キャッサバとは
キャッサバは、トウダイグサ科イモノキ属の熱帯性植物で、和名はイモノキ(芋の木)となっています。
地下の可食部分は、サツマイモのような形をしています。
また、芋の木というだけあって地上部はもう、なんていうか、木です。
キャッサバは、南米やアフリカの熱帯地域で主食として食べられています。
このキャッサバのでんぷんを使って作るのが、今ブームのタピオカなんです。
今回は、静岡県でキャッサバを栽培している滝浪アデマル紀夫(たきなみ・あでまる・のりお)さん、西下はつ代(にしした・はつよ)さんにそれぞれキャッサバの栽培方法を伺いました。
【プロフィール】
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滝浪アデマル紀夫さん ブラジル日系二世で、企業の役員をしつつ自ら野菜生産・販売会社を営む。静岡県袋井市でキャッサバ栽培を始めて13年。今年は苗木用も含めて7000本のキャッサバを栽培。 |
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西下はつ代さん 静岡県菊川市にて年間3万人以上訪れるブルーベリー農園を営む。その傍らでキャッサバや青パパイヤなども生産している。今年は6アールほどのキャッサバを栽培。 |
キャッサバ栽培の流れ
キャッサバ栽培の年間スケジュールは以下の通りです。
![](https://agri.mynavi.jp/wp-content/uploads/2019/12/b1e36c0d89deaf64a1234f378c98e145.jpg)
* 苗木は、作らずに購入することもできます。
キャッサバの苗木の作り方
キャッサバは、挿し木で増やします。
したがって、栽培する際には種ではなく挿し木にするための苗木を入手しなければなりません。
1. 苗木のもととなる枝を入手する
![](https://agri.mynavi.jp/wp-content/uploads/2019/12/931f11685bc47fda9b6bc42f706c0704.jpg)
冬に滝浪さんの温室内で育てられているキャッサバ。手に持っているこれが苗木のもととなる。
2. 1節から3節ほどで切断する
苗木のもとを入手したら、芽がついている部分を含んだ1節から3節ほどで切断します。
下の画像がカットしたもの。節のところに芽があります。
![](https://agri.mynavi.jp/wp-content/uploads/2019/12/b33d29935747ff56dc244c433385c4f5.jpg)
西下さんからいただいた苗木のもとを切断したもの。
3. ポットへ入れて、ビニールハウスへ
キャッサバの栽培最低温度は18度と言われています。
苗木作りは2月から3月ごろに始めるため、ビニールハウス内で適宜加温・加湿しながら育苗します。
また、ポットの土は水はけのいい砂壌土がいいそうです。
苗木は、20センチから30センチほどになったら植え付けます。
![](https://agri.mynavi.jp/wp-content/uploads/2019/12/816b158287a80d630286f86d01b2c5a5.jpg)
グサっと挿します。
自分で栽培したキャッサバから苗木はとれる? 温室が必要です!
自分で栽培したキャッサバから苗木をとることももちろんできます。
気温が20度を下回らないような熱帯地域なら、キャッサバの枝を折って地面に挿せば増やせます。簡単に増えるんですね!
しかしここは日本。
寒くなるとキャッサバがダメになってしまうので、冬場に温室を利用しなければなりません。
滝浪さんは、温室内を温度20度、湿度70%に保って冬にキャッサバを栽培しています。
そうして冬を越えたキャッサバから春先に苗木をとっているんです。
![](https://agri.mynavi.jp/wp-content/uploads/2019/12/80a8a7dca212161f978e69f80fc2b2a3.jpg)
滝浪さんの苗木生産用温室。キャッサバの高さは4メートルに達する物も。
キャッサバの植え付け。株間、畝幅、条間は?
キャッサバは地上部の木が1メートル以上に伸びることもあり、また地下部も横に広くなります。
したがって、1株ごとの広さ(株間)、畝の広さ(畝幅)、畝間(畝と畝の間の広さ)はじゅうぶんに大きく取ることが収量アップにつながるそうです。
また、過湿を嫌うので水はけのいい土地や砂地などに植えるのがいいのだそう。
同様に、水はけを考慮して高畝にするのがうまくいくポイントだそうです。
それぞれの目安は以下の通りです。
株間 | 1メートル |
畝幅 | 80センチ |
畝間 | 1メートル |
畝の高さ | 20センチから30センチ |
キャッサバの水やりは?
キャッサバの水やりはどうすればいいのでしょうか。
なんと、驚きの結論です。
一切、水やり不要
だそうです(露地栽培の場合)。
これは、キャッサバが乾燥にものすごく強いというのが理由です。
どのくらい強いかというと
全く雨が降らずに地上に出ている木の部分が枯れてしまっても、地中に埋まっている部分は「休眠状態」になり、次の雨が降ると再度育ち始めることがあるくらい
なんだそうです。
キャッサバの施肥は?
上のスケジュールに、追肥が入っていないことに気がついたでしょうか?
滝浪さん、西下さんともにキャッサバへの追肥は行わないそうです。
キャッサバは地力のないいわゆる痩せ地でもじゅうぶんに育つというのが特徴です。
育ててみて、キャッサバは肥料がたくさん入った土地よりも痩せているところのほうが生育がいいと感じています。
ありがたい!!
キャッサバの消毒は?
同様に、なんと消毒もしていないそうです。
一方で海外の事例を見るとコナジラミやハダニ等の害虫がつくこともあるようなので、この点は注意しておいたほうがいいかもしれません。
キャッサバ栽培のコツとリスクは?
元々熱帯地方の植物であるキャッサバ、手がかからないことはわかりましたがこれを日本で栽培するには何か工夫がいるのでしょうか。
この質問を2人に聞くと、期せずして同じ答えが返ってきました。
ない。
さすがになんかあるでしょー!!
それじゃ記事にならなーい!!
とこのテンションでさらに聞くと、いい感じに答えをいただけました。
キャッサバは水はけのいいところで育てよう! または高畝で!
また、高畝にすると収穫しやすいのもポイントです。
乾燥には強いキャッサバですが、逆に土壌水分が多すぎるとそこから病気になり腐ってしまうこともあるようです。
育てる時には水はけのいいところを選んだ方が良さそうです。
そして、高畝も忘れずに!
![](https://agri.mynavi.jp/wp-content/uploads/2019/12/3ec65e413d8be717faa677de6899f2fd.jpg)
西下さんの高畝にしてある畑。畝の高さは30センチを超える。
私は、毎年きのこの廃菌床を入れてます。
近所にきのこ工場があるため、そこから安く廃菌床を購入できるそう。
廃菌床は堆肥(たいひ)原料の一種です。
これを与えることで、団粒構造の組成を促します。
団粒構造が作られることで、水はけがよくなってキャッサバ栽培に適した土になっていく、ということですね。
2人に共通している栽培のコツは
水はけ
ですね。
日本でキャッサバを栽培する時には特に水はけに注意が必要なようです。
キャッサバは低温で成長不良に。
熱帯植物のキャッサバは、低温が苦手です。
一般的に、気温が15度を下回ると成長が止まると言われています。
キャッサバの天敵は長雨と台風
水分の多い土壌が苦手なキャッサバなので、雨が続くと収量に影響を及ぼすそうです。
また、地上部が1メートル以上にも育つことから風に揺られて木が折れ、芋の成長に影響するということもあるそう。
キャッサバってどのくらいとれる? どこで売れる??
育てるのにとにかく手がかからないという最高のキャッサバですが、果たしてどの程度収穫できて、どのくらいで売れるのでしょうか。
この辺も聞いてみました。
※ あくまでも、滝浪さんの一例です。
※ 2019年12月の話です。
キャッサバってどの程度収穫できる?
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キャッサバ最盛期の様子。(写真提供:西下はつ代)
キャッサバの1つの苗から収穫できる量は、おおよそ5~10キロほどだそうです。
10アールあたり、500キロから1トンほどの収量が期待できます。
キャッサバの原価と販売価格は?
一方で、キャッサバの原価はというと自分で苗木を作るか、買うかで大きく違うそうです。
キャッサバの苗木を手に入れるには主に3パターンあります。
- 温室で冬もキャッサバを作り続けて苗木をとる
- 2月から3月ごろに苗木の子どもを購入し、ビニールハウス内で苗木を育てる
- 「もう植えるだけ」になった苗木を購入する
現実的な選択肢である2と3の費用はそれぞれ以下の通りです。
苗木を育てる | 1本あたり66円(ビニールハウス代等は含まず) |
苗木購入 | 1本約500円 |
滝浪さんの周りでは
滝浪さんから苗木の子どもを1アールから2アール分購入し、ホームセンターなどで売っている小さなビニールハウスで育苗
というパターンが多いそうです。
キャッサバの販売価格とその販路は?
キャッサバの販売価格はおおよそ1キロ700円前後で取引されることが多いそうです。
販路は、個人、レストランはもちろん、東京や静岡市などの都市圏の卸業者さんからの引き合いもあるそう。
仮に、苗木を1本500円で購入して10キロとれたとすると…
(700×10)-500=6500円
施肥も消毒もせずにほぼ放置でいいとなると、かなり利益率が良さそうです。
まとめ:意外とシンプルなキャッサバ栽培。かん水と低温に注意!
痩せ地でも育ってくれるキャッサバを日本で栽培する場合には、水はけのいい土壌選びまたは高畝栽培でかつ15度以下にならない、ということに気をつければよさそうです。
なにせ
- 肥料なし
- 消毒なし
でOKというのだから栽培自体はとってもシンプル。
毎年どんどん暑くなる夏場、今まで作れた野菜が作れなくなるなんてことも起こるかもしれません。
そんな時にキャッサバ栽培!
うん、ありですね!!