストーリーを、心で食べる」ように感じるんです。
古屋:「地域や特産品のブランディング」「消費者のリアルな声を聞きたい」等、各地域コラボイベントにおける開催目的はさまざまです。しかし、共通しているのは「遠い存在だった地域と生産者さんを身近に感じる」ということ。これは、リアルなアンケートデータを集めたり、商品を手に取る・地域へ足を運ぶきっかけを作ったり、さまざまなメリットに転換できます。
佐々木:毎回実施しているアンケートからも、実際に暮らしている人と話せるのを好意的にとられているのは分かりますよね。
古屋: “おいしかった” だけでなく、具体的な感想がきちんと書かれたアンケートをいただけるので、イベントが新たな発見のきっかけになったり、次の挑戦につながったりします。今後はさらに食のコミュニティを大きくして、生産者の方のアピールの場を増やしていきたいですね。
佐々木:知らない街だと「行ってみたい」と思ってもらうまでが難しいのですが、『キッチハイク』の「地域食材PRイベント」なら、そのハードルを下げることができると思います。消費者に興味を持ってもらったら、次に重要になってくるのが “この先なにをするべきか” ということ。この部分をマイナビは一緒にやっていきたいです。