直売所はどういう品種が欲しいか
最近では、毎年のように新しい品種の野菜が出てきており、直売向け品種も多く出てくるようになりました。とはいえ、実際に直売所が求めるものと、メーカーがオススメするものが一致するとも限らないな、という印象を持っています。そこで、私たちの直売所ではどういう品種が欲しいのかについて、率直に述べてみたいと思います。
直売所の魅力は、「野菜の品質」と「楽しい買い物体験」だと思います。直売所のイメージといえば、農家が直接持ち込む新鮮で高い品質の野菜がならぶうえ、スーパーでは見られないような野菜も多く、それらにはPOPが付いている、といったものだと思います。逆に、野菜の品質が高くなく楽しい場所でなければ、買い物の利便性は相対的に高くないことが多いです。
ですので、直売所の経営者としては、それらの魅力を強化できるものが欲しいです。具体的には、以下の3つがポイントだと考えます。
- わかりやすくおいしい品種
- 手軽に食べられる品種
- 少しずらした品種
それぞれについて、簡単に説明します。
1. わかりやすくおいしい品種
以前にも書いた通り(参照:直売所で選んでもらう、楽しくする! POPの工夫【直売所プロフェッショナル#07】)、直売所はスーパーよりも野菜の差別化をしやすい業態です。品種名や食味についてのPOPを付けやすいうえ、お客様も野菜に対して期待を持って購入してくださるためです。ですので、わかりやすくおいしい野菜を提供できれば、ファンを獲得しやすいはずです。わかりやすくおいしいとは、例えば「生で食べても甘い」みたいなものです。すべての野菜に甘みを求めることについては、個人的には複雑な思いもありますが、直売所の経営という点では、やはり欲しい野菜です。
2. 手軽に食べられる品種
これは、私たちが東京で直売所を経営しているから、ということもあるのかもしれませんが、あまり手をかけなくても食べられる野菜の人気が高いです。生で食べられる、さっとゆでるだけでおいしいなど。忙しい方の多い現代、とはいえやっぱり自分で調理をしたい、栄養のある食事をしたいというニーズは確かにあると実感しています。
3. 少しずらした品種
少しずらした、というのがポイントです。普段食べ慣れている野菜から少しだけずれている、つまり未知ではないがいつもと少し違う野菜であれば、味や食べ方のイメージが付きやすく、お客様もチャレンジがしやすいのです。初めて見る野菜となると、おもしろいのですが、実際に購入につなげるとなると少し大変です。
それでは、これら3つのポイントについて、具体的な品種を見ていきましょう。
直売所が欲しい品種
1. わかりやすくおいしい品種
私たちの直売所で人気の高いニンジンとして、「アムス&テルダム」ニンジンが挙げられます。甘みが強くて柔らかいうえニンジン臭が少なめ。生でも加熱でもおいしいです。また、サイズも小ぶりで、使いやすいサイズなのも魅力的。2色あるのも売り場が華やかで、うれしいです。さらに、専用の販促用シールを購入すればカワイイうさぎが目を引きます。
また、定番かとは思いますが、つるなしインゲンの「サクサク王子」が人気です。筋がなく柔らかいインゲンで、鮮度が大事なので直売所との相性も抜群。さっとゆでるだけで、歯切れ良くしっかり甘みが感じられます。明確に違いを感じてもらえるので、リピーターが続出しています。
比較的チャレンジしやすい果物としては、収穫までに少し時間がかかりますが、カラフルなキウイの人気も高まっているように思います。特に人気なのが「紅妃(こうひ)」。かなり甘くて、見た目もカワイイと、少し高めの価格設定でも、それに見合う価値を感じてもらえるようです。ヘイワードなどの一般的なキウイとは味がはっきり違うので、一度食べるとファンになるお客様が多いです。
生で食べられるしっとり柔らかくて甘い「サラダかぶ」も、毎年人気です。どうしても、スーパーなどでは普通のかぶもサラダかぶも特に表記上分かれていないことが多いですが、きちんとサラダかぶとして販売すると、生食した際の甘さに驚くお客様がとても多いです。「スワン」などが定番ですね。きちんと「サラダかぶであること」と「生食がオススメであること」をPOPで伝えることが重要です。
2. 手軽に食べられる品種
「食べやすい」というのは生で食べられる、さっとゆでるだけで食べられる、そのままソテーできる、などが考えられます。食べるまでの工程が少なければ少ないほど売りやすいです。
私たちの直売所で定番になり、安定的に人気があるのがスティックカリフラワー「カリフローレ」とスティックブロッコリー「スティックセニョール」です。どちらも房分け処理が不要で、さっとゆでたりそのままソテーをしたりして、簡単においしく食べられるのが魅力的。お弁当に入れるのにも使いやすいです。
また、アスパラ菜とも呼ばれる葉物野菜「オータムポエム」は秋冬作がメインですが、春作も可能。さっとゆでてお浸しはもちろん、そのままソテーやパスタにも活用できて、とても便利。クセが無く食べやすいので、お子様も食べられると人気です。
生で食べられるということで意外と人気なのが「スティック春菊」。クセが少なく、柔らかく、食べやすい春菊です。サラダに混ぜるなどしてもアクセントになると、たくさん売れるわけではないのですが、ファンがつく野菜です。
ここ数年、だんだんと人気を得てきているのがミニカラーピーマンです。例えば、「ぷちピープロ」。甘さや香りがしっかりしており、生でもおいしいのはもちろん加熱でもおいしい。見た目もかわいいので、喜ばれます。
3. 少しずらした品種
先ほどアムス&テルダムというニンジンも紹介しましたが、通常のニンジンと一緒に黄色ニンジンが並ぶと、売り場がにぎやかになるうえ、スーパーなどではまだそれほど販売されていないので、差別化商材になります。おすすめは「金美(きんび)プラス」。食べやすくて見た目も良いと、人気があります。
また、直売所として大変注目しているのが「ヤングコーン」です。これまで、トウモロコシを栽培している際に間引いたものを出してもらっていましたが、サカタのタネが2019年春から専用品種の販売を始めました。ヤングコーンは直売所では圧倒的に人気の野菜。まだまだ流通が少なく、飲食店さんからもかなり欲しがられます。鮮度で味が決まりやすいというのも直売所向きです。もしも多収で品質が高いなら、作らない手はないのではないかと思うほどです。
変わりナスも直売所にはぜひ並んでいてほしい野菜です。品種はたくさんあり、おいしいものがたくさんありますが、「マー坊ナス」の評判が良いです。名前は「マー坊ナス」ですが、炒め物全般に適したナスで、加熱するとフワトロ食感を楽しめます。他にも、白丸ナスやロッサビアンコなど、いろいろなナスが並ぶと、直売所の魅力が高まります。
また、実は「生落花生」は秋の目玉野菜で大変人気なのですが、とりわけファンが多いのが「おおまさり」です。おおぶりで食べ応えがあり、塩ゆでをすると最高です。この時期しか楽しめないということで、毎年栽培を増やしてもらっても足りていない状況が続いています。一度食べたら病みつきという声が多数です。
直売所が欲しいものが儲かるとも限らない
以上、直売所の経営をする立場として欲しい品種を書いてきましたが、一つだけ注意をしていただきたいことがあります。それは、儲かる品種として紹介しているわけではないということです。当たり前ですが、売上は「単価×販売数」なので、収量がでなければ儲かりません。栽培のしやすさや多収性については考慮をせずに書いています。その点、ご注意いただければと思います。