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【社員さんインタビュー】朝霧メイプルファームに応募殺到、人材が定着するその秘密は?

千田 一徳

ライター:

【社員さんインタビュー】朝霧メイプルファームに応募殺到、人材が定着するその秘密は?

静岡県伊豆の国市地域おこし協力隊、農家志し中のちだです。人手不足が叫ばれる酪農業界で、新卒応募倍率が40倍を超える牧場、朝霧メイプルファーム。実は、応募が多いだけでなく人材の定着率も高いんです。今回は応募殺到の理由、そしてなぜ人材が定着するのか、その秘密を現役の社員さんに聞いてきました。

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応募倍率40倍超。朝霧メイプルファームとは。

富士山のふもと、静岡県富士宮市の朝霧高原にある朝霧メイプルファーム。大自然が美しく、空気もおいしい! こんなところだったら働いていて気持ちがいいだろうな、という場所です。だからでしょうか、メイプルファームは人材不足と言われる酪農業界にあって、新卒の応募倍率が40倍超。その背景には、後継ぎとしてこの牧場に戻ってきた取締役の丸山純(まるやま・じゅん)さんによる、業務の改善がありました。

朝霧メイプルファームのこれまでと丸山さんの挑戦についてはこちらの記事をご覧ください。

前回の記事
酪農もワンチームで労務改善。入社倍率40倍超を実現した挑戦とは
酪農もワンチームで労務改善。入社倍率40倍超を実現した挑戦とは
静岡県伊豆の国市地域おこし協力隊、農家志し中のちだです。静岡県富士宮市に、なんと新卒入社倍率40倍超の牧場があるとのこと。その牧場の名前は「朝霧メイプルファーム」です。人手不足が叫ばれる酪農業界でなぜそんなに人が集まるの…

労務管理などの改善を重ね、酪農業界の中では珍しい月8日の休みを実現するなど、労働条件を整えた結果、2019年の新卒採用時は200件程度の応募があったそうです。
人手不足が叫ばれる酪農業界でなぜそんなに応募があったのか。

今回は実際に現場で働く方々からのお話をもとに、その秘密を探ってみたいと思います。

実際、朝霧メイプルファームで働いてみてどう? 社員さんインタビュー

非農家出身で酪農経験なしの大卒文系男子がメイプルファームを選んだワケ

梅田隆太(うめだ・りゅうた)さん。

愛知県名古屋市出身の23歳。名古屋の大学で考古学を専攻。非農家出身ながら、2019年に新卒でメイプルファームへ入社、1年目。
現在は搾乳、エサ作り、分娩(ぶんべん)後の牛の対応等の仕事を行う。

登山が好きなので、仕事場の近くに自然があって趣味の時間が確保できるような会社がいいなと思い就職活動をしていました。

梅田さん

そんな中、マイナビ(就活サイト)でメイプルファームの記事が目に止まったそう。
広々とした朝霧高原の様子にビビッときて、採用ページを見てみたところ
「これから規模を拡大したい」「新人でも責任を持った役割を担う」といったベンチャー的な部分と
「酪農業だけど月に8日の休日」「機械化、マニュアル化が進められている」という労務管理の部分に魅力を感じ、応募したそうです。

採用ページにあった朝霧高原の写真が本当にカッコ良かったんです。
で、採用ページの中身を見たら「これからがんばっていこう!」っていう前向きなカッコ良さもあって、動物も好きなので応募しました。

梅田さん

結果、名古屋市内の会社と朝霧メイプルファームに合格。
名古屋市内の会社を断り、また選考途中だった有名企業も辞退してメイプルファームへ入社しました。

実際に働いてみると、やっぱり大変でした。
特に搾乳は一度に4人で360頭程度をおこないます。1人あたり約90頭を担当して2時間かかりっきりになりますので、緊張感を持って仕事をしています。

梅田さん

ちだ

ワークライフバランスはどうですか?
メイプルファームは、3交代制なんです。
朝・昼シフトなら夕方から、朝・夜シフトなら昼の間、それぞれ時間が使えます。
お休みも月に8日あるので、他の企業に就職した同期と比べても同じくらいで、山にも登れてますし満足しています。

梅田さん

牛舎の奥にある山には、入社初日に登ったそう。

ちだ

入社前に感じたベンチャー的な気質というのは感じますか?
とにかく、意見が言いやすいですし、良いことであればすぐに動いてもらえるので働くモチベーションは上がりますね。

梅田さん

梅田さんが、夜間のトラクター運転時に暗くて危ないので共有のヘッドライト(頭に装着するライト)があったらいいのではとLINE WORKS(ラインワークス)(※)で提案したところ、次の日には備え付けられていたということがあったそう。

※ メイプルファームでは従業員間のコミュニケーションツールとして3年前からLINE WORKS(ビジネス版のLINE)を利用している。

新人でも提案しやすい雰囲気で、かつ提案したらすぐに行動に移してくれる。
自らの職場環境の改善にもつながるので、これからも積極的に提案していきたいと梅田さんは言います。

採用ページでピンときた「ワクワク感」みたいなものを信じて良かったなと思ってます。
これからも一人前になれるように頑張っていきたいです。

梅田さん

  • 提案のしやすさ
  • 具体的な行動に移してくれる

この辺が、従業員のモチベーションが高く保たれる秘密かもしれません。

農学部出身の新卒女子が語る、メイプルファームの働きがいとは?

佐山美優(さやま・みゆ)さん。

青森県出身の24歳。農学部応用動物科学科卒業。
2019年新卒入社。1年目。

就職活動の説明会で、中規模の牧場ながら「いろんな業務に携われる」という点に興味を持ったのがきっかけです。

佐山さん

朝霧メイプルファームの特徴として、「2年間で酪農に関わる全ての業務を行う」というジョブローテーション制度を採用しています。

中には、削蹄(さくてい)を扱うなど技術的に難しい業務や、フォークリフトの運転など免許が必要な業務も含まれるそうです。
これらの技術を取得するための費用、免許取得の費用は会社が負担してくれるそう。

また、各業務を誰がおこなっても同じ結果が得られるよう200以上のマニュアルが存在します。

こちらは佐山さんと同期の女性が仕事をしている様子。

大きい牧場だと、搾乳なら搾乳だけなど、ある程度の業務範囲のプロフェッショナルになるという働き方もあるんですが、私はいろいろな業務を経験してスキルアップしたかったんです。

佐山さん

ちだ

実際に働いてみて、どうだったでしょうか。
いろいろやらせてもらえているので、自分が思っていたように働けています。自分でマニュアルを作ったりということもあるので、成長できているかな、と実感することもあって満足しています。
また、失敗した時に人を責めずに行動を見直すきっかけにするという文化もいいかなと思います。

佐山さん

酪農に限らず、仕事が属人化していると何かミスが発生した時に「ミスをした人間が悪い」となりがちです。
しかし、佐山さんは「ミスをしたことを次に生かせるチャンスとしてみんなが捉えてくれる」という会社の文化を教えてくれました。

  • 誰でもいろんな業務ができる工夫
  • ミスがあったらミスをした人を責めず、行動を変えるキッカケに

こういった点が、人が成長し、継続して働きたくなる要素かもしれません。

大卒4年目。酪農をやりながら人事も? 忙しいのにいろんな業務ができるヒケツは?

長谷川育江(はせがわ・いくえ)さん。

富士宮市出身で獣医学部卒業。
就職を機に地元へ戻るため、動物に携わる仕事を探していたところでメイプルファームへの就職となった。入社して4年目。

現場の仕事に加えて、就職シーズンは採用活動にも関わってます。インスタなどの発信業務も担当しています。

長谷川さん

採用担当の目線から、朝霧メイプルファームに応募が集まるワケを聞いてみました。

入社2年目、3年くらい前から本格的な採用活動を始めたんです。
今までは丸山さんしか発信業務をしていませんでした。
そこで、
  • 発信業務
  • 会社説明会への出席

など外へ出ていく機会を設けてもらって、より積極的に情報発信できるようになりました。それがいい結果につながった要因かなと思います。

長谷川さん

特に、就活セミナーなどこれまで経営者しか行かなかった(行けなかった)ものに現場の従業員が出て、リアルな話をすることが大事だったのではと言います。

確かに自分が就職・転職活動をしている時には、社長のきれいなお話、よりも現場社員のぶっちゃけトークの方が興味深かったものです。

でも、酪農の仕事をしていると忙しくて人手も不足しがちだから、現場の従業員が外に出るってハードル高いのではないでしょうか?

まさか、休日出勤?!

まさか! 休日出勤ではないですよ。業務を効率化して、多少余裕が出た分を違う仕事に回しているんです。
メイプルファームには業務のマニュアルが200以上あるんですが、それらは年に何回も改訂が入るんです。
つい最近も、搾乳のやり方を見直すことで作業時間が20分ほど短くなりました。
従業員全体がどうやったら早く、楽に仕事を終えられるかという意識を持っているので仕事は年々効率化されていますね。

長谷川さん

ただマニュアルを作るだけではなく、それをどんどん改善して仕事の時間を短くする。
それによってできた余裕で新しい仕事をする。

忙しい酪農業界にありながらも、現場の人間が採用活動に時間を割けるのは日々の積み重ねがあったからなんですね。

現場の仕事をしながらも、人事担当として志望者の方々に現場の生の声や雰囲気を伝えられる、そしてそこに魅力を感じてもらえるというのはやりがいを感じますね。

長谷川さん

  • みんなで工夫して、仕事を早く終わらせる。
  • 一人一人の負担が少し軽くなって、新しい仕事に取り組む余裕が生まれる。

とても良い循環が生まれているんですね。
これを聞いたら確かに「ここで働きたい!」ってなるかも。

「楽」に働こうと効率化するからこそ、仕事が楽しめる。

応募倍率40倍を超えるメイプルファーム、その秘密が新入社員と採用担当社員双方のお話を聞くことでなんとなくわかってきました。

それは、

「楽」をしたい

という共通意識から生まれる業務効率化だと、ちだは考えます。

「楽」、は決して「手を抜くこと」ではありません。
「楽しく働くこと」だと感じました。

楽しく働くためには、

  • きちんと休める
  • 残業しない

などの要素はもちろん、仕事を通じて

  • 自己実現につながる
  • 成長している実感を得られる

といった点も重要です。

朝霧メイプルファームでは、取締役として改善を主導した丸山さんをはじめ全ての従業員がこれらを重要視しています。
そしてそれを実現する具体的な手段が、マニュアルの作成・改善であり、意見を言いやすい雰囲気の醸成などではないでしょうか。

朝霧メイプルファームに応募が殺到し、人材が定着するのには理由がありました。

楽しく働くための努力の積み重ね、工夫が作り上げる魅力的な職場環境。これこそが理由だったんですね!

この考え方って酪農だけではなく農業の他の分野にも通じることだと思います。
本当に勉強になりました!

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牛が大好きな新人酪農スタッフ“ウシカワ”の、牛に囲まれて働く日常。牛のお世話に悪戦苦闘しながら一人前に成長していくウシカワと、魅力的な牧場の牛たち。‟牛に関わる仕事”とは? ウシカワと共に働く人々を描きます。

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