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直売所で選んでもらう、楽しくする! POPの工夫【直売所プロフェッショナル#07】

直売所で選んでもらう、楽しくする! POPの工夫【直売所プロフェッショナル#07】

直売所を複数展開する民間ベンチャーの創業者たちが、直売所運営のイロハについて事例をまじえて紹介していく連載。第7回は、直売所の‟優秀な販売員”にもなり得る、POPについて。

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見た目で野菜の中身はわからない

野菜の商品としての特徴はなんでしょうか? 加工食品と比べるとわかりやすいと思いますが、劣化が早いこと、同じ野菜でも需給バランスにより価格が変わること、時期によって販売できるものが違うことなどが挙げられると思います。

そして、最も大きな特徴が、同じ名前の野菜でも一つとして同じ品質のものがないうえ、その内容が見た目では把握できないということです。例えば、スーパーに並ぶ「ニンジン」はそれぞれ、意識しなければそれほど違いを感じないかもしれませんが、品種や栽培方法、収穫時期や保存状態などで全く別の商品です。

一方で、一般的なスーパーの売り場では、その違いを消費者が理解する方法はほとんどありません。“顔が見える野菜”ということでパッケージから農家の名前がわかったり、JAS有機の野菜だったり、契約産地から直接届いたもの、といった情報は最近では打ち出されていることも珍しくありませんが、野菜自体の特徴はまだまだ出てきにくい情報です。その理由はいろいろあるかと思いますが、最大の理由はコストがかかることだと思います。限られた社員で大量の野菜を販売するスーパーにおいて、一つ一つの野菜の品種や特徴を把握して情報を出すのは、販売価格に比してコストが合わないのです。そのため、実は山ほどある野菜の品種やその特徴による食味の違いが消費者に伝わることはほとんどありません。その結果、見た目がキレイな野菜や安価な野菜がとりあえず手に取られる、ということになります。

こちらの連載別稿も参考にしてください。
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しかし、そこが直売所にとってチャンスであり、スーパーと差別化ができるポイントです。安売りに陥らないためには差別化が不可欠ですが、野菜自体に特徴があっても、それを伝えなければお客様はわかりません。そのため、野菜の特徴を伝える情報発信が重要であり、実は直売所はその点で優位性があります。なぜなら、栽培している農家が直接納品したり、直売所スタッフとつながったりしているので、野菜一つ一つの情報を入手しやすく、発信するコストがとても低いからです。直売所は、構造的に情報発信では有利な業態であり、その情報が楽しい買い物を促します。

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では、お客様に情報を伝えるためには、どのような方法があるでしょうか。私たちは、大きく3つに分けて考えています。

  • 店頭POP
  • 店頭スタッフによる会話説明(接客)
  • パッケージ、持ち帰り資料

店頭でお客様が購入する際に見てもらうPOP、さまざまな情報を把握している店頭スタッフによる会話説明、野菜のパッケージへの印字などで商品自体に情報を載せるなどの方法があります。今回は、この中でもPOPについて詳しく説明します。

一言で店頭POPと言っても、いろいろな目的が考えられます。また、直売所の店頭POPの設置やそのデザインは、基本的には出荷農家に任されていると思いますが、直売所で用意できるものもあります。

まず、店頭POPは内容で大きく2つに分けられます。

① 一般的な情報

  • 野菜ごとの一般的な情報(歴史、由来、栄養価など)
  • 野菜の品種や特徴の表やマップ
  • 季節の旬野菜情報
  • 食べ方やレシピ

② それぞれの野菜の具体的な情報

  • 品種の具体的な特徴
  • 栽培のこだわり
  • 生産者としての思い

農家が野菜を持ち込み、委託販売をする直売所において、直売所の運営側がPOPを作ることはあまり多くないように見受けられます。委託販売なので、公平性を考えるとPOPを作るのは難しいなどの理由があるのかもしれません。しかし、一般的な情報や売り場全体のことを考えた情報を発信するのは、直売所の仕事であるべきではないかと考えます。

具体的には、お客様が野菜を選ぶためのベースとなる情報を積極的に発信するのです。野菜や果物の品種による違いを表すマップ、その地域の旬の情報、野菜の一般的な栄養価や簡単な調理方法などが挙げられます。これらは、直売所全体の野菜のラインアップや状況を把握していなければ作りにくいものであり、直売所として用意すべきものです。そして、野菜の専門店という側面もある直売所では、スーパー以上にこのような情報発信はしっかり行うべきでしょう。

当社直売所の店長の力作、旬メーター。食べ頃の野菜や果物をお伝えするとともに、楽しさの演出にもなります

地域農業に関する情報も積極的に発信。これはまさに直売所側が伝えるべき情報

野菜自体の一般的な情報を出すのも直売所が積極的に取り組めること。ちょっとした情報をお伝えするだけで、手に取る方は増えます

農業に関わる地域文化の発信も、直売所が取り組むと楽しい売り場になり、農家とのつながりもアピールできます

直売所でレシピを出すなら、野菜を購入してくれている地元飲食店とのコラボレシピもおすすめ。飲食店のアピール効果も期待できます

いろいろな品種が出てくる野菜は、お客様が選ぶためのPOPを直売所が用意すると親切。スーパーでもこういうPOPはなかなかないので、楽しい買い物にもつながります

一方、野菜の具体的な情報は、実際に栽培した農家の方がスムーズに用意できるものです。また、食べ方やレシピなども、農家自らが普段から食べている方法を伝えるのは、お客様が商品の魅力を理解する際にとても説得力があります。そして、農家が作成するPOPこそが、差別化においては最も重要で効果的なものです。

とにかく、POPを作って、付ける

とは言え、POPを作るのはハードルが高いという農家さんも多いと思います。具体的な書き方については、良書があるのでそちらを参考にしていただければと思いますが(文末参照)、まずは以下3つだけ、チャレンジすれば良いと思います。

  1. 自分が感じる食味をそのまま書く
  2. 栽培でこだわっているポイントを書く
  3. 品種の特徴を伝える

まずは、前提としてとにかくPOPを付けることが大事です。上手か下手かなどは、そこまで重要ではありません。極端な話、どんな内容でもPOPが付いていれば、付いていないよりはずっと良いのです。POPが付いているだけで、農家さんが伝えたいことがあるということがお客様にも伝わります。

その上で、まずは伝える内容のある野菜を栽培することです。POPを書く際に何を書くべきか迷わない野菜を作ることが最も大事。むしろ、「これを伝えたい!」と思える要素を持つ野菜を栽培すれば、自然とPOPを書いてお客様に伝えたいと思うはず。「それが一番難しいんだよ!」と言われてしまいそうですが、やはりそこが大事です。農家がみんなマーケティングのプロになれるわけでなく、なるべきでもないと思います。品質の高い野菜を作り、それをわかりやすくお客様に伝えることを目指しましょう。もちろん、POPを書くのが得意な方は、さらにいろいろな工夫をしていけば良いのです。

あまり知られていない野菜や品種については、簡単でよいのでPOPを置くだけで、売れ行きがアップ!

【おすすめの関連本】

直売所向けに。POPの書き方はもちろん、売り場づくりやチラシづくりについてもわかりやすく説明されています。
「農産物直売所 売り上げアップの秘訣」 
著者:石川香代・石川伊津
出版:家の光協会

農家向けに。シンプルで網羅的。具体的な書き方も説明されていて、とっつきやすいです。
稼げる! 農家の手書きPOP&ラベルづくり
著者:石川伊津
出版:農山漁村文化協会(農文協)

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