多岐にわたる仕事内容
農業バイトとは、その名の通り農作業のアルバイトのこと。農繁期を中心に、全国各地でさまざまな農業バイトの募集がされています。
家族経営が多い日本の農業は、農繁期は農家同士が助け合うことで人手不足を補ってきました。今でも期間限定で地元の主婦やシニアがパートとして働くのは、珍しい光景ではありません。
しかし、高齢化や担い手不足が深刻な昨今。繁忙期の人手不足を補うには、地域の人材では間に合わなくなっていることが、農業バイトが必要とされている背景にあります。
農業バイト専用の募集サイトもあり、北から南まで全国各地の情報が紹介されています。期間も1日のみから数週間や1カ月以上のものまで、さまざまです。
そういった募集サイトのひとつが、ボラバイト。年間約4100人のアルバイトを農家や牧場などとつないでいます。
運営会社の(株)サンカネットワーク代表取締役の、鈴木道郎(すずき・みちお)さんに仕事内容の傾向を聞きました。
「野菜や果樹の農家が多く、米はほとんどありません。稲作は田植えから稲刈りまでほぼ機械化されており、農繁期であっても人手をさほど必要としないためです。野菜や果樹は摘果や摘花、収穫や箱詰めなど、ほぼ手作業で行っていますので、とにかく農繁期は人手が欲しい。だから1日だけ、週末だけでもOKという所もありますよ。
酪農は乳しぼりや牛舎の掃除など仕事を覚えるまでに時間がかかるので、短期よりも1カ月以上といった長期が多いですね」
応募するのは学生はもちろん、連休を利用した会社員や転職活動中の社会人も少なくありません。志望理由も将来は農業をと希望している人もいれば、「休みを利用して農作業を体験してみたい」、「普通の観光旅行ではできないことをしてみたい」といった人も多いそう。
作業は単純作業が中心なので、農業未経験でも問題ありません。ボラバイトに応募する人も、農業の初心者がほとんどです。そういった意味では農業バイトは、農業の入り口を体験しながら収入を得る体験型のアルバイトといえます。
応募から採用までの流れ
募集内容を確認する
募集サイトでは仕事内容はもちろん、宿泊などの労働環境も必ずチェックしましょう。
宿泊は遠方であることも多いので、施設はどこになるのか、寮なのか個人宅なのか、個室か相部屋か、農家の一室を借りるなら家族構成などの環境面、食事がつくなら3食なのか、昼食だけなのかなど、気になるポイントはあらかじめ確認しておきましょう。
時給やその他の条件もチェック!
時給は各都道府県の最低賃金 以上が基本です。宿泊や食事がつく場合は、それも賃金の一部とみなされた時給や日給が設定されています。交通費は出ないところが多いので、自宅からの距離や、雇用先の最寄り駅からの交通手段も確認しておくと安心です。さらに農作業に必要なものなど、あらかじめ準備するものがあるのかどうかもチェックしましょう。
また、農業は天候に左右される仕事です。雨など悪天候の場合に、作業内容に変更があるのかも事前に確認しておきましょう。
面接はある? どんな事を聞かれるの?
遠方の場合、面接は主に電話で行われます。募集サイトを通じて応募する際は、事前に登録した情報が先方に渡されますので、改めて書類を用意する必要はないでしょう。
電話面接では簡単な経歴や働ける期間など、基本的な質問をされることが多いようです。農業経験を問われることもありますが、その有無が採否に影響することはほとんどないので、聞かれたことにはしっかりと答えましょう。
アルバイトが決まったら
面接の過程で相手の農家の環境や作業内容が合わないと感じたり、納得できない点があれば、お断りするのは問題ありません。ただし働くと決めたら、途中で辞めず、真摯(しんし)に作業をすることが大切です。農家がアルバイトを募集するときは、農作業が最も忙しい繁忙期。決まった日にどうしても終わらせなければならない作業があり、農家だけでは足りないので人を募集しています。来ると思っていたアルバイトが一人でも来なかったり、突然辞めてしまったりすると、長い期間をかけて育てた農作物の収穫や、農家の収入に大きく影響してしまいます。
最初から最後までしっかりとお手伝いすることこそ、農業バイトを充実させるためのコツです。
農業バイトのメリット
意外とお金がたまる?
都会に比べて地方の時給は決して高いとはいえません。それでも農業バイトは意外にお金がたまると鈴木さんは話します。
「都会のようにお金を使う機会があまりないですからね。朝から夕方まで仕事をし、行くのは近所のコンビニくらいといった地域が多いんです。長期休暇を使って宿泊付きの条件で働くと、意外に手元に残る額が多く、都会で同じ期間バイトをしているよりもお金がたまったなんていう話はよく聞きます」
畑や果樹園のトップシーズンを楽しめる
農業バイトが必要とされる収穫期などの繁忙期は農家にとって一年で最もうれしいとき。畑や果樹園がいちばん輝いている農村のトップシーズンです。
「自然の中で、体を動かすのはやっぱり気持ちがいいんです。都会で感じるストレスなんて吹き飛びます。ときには、収穫したての野菜や果物をその場で食べさせてもらうことができるのも楽しみのひとつ。とれたての農産物のおいしさはたまりませんよ」(鈴木さん)
農家といっしょに汗を流せばその地域に親しみを感じたり、農業がより好きになったりといった、ほかのバイトにはない体験を得られるに違いありません。休みがとれたら、そんな体験をしに農業バイトにトライしてみてはいかがでしょうか。
取材協力・画像提供:
ボラバイト