農業経営における節税【実践編②】 将来の自分のためにもなる節税とは

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農業経営における節税【実践編②】 将来の自分のためにもなる節税とは

連載企画:【専門家監修】農業経営の節税・補助金活用ポイント

農業経営における節税【実践編②】 将来の自分のためにもなる節税とは
最終更新日:2020年02月07日

前回の「農業経営における節税【実践編①】 福利厚生・事業承継対策にも!」では、「従業員を雇用している場合の農業経営」における節税を紹介しました。今回は従業員を雇用せず、個人事業主として農業経営を行っている方に向けた節税方法を紹介します。個人事業主の節税対策は所得控除を上手に活用することがメインとなります。将来の積み立て(退職金・年金)を行うことが実は節税につながったり、寄付やふるさと納税を行うことが節税につながったりすることもあります。早速見ていきましょう。

前回の記事
農業経営における節税【実践編①】 福利厚生・事業承継対策にも!
農業経営における節税【実践編①】 福利厚生・事業承継対策にも!
連載第1回目の「農業経営における節税 自分の経営に合った制度や控除を活用しよう」では、幅広く農業経営者が活用できそうな税制や控除について解説しました。今回注目するのは、「従業員を雇用している場合の農業経営」における節税を…

事業経費を増やす節税方法

所得税の計算式

個人事業主の農業者が利益(課税所得)を下げて税金を少なくする場合、事業経費を増やす方法や、所得控除・税額控除を増やす方法を検討します。事業経費は「事業にかかる経費のみが税金計算上の費用」となります。どういう意味かというと、事業とプライベートの両方で使用している支出のうち、「明確に事業用と分けられるもの」や「利用実態に基づいた合理的な按分基準で分けることができるもの」は事業経費とすることができます。例えば、家賃、光熱費、電話代、新聞代、ガソリン代などが該当します。

個人事業主の農業者で経営規模の大きい方は、毎年のように設備投資(車両を含む)を行うことで事業経費を積み上げ、課税所得を圧縮している例もあります。必要な設備投資は問題ありませんが、実効税率分の節税効果しかないため、不要不急でない投資はROI(※)の観点から適切ではありません。設備投資の際は節税による所得税・住民税削減効果と、キャッシュ残高、投資効果とを比較しましょう。所得税は超過累進課税であるため、当年度だけではなく将来年度を含めた実効税率をどの値にしたいかを想定することも必要となります。

設備投資を行いたい場合で、一時的に大きなキャッシュ支出が難しい場合は、リース、中古資産も検討しましょう。リースは投資額が少ないことがメリットになります。また、中古資産は投資額が少ないことに加え、耐用年数が短くなるため減価償却額が大きくなり、課税所得を押し下げる効果が高くなります。

※ 投資に対してどれだけの利益を上げることができたかという指標。

所得控除・税額控除を増やす節税方法

所得控除の種類 控除の対象となる人 控除額
基礎控除 誰でも一律に適用 38万円
医療費控除 1年間の医療費の額が10万円を超える人 or
総所得金額が200万円未満の場合は、医療費が総所得金額の5%を超える人
①医療費の額-保険金等で補てんされる額-10万円
or
②医療費の額-総所得金額の5%
社会保険料控除 健康保険、国民健康保険、国民年金、厚生年金保険、農業者年金等の社会保険を支払う人 その年に実際に支払った金額の全額
小規模企業共済等掛金控除 (独)中小企業基盤整備機構と結んだ共済契約の掛金を支払う人
その他確定拠出型の企業型年金や個人型年金の掛金を支払う人 など
その年に実際に支払った掛金の全額
生命保険料控除 生命保険料、介護医療保険料および個人年金保険料を支払った人 支払った保険料の額により変動
地震保険料控除 地震保険料を支払った人 支払った保険料の額により変動
寄付金控除 国や地方公共団体、特定公益増進法人等に対し、特定寄附金を支払った人 支払った特定寄附金の額の合計額 or 総所得金額等の40%相当額
のうちどちらか低い金額
-2千円
扶養控除 控除対象の扶養親族がいる人 条件により38万円から58万円

所得控除の一例

控除とすることができる支出

所得控除は全部で14種類ありますが、人によってどの所得控除の適用を受けることができるかは異なります。基礎控除、扶養控除、医療費控除、生命保険料控除がよく知られているものですが、それら以外にふるさと納税、寄付金なども対象となりますので、支出した際は忘れずに控除を適用しましょう。

ちなみに、寄付金は認定NPO法人や公益社団法人等に寄付を行った場合、所得控除と税額控除のどちらかを選択することができます。計算等はお近くの税理士に相談し、どちらの方法が有利となるか検討してみてください。また、小規模共済の掛金や農業者年金の保険料も控除の対象となります。
ふるさと納税や小規模共済、農業者年金は耳にしたことがあってもやったことはない、加入はしていないという方もいるかもしれません。以下に簡単に説明します。

ふるさと納税で控除を受ける

ふるさと納税とは自分の選んだ自治体に寄付を行うことで、寄付金額のうち2,000円を超える部分が所得税と住民税から控除される制度です。また、寄付を行った自治体からのお礼品を受け取ることができます。ただし、控除の対象となる寄付金額は所得税の場合は総所得金額等の40%が上限、個人住民税は総所得金額等の30%が上限なので注意してください。
確定申告の際にふるさと納税の受領書を添付すると、所得税はふるさと納税をした年分から還付され、個人住民税はふるさと納税をした翌年度分から減額されます。ふるさと納税は払う税金自体が減るわけではありませんが、税金を先払いすることで同等の額でお礼品を受け取ることができるためお得になります。

小規模企業共済や農業者年金加入で控除を受ける

小規模企業共済とは(独)中小企業基盤整備機構が運営する、小規模企業の経営者や個人事業主のための退職金制度です。掛金にはキャッシュ流出が伴うため、「加入する余裕がない」という方も多いかもしれません。ですが、掛金は所得控除の対象となるため課税所得(税金がかかる所得)を押し下げることができます。また、事業の廃業等の理由により退職一時金として共済金を受け取ると退職所得として計算されるため、加入年数や掛金の額によっては受け取ったときの所得税・住民税がかからないこともあります。

農業者年金は(独)農業者年金基金が運営する農業者向けの積立方式・確定拠出型年金の制度です。農業者年金の保険料は、確定申告の際に全額が社会保険料控除の対象となります。また、農業者年金として受け取った年金は公的年金控除を適用することが可能です。
将来的な積立や公的年金へのプラスオンとして、小規模企業共済、農業者年金などに加入することが、結果的に現在の節税にもつながります。

事業経費を増やすだけが節税じゃない

今回は個人事業主として農業経営を行っている方に向けた節税方法をご紹介しました。まとめると、「今支出しているもので改めて事業経費となるものがないか見直すこと」「所得が大きくなってしまう年は、必要な設備投資を行うこと」、この2点が事業経費の観点から見た節税方法です。
節税方法は上記の事業経費を増やす方法以外にも、控除の制度を上手に活用する方法があります。支出を伴わない青色申告特別控除(65万円)もありますし、寄付をした分お礼品を受け取ることができたり、将来の自分への金銭的な準備ができたりするなど、税負担の軽減以外のメリットがある控除制度もあります。現在の経営状況をよく見直して、今の自分に必要なものから節税を考えてみてください。

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