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カラスの農作物被害を防げ! 生態にもとづく最新の対策

カラスの農作物被害を防げ! 生態にもとづく最新の対策

シカ、イノシシに次いで農作物の被害金額が大きいカラス。非常に頭が良いと言われているカラスからの被害を防ぐには、カラスの生理・生態を知った上で、対策を取る必要があります。そこで栃木県・宇都宮大学で18年間カラスの生態について研究し、カラス被害対策の製品開発を行う「CrowLab(クロウラボ)」代表取締役の塚原直樹(つかはら・なおき)さんに、科学的根拠のあるカラス対策について話を聞きました。

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カラスの弱点は翼!

──長年の研究からわかった、カラスの生態について教えてください。

カラスは鳥類の中でも発達した脳を持つ賢い動物です。餌場を覚えると、しつこく飛来します。一方で警戒心は強く、見慣れない物を置いただけで警戒して、しばらくカラスが近づかなくなることがあります。

──カラスの被害を防ぐ上で、知っておくべき弱点はありますか?

カラスは翼に物が当たるのを嫌がります。気流を巧みに捉えて飛ぶカラスは、翼が敏感なためです。このような習性を踏まえた対策が効果的です。

こんな畑は狙われやすい! 注意すべきポイント

──カラスに狙われやすい畑の特徴はありますか?

下図のように、ネットに隙間(すきま)があるとカラスが侵入できてしまいます。また、ネットの近くに作物がある場合は、ネット越しにその作物をついばみます。これでは、せっかくお金と労力をかけてネットを張っても十分な効果が出せません。

狙われやすい畑の例(画像提供:やさい畑)

チェックポイント

① 農作物の丈がネットの高さを超えていないか?
② 地上とネットの隙間が空いていないか?
③ テグスの張り方が緩くなっていないか?
④ 支柱の間隔が空きすぎていないか?
⑤ 畑の周りに農作物を放置していないか?

そこで下図のように、周囲をネットで囲み畑の守りを固めます。上部にはテグスを張る方法をお勧めしています。ポイントはテグスを張る間隔を1メートル以内にすることです。カラスが翼を左右に広げた時の長さが1.4メートルくらいある事から、それより狭い幅であれば翼がテグスに触れます。カラスはそれを嫌がるため、侵入を防げます。


正しい対策例(画像提供:やさい畑)

根本的な解決には地域の協力が不可欠

──塚原先生の考える、カラス被害の根本的な解決方法を教えてください。

カラス被害を根本的に解決するには、個体数を調整する必要があります。一般的には、わなによる捕獲や猟銃による駆除が行われています。しかし、そもそもわなは警戒され、個体数削減に貢献できるほど捕獲できません。また、猟銃による駆除は猟銃を使える区域が制限されている事から、猟銃を使える郊外から猟銃を使えない市街地へとカラスを誘導してしまうことにつながり、個体数を減らすどころか、市街地での被害を悪化させることがあります。

そこで私は、「野生動物への無自覚な餌付けストップキャンペーン」を提唱しています。自然界の餌が乏しい冬にカラスの餌となる食物を徹底管理することで、カラスの個体数を調整できると考えています。具体的には、畑に放置された規格外の農作物を土中に埋めることや、木に残っている果実の摘果、ゴミ出しのマナー向上等を、住民の方と一緒になって地域で取り組むというキャンペーンです。時間はかかりますが最も効率的、かつ自然な形でカラスの個体数を調整できる方法だと考えています。

──すぐに対処を必要とする農家さんに良い方法はありますか?

前述の個体数調整には時間がかかります。カラス被害に遭われている方は、待ったなしの現状です。CrowLabではカラスに警戒心を抱かせる音声を使用する事で、カラスを追い払う「カラス追い払い音声貸出サービス」を提供しています。

これまで、農地や畜産現場、市街地等、カラス被害に悩む現場にサービスを提供してきました。既存の対策のような一時的な効果ではなく、1年以上の長期的な効果を確認しています。それを可能にしているのは、当社が多くの音声を提供できるからです。新しい音声に交換すると慣れが解消され、効果が持続することを確認しています。さらに、18年間のカラス研究の知見を生かし、現場にあった適切な対策のコンサルティングも行っています。

* * *

筆者はハンターである事から、鳥獣害を目の当たりにする機会が多々あります。その度に思い出すのは、先輩ハンターの「獣害対策は、野生動物との知恵比べ」という言葉です。彼らも生きるのに必死なので、餌を求めてなんとか畑に侵入しようと知恵を絞ります。そこでCrowLabの提唱する、野生動物の生態を知った上での対策や、野生動物への無自覚な餌付けを止める事で、効率的な鳥獣害対策につながるのではないかと感じました。

株式会社CrowLab

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