アフリカ各地で広く食べられる“フフ”

アフリカで食べられている主食・フフ
ガーナやコートジボワールあたりの西アフリカから、中部アフリカにかけてなど、広い地域で食べられるフフは、いうなれば“イモ餅”とでも呼ぶべきもの。ヤムイモやキャッサバなどのイモ類(原料は他にも、料理用バナナであるプランテーンなどがあります)をゆで、臼で軟らかくなるまでついたものを、手で団子状に丸めて作る様は、私たちがよく口にする“餅”にそっくり。ガーナの人々などは、このフフにピーナッツ、ヤシ油、トマトがベースのスープをかけて食べることを好みます。フフは、日本の餅ほどに粘りはなく、ふわっと柔らかい食感が特徴。スプーンのような道具は用いず、手で口に運ぶのが一般的です。
また、フフは、噛まずに「飲む」のが正しい食べ方とされています。アフリカでは、道具を用いて食物をつき砕く・すり潰すなどして調理加工することは、動物には決して見られない人間特有の高尚な“文化的行為”と考えられています。そのため、加工したものはあえて咀嚼(そしゃく)せずに飲みこむことが尊ばれているという説もあります。
ヤムイモ、キャッサバはほとんどがアフリカ産

キャッサバが育つようす
西アフリカから中部アフリカにかけての地域は「根菜農耕文化圏」と呼ばれ、多様なイモの食文化が形成されています。フフの主な原料であるヤムイモやキャッサバも、この地域で日常的に食べられている作物です。
ヤムイモがアフリカで5000年以上も前から栽培されているのに対し、もともと南米原産とされているキャッサバは、16世紀以降の大西洋奴隷交易に伴いヨーロッパを経てアフリカに伝わったといわれており、その栽培の歴史は比較的新しいとの見方が有力。特別な手間をかけずとも容易に育ち収量も多いキャッサバは、アフリカに伝播されるとすぐに各地の住民に栽培されるようになったといわれています。
ヤムイモもキャッサバも、でんぷん質の多い作物であり、エネルギーの源である炭水化物のほか、繊維質を豊富に含みます。毒を多く含む種類も存在しますが、水にさらすことで毒を抜くことができます。フフを作る際にも、毒の多い品種を使う場合は、この工程が欠かせません。
実は日本でも親しまれていた

日本でおなじみのナガイモもヤムイモの仲間
ヤムイモは、アフリカ以外にも、原産地といわれるブラジルや、インドネシア、フィリピンなどで広く食べられており、世界各地で600種類以上が存在しているといいます。私たち日本人にもおなじみの自然薯(じねんじょ)、ナガイモも、同じヤマノイモ科ヤマノイモ属であるヤムイモの仲間です(※)。

日本でも人気のタピオカはキャッサバから作られる
また、キャッサバは、私たち日本人にとてもなじみのある食べ物として市場に出回っているのを知っていますか。あの、もちもちとした口当たりが人気の「タピオカ」、実はキャッサバのデンプンを加工して作られているものなのです。
種類豊富なヤムイモに、主食としても食べられ、お菓子にまで加工される、便利なキャッサバ。これから先、さらに新しい食べ方を模索していくことができたのなら、私たちの食生活はさらに豊かに変わっていくのかもしれませんね。
参考
「国際理解に役立つ世界の衣食住(3)西アジア、アフリカ、南北アメリカ、オセアニアの食べもの」
著者:星川妙子(文)、江上佳奈美(監修)
出版:小峰書店
「世界の食文化11 アフリカ」
著者:小川了
出版:農山漁村文化協会
「世界食文化図鑑 ―食物の起源と伝播―」
監修:メアリ・ドノヴァン
著者:スージー・ワード、クレア・クリフトン、ジェニー・ステイシー
日本語版監修:難波恒雄
出版:東洋書林