国内最大級の花のまち「鴻巣市」の花き栽培の歴史
埼玉県の中心に位置する鴻巣市は、花の栽培に適した土地、気候に恵まれた日本随一の花の産地。花き業界では流通の拠点としても知られています。
鴻巣市の花き生産の始まりは、戦後にさかのぼります。当時野菜や米を生産していた農家が、現在のような花き栽培の設備がない中で始めたのが、寒さに強く育てやすいパンジー。都内の復興の早い地域に汽車で出向き、野菜や米とともに育てた花を売り歩いたそうです。
やがて花が広く全国的に求められるようになると、鴻巣市の農家は次々と花き栽培に乗り出していき、最盛期には実に400軒以上の花き農家が、多種多様な花きを生産していました。
そんな鴻巣の歴史を聞かせてくれたのは、自身も花き農家に生まれたという、『パンジーハウス』代表の成澤彬暢(なりさわ・よしのぶ)さん。「種類、流通量、生産スピード。どれをとっても鴻巣の花の流通は国内トップだと思います」と自信をのぞかせます。
成澤さんが経営する花の直売所、『パンジーハウス』は、この時期、色・形とりどりのパンジーやシクラメンの株がずらりと並び、見ているだけでも心が踊ります。
今の時期のおすすめは、フリルパンジー。一年草のパンジーは、子株で植え、エネルギッシュに咲く花の命を楽しむのが成澤さんおすすめの育て方なのだそう。
「ここに並んでいる花も、6〜7割は鴻巣産。毎日フレッシュな花がたくさん入荷されるので、一週間に何度も足を運んでくださるお客様もいます」と成澤さん。定期的に陳列台の配置を変えるなど、ゲストを楽しませる工夫も欠かせません。
特殊コーティングが鍵。花にも人にも優しい『安心ベンチ』とは
生産量が多いと、課題になってくるのが作業にかかる人手と時間の確保です。
「うちはポットを並べる陳列台に重たい建築資材を使用していたので、一台移動させるのに何人も必要だったり、場合によっては重機を使ったりして、人手も時間もかかりましたね」と成澤さんは当時を振り返ります。
もう一つの課題として成澤さんが挙げたのが、作業中の従業員の安全について。販売と同時に栽培も行っている『パンジーハウス』では、他の花き生産者同様に、腰の高さの栽培棚にベンチと呼ばれる金属のシートを敷いた上で苗を育てています。これらのベンチの多くは金属がむき出しになっていて、尖ったバリ(=はみ出した部分)に服をひっかけて破いてしまったり、ケガをしてしまうリスクがあったのです。
そんな同社の課題を解決したのが、イワタニ アグリグリーン株式会社の『安心ベンチ』でした。2年前、長野県で開催された植物の展示商談会『フラワートライアルジャパン』で出展されていたのが出会いのきっかけだったそうです。
ベンチに特殊なコーティングを施し、尖りを無くした『安心ベンチ』。当初は生産者の作業中の事故を防ぐ目的で開発された製品でしたが、成澤さんが『バンジーハウス』で使用してみると、園芸店の陳列でもその優れた性能を発揮することが分かりました。
「コーティングで滑りが良くなったので、奥にあるポットケースが指一本で引き出せます。ベンチのバリで怪我をすることがなくなったし、何より通常のベンチより軽いので、陳列台の移動が圧倒的に楽になった! こんなのをずっと探してたんですよ」と、成澤さんは喜びの声を聞かせてくれました。
『安心ベンチ』は軽量ながら強度は充分。花を安定して並べられます。コーティングにより金属のメッシュ部分の段差がマイルドになっているので、ポットケースを引っぱって動かす時にも花が倒れる心配はありません。
「花を買いに来たお客様は、台と台の間を回り込んで花の状態を見ます。『安心ベンチ』を導入してからは、狭い通路でお客様の衣服や肌が傷つく心配もなくなりました」と、成澤さん。
花にも人にも優しい『安心ベンチは、今や『パンジーハウス』の従業員の安全だけでなく、作業の効率化、お客様の安全まで支えています。
腰の負担を軽減し、作業環境をより良く変える
鴻巣の花き生産者は女性の従事者やパートが7割。中には高齢の生産者も少なくないのだそうです。
「苗の移動や陳列での腰の負担を軽減し、作業をもっと安全にするためにも、鴻巣の花き産業全体に『安心ベンチ』は広まって欲しい」と成澤さん。「実際、パンジーハウスに情報交換に来る園芸店の同業者や、生産者にも勧めているんです」と続けます。
成澤さんは、鴻巣全体の花き産業を支えるために、鴻巣の花き従事者と強いネットワークを組んでいます。新しいことを柔軟に取り入れる若手生産者とつながり、SNSも駆使しながら、花き栽培を本気でやっていく人をバックアップしているのだそうです。
「鴻巣が “花のまち” として花の魅力を伝え続けるためには、花きの生産や販売に従事する人を絶やしてはいけないんです」と語る成澤さんの表情は真剣そのもの。「『安心ベンチ』もそうですが、花き産業にかかわる人の作業環境をより良くすることで、巡り巡って花への恩返しにつなげたいです」。
“花への恩返し” という言葉に、花とともに人生を歩んできた成澤さんの、花への深い感謝を感じました。
「人に優しいものづくり」を信念とするイワタニ アグリグリーン
“生産者の環境をより良くしたい” ─。その思いは、『安心ベンチ』の開発背景にもありました。
「付き合いのある生産者の中から、ベンチの尖りで服を破ったとか、怪我をしたという話をたくさん聞いていました。ベンチの素材であるエキスパンドメタルをコーティングして、尖りをなくしたら皆さん安全に作業できるのではないかと思い至り、『安心ベンチ』を開発しました」と、同社東京営業部の落合英司(おちあい・えいじ)さんは振り返ります。
「お客様の『困った!』を積極的に拾い、人のためになる物を作り、それをより良い製品に進化させていくのが弊社の企業理念です」と力強く話す落合さん。現在は、「夏場のハウス内の暑さ軽減のために白色の『安心ベンチ』が欲しい」とユーザーからの要望があり、鋭意開発中とのこと。
隣でそれを聞いていた成澤さんも、「白は展示用にも映えます。私もぜひ欲しい」とうなずきます。良い商品というのは、アイデアがアイデアを呼び、進化しながら広まっていくのでしょう。
花は人の心を潤すもの。だからこそ、花を育てる場所や売る場所は、花にかかわるすべての人にとって安全で快適な空間でなくてはなりません。
日本随一の “花のまち” で広がりつつある『安心ベンチ』は、今後も花産業の現場を優しく支えていきそうです。
【お問い合わせ】
イワタニ アグリグリーン株式会社
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