ベビーリーフはとにかく栽培期間が短く、もやし、スプラウトに次いで早く収穫することができます。さらに、非常に小さなスペースで栽培できるため、畑を持たない人でも、プランターすらなくても育てることが可能です。ちょっとやってみたいと思ったときにすぐに取り組める手軽さはまさに初心者向きと言えるでしょう。
種の準備
ベビーリーフとは「赤ちゃんの葉っぱ」のことであり、さまざまな種類の若い葉の総称です。そのため、ベビーリーフの品種に決まりはなく、葉が食べられるものならばなんでもOK。よく栽培されるのは、レタス、水菜、ルッコラ、ケール、ビーツ、ホウレンソウ、スイスチャード、チコリ、ターサイ、小松菜、マスタードなどです。
ターサイやレタスはクセがなくて食べやすく、ルッコラやマスタードはぴりっと辛みがあり大人向けです。種はそれぞれ買って自分で混ぜてもいいですが、家庭菜園レベルでは割高になってしまうので、市販のベビーリーフミックスを使うのがおすすめです。ミックスの配合は種苗会社によっても商品によっても異なるので、好みに合う物を選んでみましょう。
栽培時期
ベビーリーフはビニールハウスや室内では一年中栽培することができます。夏場は生育が早く、2、3日で芽が出て、3週間ほどで収穫になります。一方で冬は発芽に1週間以上かかり、収穫までは6週間程度必要です。露地栽培では春から秋にかけて栽培できますが、夏は暑さを和らげるために寒冷紗(かんれいしゃ)をかけた方がいいでしょう。露地栽培ではベビーリーフが雨にたたかれて泥だらけになったり、虫に食われたりするリスクも高いので、管理のしやすいプランター栽培がおすすめです。
土の準備
プランターの場合
プランターで栽培する場合、普通の野菜用培養土が使用できますが、「絶対に失敗したくない!」「いつも芽が出ない」という人はぜひ種まき用の土を使ってみてください。種まき用の土はホームセンターで販売されており、一般的な土よりも価格は高いですが、種を発芽させるのに適しているので確実に芽が出ます。
露地の場合
ベビーリーフを育てるときは肥料はあまり必要ないので、元肥は入れなくていいでしょう。また、強い酸性の土壌でなければ石灰もいれなくて大丈夫です。雑草がとにかく多い畑では、早めに畝立てしてしまうと雑草の方が先に芽を出してしまうので、播種(はしゅ)直前に耕運・畝立てしましょう。また、畑で種をまく場合でも、畝の表面に種まき用の土を薄くまいておくと、発芽しやすくなります。
播種
プランターの場合
プランターは大きくても小さくても大丈夫です。プランターがなければ、丸い鉢や、発泡スチロールの箱、木箱、イチゴパックなど、基本的になんでも使うことができます。一つだけ気をつけるのは底に穴が開いているかどうか確認することです。開いていない場合は必ず開けておきましょう。
種まきのポイントは、種をまく前に土をしっかり湿らせておくことです。販売されている土はたいてい乾いていて、じょうろで水をかけるだけではなかなか土に水がしみ込んでいきません。初心者にありがちなのが、水をかけてすぐにプランターの下から水が出て来たら十分に吸ったと勘違いしてしまうことです。実は土の表面だけが濡れて、真ん中は乾燥したまま、ということがよくあります。これを防ぐため、水をかけたら手で土をかき混ぜて水をまんべんなく吸わせてあげましょう。ホットケーキミックスに水を入れた時と同じようによく混ぜれば、土は水をしっかり吸収します。
種は「ばらまき」します。土の表面近くからまくと種がかたまって落ちてしまうので、少し高いところからパラパラと散らすようにまきます。まき終わったら上から土を5ミリ〜1センチ程度かけて、その上から霧吹きかじょうろで優しく水をかけます。さらに濡れた新聞紙をかぶせて完了です。新聞紙が乾いていたら水をやるようにし、発芽するまでは土が乾かないように管理しましょう。暑い時期は乾燥しやすいので、ベランダで育てる場合でも芽が出るまでは室内に置いておくと安心です。
露地の場合
畑での種まきは「すじまき」がおすすめです。ばらまきにすると、雑草なのかベビーリーフなのか見分けがつかなくなってしまうからです。土を耕した後、畝を立てて表面をきれいに平らにならしておきます。平らになったら、木板や支柱などを利用して約1センチの深さのまき溝をつけます。まき溝ができたら、種が重ならないように注意しながら1センチ間隔で1粒ずつ種をまきます。すべての種まきが終わったら、両側から土を寄せるようにかぶせ、平クワで鎮圧します。
種まき用の土を使う場合は、少し深めにまき溝をつけておいて、溝に土をふりかけます。種をまいた後に上からかぶせる土も種まき用の土を使います。土の使用量は少ないですが、これだけでもかなり発芽しやすくなります。上から水をかけるときはじょうろの蓮口をつけ、種が水圧で流れてしまわないように優しくかけてあげましょう。
播種した後はすぐに防虫ネットをかけましょう。水菜やターサイなどのアブラナ科のベビーリーフはチョウチョやガの幼虫の大好物です。また、他の種類のベビーリーフにもアブラムシがよく寄ってきます。アブラムシは非常に小さいので、ネットの目合いが1ミリ以下の物を使用してください。網の目の細かいネットは風にあおられやすくなります。ネットの上部はトンネルの支柱にクリップでとめる、裾は土でしっかり埋めるなどし、頑丈に設置しておきましょう。すきまが開いていると虫が侵入して虫かご状態になってしまうので注意が必要です。
間引き
芽が出て葉が混み合って来たら、生育の悪いものをはさみで切って、2〜3センチ間隔を目安に間引きします。切った葉はスープのかざりやサラダに、さっそく使ってみましょう。
追肥
成育中に葉の色が薄く、黄色っぽくなってきたら肥料をあげましょう。プランターの場合は液肥が便利です。種まき用の土を使ったときは肥料が入っていないので、まず本葉が2枚出る頃に追肥してください。露地栽培の場合は前作の肥料が残っていれば肥料がいらないこともあります。足りなければ条間に化成肥料を入れて軽く中耕しましょう。
収穫
食べられそうだと思ったら取りどきです。葉の大きさは5センチでも10センチでも、食べたいときに収穫しましょう。はさみの先端で葉の付け根から、他の葉を傷つけないように気をつけてカットします。このとき、新芽を残して外側の葉だけを収穫すれば、数日後には若い葉が伸びて再び収穫することができます。
このように繰り返し何度も収穫できることから、英語では「cut and come again salads」などと呼ばれています。ただし、何度もとは言っても3、4回取ると苗が疲れて成長が遅くなったり、花がついたりするのでおしまいにした方がいいでしょう。途切れなく収穫したい場合はあらかじめ新しい種をまいておきましょう。
主な病害虫
ベビーリーフは生育期間が短いので、あまり病気になることはありません。ただし、害虫は寄ってくるので防虫ネットをかけておいたほうが安心です。コナガ、モンシロチョウ、アブラムシ、なめくじなどが主な害虫です。ベビーリーフに使用できる化学農薬はほとんどないので、虫を駆除したい場合は有機栽培に用いる農薬を使いましょう。
小さなスペースで始められるベビーリーフ栽培は、都会に住む畑を持たない方にも手軽に癒やしのひとときを与えてくれます。また、若い葉を食べることから、ベビーリーフに含まれる栄養価は非常に高く、毎日の食事に加えたい野菜でもあります。ぜひキッチンガーデンとして暮らしの中に取り入れてみてください。栽培に慣れてきたら、自分の好みの配合でベビーリーフミックスを作って育ててみるのも楽しいですよ。