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年間最大120万円受給可 農の雇用事業助成金とは?

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年間最大120万円受給可 農の雇用事業助成金とは?

農業界においてさまざまな助成金が存在しますが、新規就農者や次世代の経営者候補に対して助成金を支給する「農の雇用事業」という制度があります。「農の雇用事業」は雇用就農者の確保・定着を促進するための事業です。個人事業者や農業法人等が研修生に対して行う実践研修を支援するもので、個人事業者・法人とも年間最大120万円を受給できます。今回はこの制度の概要や支給要件、制度が新しくなったポイントなどについて詳しく説明していきます。

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農の雇用事業の内容

対象となる研修及び経費

農の雇用事業には3タイプあり、それぞれ助成額や期間が異なります。内容は以下の通りです。「A.雇用就農者育成・独立支援タイプ(年間最大120万円、最長2年間)」、「B.新法人設立支援タイプ(年間最大120万円、最長4年間 ※3年目以降は年間最大60万円)」、「C.次世代経営者育成タイプ(月間最大10万円、最長2年間)」。また、タイプごとに支援の対象者や内容が異なります。

A. 雇用就農者育成・独立支援タイプ
農業法人等が就農希望者を新たに雇用し、就農に必要な技術・経営ノウハウ等を習得させるための、実践的研修や外部専門家による研修等に対して支援。

B. 新法人設立支援タイプ
地域の担い手となる法人経営体を増やしていくため、農業法人等又は経営移譲を希望する個人経営者が就農希望者を一定期間雇用し、新たな農業法人等を設立するために実施する、農業技術・経営ノウハウを習得させるための研修に対して支援。

C. 次世代経営者育成タイプ
新たな農業の担い手として果たす役割がより重要となってくる農業法人等において、その職員等を次世代の経営者として育成していくため、先進的な農業法人等や異業種の法人での現場実践研修等の取り組みを支援。2017年より海外派遣研修も支援対象。
   
(一社)北海道農業会議へ制度の利用状況を確認したところ、申請のほとんどがAタイプで、BタイプとCタイプは1%以下との回答を頂きました。新規法人の設立や経営者育成のための研修よりも、「まずは雇用した従業員に就農の知識を」と研修を実施する事業者が多いことがわかります。
次に、対象となる主な経費です。これは大きく三種類に分けられます。まず「①新規就農者に対する研修費」は指導者が研修生指導に要した経費として、具体的には業務に必要な資格取得のための講習費、テキスト代、受験料、宿泊交通費、外部講師への謝金等があげられます。次に「②指導者研修費」は研修指導者が人材育成手法や労務管理等を習得するための研修に参加した費用やテキスト代、宿泊交通費等が含まれます。最後に「③語学研修費」は外国人研修生が日本語研修を受けるための教育機関への経費(1人あたり上限3万円/月で最長6カ月)のことを指します。

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助成金受給要件

助成金受給のための主な要件は以下の通りです。
(1)正社員(B.新法人設立支援タイプの場合はこの限りではない)として雇用し就業を開始しており、所定労働時間が35時間/週以上であること。
(2)研修生が正社員採用時点で農業従事経験5年以内であること。
(3)労働保険に加入すること。また、農業法人等は社会保険にも加入すること。
(4)従業員を常時10名以上雇用している農業法人等は、就業規則を整備している(または申請中である)こと。
(5)本事業と重複する雇用関連の助成金を受給していないこと。
(6)研修生が農業法人等の代表者の3親等以内ではなく同居していないこと。
(7)研修生が正社員採用日時点で原則50歳未満であり、研修開始日時点で正社員としての就業期間が4カ月以上12カ月未満であること。
(8)過去に要件違反等に該当したことによる全国農業会議所に返還すべき助成金がないこと。
要件の詳細は、下記の全国新規就農相談センターHPの募集要領をご確認ください。

全国新規就農相談センター 農の雇用事業募集

2019年度の主な改正点

新規就農して定着する農業者を倍増し、2023年度までに40代以下の農業従事者を40万人に拡大することを政策目標として改正が行われています。主な改正点は次の三つです。「①研修生の年齢制限を原則45歳未満から50歳未満へ引き上げ(C.次世代経営者育成タイプは55歳未満)」、「②働き方改革実行計画の作成が必要」、「③従業員数が10人以上の農業法人等は年間の新規採択者数は上限2名、20人以上であれば上限1名(独立希望者の受け入れは上限なし)」。
このうち、②と③の条件はA.雇用就農者育成・独立支援タイプに適用されます。最も利用が多いタイプでもありますので、農の雇用事業の活用をお考えの方は改正の内容をよく確認して申請するようにしてください。

農の雇用事業申請の流れ

農の雇用事業申請における流れは下記の通りです。前提として「研修開始の4カ月以上前かつ1年以内に採用した方がいる」ということが条件になります。

原則は事業実施主体である各農家(農業法人等)が書類作成および申請することとなりますが、社会保険労務士等に申請代行を依頼することもできます。申請は一度すれば終わりではなく、4カ月ごとに研修生の出勤簿や賃金台帳等の提出が必要になります。それらの書類の整合性が問われるのはもちろんのこと、1日あたりの労働時間や休憩時間の記載が抜けていても書類不備とみなされて再提出となります。また、不正受給防止等の観点から、事業者(農業法人等)や研修生への聞き取りを実施する現地調査もあります。
申請に必要な書類は、先述した全国新規就農相談センターのHPに掲載されていますので、ご参照ください。

まとめ──手間をかける価値はある!

ここまで解説してきた通り、農の雇用事業の助成金は3タイプそれぞれに要件が異なっています。また、要件を満たしていないと支給された助成金の返還を求められる場合もあります。申請前、申請後とも要件をしっかりと満たしておけるよう、事業の内容をよく理解して書類等を整備する事が必要です。
実際に申請をして助成金を受給された農業者数人に話をうかがったところ、「書類の作成から申請まで全て自分自身でやらないといけないし、遠方まで研修を受講しに行くのも少々面倒ではある。しかしながら、助成金をもらえることは研修生教育に関して非常にありがたい。申請を迷っている方は、ぜひこの制度を利用してほしい」とのことでした。確かに多少の手間はかかりますが、2~4年にかけて最大240~360万円の助成金が受給できるというのは、研修生教育に向けての財務基盤強化に有効な手段となります。申請を考えている方は、まずはお近くの農業協同組合や社会保険労務士等の専門家にご相談ください。

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