農業経営における節税【実践編①】 福利厚生・事業承継対策にも!

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農業経営における節税【実践編①】 福利厚生・事業承継対策にも!

連載企画:【専門家監修】農業経営の節税・補助金活用ポイント

農業経営における節税【実践編①】 福利厚生・事業承継対策にも!
最終更新日:2019年12月02日

連載第1回目の「農業経営における節税 自分の経営に合った制度や控除を活用しよう」では、幅広く農業経営者が活用できそうな税制や控除について解説しました。今回注目するのは、「従業員を雇用している場合の農業経営」における節税を紹介します。節税対策は経営面のメリットだけではなく、従業員の福利厚生の充実や事業承継対策として役立つものもあります。経営者にとっても従業員にとっても良い効果のある「現場の節税」について、5つの方法を紹介します。

農業の経営形態が変われば節税方法も変わる

これまで農業分野では、「家族経営」や「家族+パートタイム従業員」での経営形態と、繁忙期・閑散期等を考慮して労働時間や労働者数を調整するという働き方が主流でした。最近では「家族+正社員(外国人労働者を含む)+外国人技能実習生」の常時雇用へと雇用を拡大し、法人化する農業者も増えつつあります。
このような中、近年は、事業経費や設備投資を増やす節税ではなく、従業員への手当の充実、福利厚生向上による税コストの低減や、事業承継対策など、雇用管理と結びついた節税が進んでいます。そこで給与の面、福利厚生の面、事業承継対策の面でできる節税について見ていきましょう。

給与を利用した節税

所得拡大促進税制

所得拡大促進税制とは、青色申告書を提出している個人の農業者や農業法人(※1)において、従業員に支払う労務費・給与の額を前年度より増加させたとき、増加させた労務費・給与の総額の15%(または25%)を法人税(個人の場合は所得税)から税額控除できる制度です(※2)。従業員の労務費・給与を増やすことで、農業経営者の支払う税金が安くなります。決算対策として期末に賞与を多く支払った場合でも、労務費・給与の総額が増えますので、所得拡大促進税制を適用できれば支払う税金が安くなります。
所得拡大促進税制は、経費が増えるという節税(実効税率分の節税効果)ではなく、支払う税金を直接減らすことができるという「税額控除」ですので、節税効果が高く、かつ、優秀な人材を定着させたい農業法人にはおすすめの制度です。

※1 資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人で、その発行済株式または出資の総数または総額の一定割合(1つの法人により50%又は複数の法人合計で3分の2)以上を大規模法人(資本金の額が1億円超の法人、その他一定の法人)に所有されていない法人。
※2 2018年4月1日~2021年3月31日に開始される事業年度が対象で、設立事業年度は適用できません。

所得拡大促進税制の判定フロー

福利厚生を充実させて節税

借上社宅制度の導入

従業員の新規雇用促進、従業員への福利厚生として、借上社宅制度を導入する農業法人があります。借上社宅制度とは賃貸物件を会社が借り入れて、その物件を従業員に貸し出す制度です。自社の社員寮や社宅ではないため、建築費、土地取得費、維持管理の手間、固定資産税、登記費用がかからないというメリットもあります。この場合、家賃が農業法人の費用となり、社会保険料等を節約しつつ従業員の手取り額を高めることができます。

農業経営者側のメリット 従業員側のメリット
  • 家賃が会社の費用になり節税できる
  • 社会保険料を軽減して従業員の実質手取り額を増やすことができる
  • 住宅手当を受けるよりも所得税の節税になり、社会保険料を軽減して手取り額が増加
  • 寮とは異なり、住む場所をある程度選択できる

社用車の導入

社用車は、車両運搬具として購入費用を減価償却によって経費計上できます。経費として計上することで利益が圧縮できるため、その分の法人税等を抑えることができます。下記は法人が社用車として中古車を購入した場合の例ですが、個人事業主でも社用車を減価償却によって経費計上できます(その場合は原則として定額法です)。

社用車として中古車を購入した場合の計算

社用車は使用期間および行き先経路、目的、同乗者、使用する会社の車、運転者等を記載した「使用許可願書」を事前に提出させて、従業員に貸し出すことも可能です。その場合は交通事故時の損害賠償への対策が必要となるので注意しましょう。
 

出張手当(日当)の支給

旅費規程を定めることで、従業員が「日帰り出張(外勤を除く)」「宿泊を伴う出張」をした場合に、一定額の日当を支給できます。日当は実費相当額とみなされるもので、受給した従業員に所得税が課税されません。従業員の福利厚生となります。もちろん、農業法人の経費となります。

事業承継対策と合わせて節税

従業員の財産形成(福利厚生)、農業法人の経営への参加意識向上、結束力や協力体制の強化を目的に、従業員持株会を検討している農業法人もあります。従業員持株会とは文字通り従業員が会員となり自社の株式を保有する制度で、従業員の給与から天引きをして株式を買い付けていくものです。
奨励金による株式の取得支援、配当金などによって、従業員は銀行預金よりも高い利回りを期待することができます。従業員持株会は少数株主に該当し、オーナーが所有する株式を従業員持株会に「配当還元方式」で譲渡することができ、オーナーが後継者に承継する株式数を減らすことができます。その結果、相続税を軽減することにつながります。

◆ 従業員持株会を活用した事業承継対策の具体的な方法は税理士にご相談ください。

労働環境整備が節税にもつながる!

労働基準法の一部の項目について適用除外を受ける農業では、これまで労務管理や福利厚生についてノウハウが少なかったと言われていますが、今回ご紹介したように、従業員を雇用している農業経営者は、従業員の手当充実や福利厚生向上等による節税の方法もあります。「経費や投資を増やすだけが節税ではない」ということを心に留めておき、労働環境整備や事業承継を意識して節税に取り組んでみてはいかがでしょうか。

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