ニンジンとの出会いが人生を変えた! 『株式会社agrity』が手掛ける新たな農業のカタチ

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ニンジンとの出会いが人生を変えた! 『株式会社agrity』が手掛ける新たな農業のカタチ

ニンジンとの出会いが人生を変えた! 『株式会社agrity』が手掛ける新たな農業のカタチ
最終更新日:2020年02月07日

福島県須賀川市に本社を置く『株式会社agrity(アグリティ)』。設立3年目、スタッフ9名の規模ながら、米・野菜の生産・販売、農作業の受託、ベジタブルレストラン・カフェの運営と、幅広い事業を手掛けています。同社の代表取締役であり、生産者であり、レストラン・カフェの店長でもある小野寺淳さんに仕事の魅力や理想の姿を伺うと、農業が持つ可能性と新たな領域が見えてきました。

就農へと導いた『御前人参(ごぜんにんじん)』との出会い

福島県郡山市の兼業農家で育った小野寺淳さん。実家近くにある父親の畑を受け継ぎ、平日は会社員、土日は農業という生活を続けていたある日、人生を変える出会いを果たします。「自分の思っていたニンジンの味ではなかった。それまで、野菜を食べることはほとんどなく、野菜が美味しいと感じたこともありませんでしたが、そのニンジンの甘さに驚き、こんな美味しいものがあるなら作ってみたいという熱い思いが膨らんでいきました」。

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就農のいきさつを語る小野寺さん

小野寺さんが惚れ込んだこのニンジンは、郡山市のブランド野菜『御前人参(ごぜんにんじん)』。βカロテンが多く、甘みの強い品種です。栽培経験のない小野寺さんはまず、御前人参の生産者を探しました。電話で交渉し、何度も会いに行き、御前人参を作りたいという思いを伝えました。そして、「郡山ブランド野菜協議会」で野菜の育て方をゼロから学び、『御前人参』や『万吉どん(まんきちどん/タマネギ)』、『冬甘菜(ふゆかんな/キャベツ)』の栽培をすることに。「上手くできたとはいえませんが、ちゃんとうちの畑で育ってくれました」と小野寺さん。自分で育て、実際に食べ、やはり美味しいと実感。農業一本で生計を立てようと2016年3月、15年間勤めた会社を退職しました。

農業生産法人を立ち上げた理由

退職後の一年間は、「こおりやま園芸カレッジ」の研修生として栽培ノウハウを学んだ小野寺さん。同時に、野菜・土づくりについても学び、野菜ソムリエ、土づくりマスターの資格も取得しました。就農に向けて努力する中、「周囲からは反対されました」と当時を振り返ります。東日本大震災の風評被害で、福島県産の農産物が苦境に立たされている中での新規就農。作っても売れるはずがない、福島県での就農はリスクが大きいと、小野寺さんの選択を理解する人はいませんでした。

「でも、安全で美味しい野菜を作る自信はありました」と小野寺さんはいいます。「仕事している時より畑にいる時の方がいい顔をしている」という家族の理解とサポートもありました。小野寺さんは、風評被害を払拭し、福島県の農作物の信頼を取り戻したいと、2017年4月に『株式会社agrity』を設立。ニンジンと米を主軸に、ヨーロッパ野菜など新品種の栽培も手掛け、県内外に販路を拡げています。

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2018年11月にオープンしたベジタブルレストラン『Blue-Bee』

こうして小野寺さんが育てたニンジンは「オーガニック・エコフェスタ2018」夏ニンジン部門で最優秀賞を受賞。周囲が大反対した就農から1年目で、日本一のニンジンを育てたのです。2018年11月にはベジタブルレストラン『Blue-Bee』、2019年2月にはカフェもオープン。安全で美味しい野菜をより多くの人に食べてほしいと、畑と店を往復する日々を送っています。

土づくりも、レストランも、すべてが農業の一部です

米も野菜も作って出荷するまでではなく、お客様の口に入るまでが農業だと小野寺さんは言います。「だから、土づくりもレストランも、私にとっては全部農業です」。丁寧に育てた作物をベストなタイミングで食べてほしいから、野菜に合わせて朝、夕方と収穫時間も調整します。店長としてお客様と接することで、自分が育てた野菜の感想をダイレクトに受け取り、その声を生産の現場で生かします。

地元の野菜をよく知る従業員が丹精込めて作るメニューは、女性客を中心に大きな人気を集め、栄養満点のコールドプレスジュースも店の看板メニューになっています。

終わりも完成もないからこそ、毎日ワクワクできる仕事です

ニンジンだけでも5種類の品種を育てているほか、『紅白オクラ』、『フルーツパプリカ』、『パレルモ』など珍しい野菜も楽しみながら育てている小野寺さん。「何を作るか全部自分で決められるし、初めての野菜を植える度に良くも悪くもワクワクできる」と笑顔で話します。同様に、終わりのない土づくりも面白いといいます。機械で土壌を分析し、作物ごとに施肥計画を立て、成長に合わせて微調整をします。すべてのデータをパソコンで管理し、レストランなどの需要に合わせて作付け計画を立てるため無駄が生じません。

今年の台風19号では、ほ場の一部が削られる被害を受けました。来春の作付けに間に合うよう修復し、土づくりもやり直しです。これまでも、辞めようと思ったことは何度もありました。それでも諦めなかったのは「畑にいるのが好き」だから。「ニンジン嫌いのお子さんが、うちのニンジン100%のジュースを飲み干す姿を見ると、うれしい気持ちになります」と小野寺さん。食材についてお客様と会話したり、自分の育てた野菜を通して誰かとつながっていくのが喜びだといいます。

今後は農福連携を視野に、障害のある方や子どもたちとの収穫体験やイベントなども予定しているといいます。来春からは、長男も本格的に農業を手伝ってくれるとのこと。まだ食べたことのない世界中の野菜を育て、提供するなど、食べることに楽しみがもてるような農業をしていきたいと小野寺さん。「農業を軸に、自分の生まれ育った地域を活性化する仕組みを考えています」と話してくれました。小野寺さんのような新たな視点と行動力が、これからの農業の可能性を大きく拡げてくれることでしょう。

【店舗情報】
ベジタブルレストラン・ブルービー
〒962-0013
福島県須賀川市岡東町155
EL.0248-94-6998
営業時間:11:00~20:00
ラストオーダー:19:30
定休日:火曜日
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