ノウフクJASで農産物に社会的価値を! SDGsにつながる農福連携規格

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ノウフクJASで農産物に社会的価値を! SDGsにつながる農福連携規格

ノウフクJASで農産物に社会的価値を! SDGsにつながる農福連携規格
最終更新日:2020年03月23日

2019年新たなJAS制度として制定され認証が始まった「ノウフクJAS」は、「障害者が生産行程に携わった食品」の規格。農福連携を推進する取り組みの一環として、農業分野での障害者の仕事の確保・創出につながる動きだ。
このノウフクJASの提案をし、制定後は登録認証機関も務める一般社団法人日本基金(にっぽんききん)の代表理事、國松繁樹(くにまつ・しげき)さんに、ノウフクJASの意義と今後の展望について聞いた。

JAS法の見直しによって「生まれたノウフクJAS」

2017年6月に改正および見直しが行われたJAS(日本農林規格)。改正以前は農産物や加工品の「モノとしての品質」のみを対象としていたが、改正後は「生産過程」や「取扱方法」にも対象を拡大した。農林水産省としては、輸出力を強化するために、日本の農案物の強みを訴求できるJAS規格を戦略的に活用していこうという狙いがある。
一方で「農福連携」といった農産物の「品質ではない価値」を可視化することに、この改正は好機となった。これまでは品種や栽培方法、味といった客観的に評価しやすい農産物の品質の面だけが対象になっていたが、「生産方法」や「取り扱い方法」も規格として認められるようになったからだ。
こうした制度の変更も後押しとなり、2019年3月19日に新たなJAS制度として制定され、同年11月から認証が始まった「ノウフクJAS」は、「障害者が生産行程に携わった食品」の規格として広がりつつある。
今回のノウフクJASの創設の提案から関わっているのが、日本基金代表理事の國松繁樹さん。提案の理由や背景、その必要性や効果、これからの農福連携の推進への貢献の可能性について話を聞いた。


國松繫樹さん
一般社団法人日本基金代表理事。一般社団法人日本農福連携協会理事。企業のブランディング、マーケティング、デザインに携わってきた30年以上のキャリアを生かし、ノウフクプロジェクト等、見えない価値を可視化する社会デザインに取り組んでいる。

多様であることを規格する「ノウフクJAS」

――今回始まったノウフクJASはこれまでになかったタイプのJASですが、提案に至ったのはなぜなのでしょうか。

2018年、日本基金は「農福連携の効果と課題に関する調査」を行い、農福連携が広まりつつあることが客観的に示されました。

農福連携に取り組む農業者の農地面積。4年間で25%増加している(画像提供:日本基金)

農福連携に取り組む福祉事業所の農地面積。5年間で約30%増加している(画像提供:日本基金)

しかし、調査以前から福祉作業所などで作った農産物や食品などの販路に困るという話をよく聞いていました。農産物の生産に取り組んだとしても販路がなければ、事業として続けるのは難しい。私のもともとの専門が販売促進ということもあり、販路を確保するにはどうすればいいかと考えるようになりました。

農福連携は障害者の農業を通じての社会参加や、地域の農業の維持など、共生型社会を実現する取り組みです。しかし「農福連携で作られた商品」には定義がなく、消費者に訴求できませんでした。それを国の規格として消費者に分かりやすくし、エシカル(倫理的)な商品として訴求できればと。まさに「売り手良し、買い手よし、世間良し」の三方良しの仕組みだと考えています。

――農福連携という社会的な価値をブランド化するということですね。

はい。農産物のブランディングは、リンゴで言えば品種の「ふじ」といったブランド、産地である青森産や長野産というブランド、有機栽培といった栽培方法のブランドが中心です。
また、通常の規格ではGAPのように効率性や生産性を高める取り組みを評価します。
しかし、ノウフクJASでは効率性や生産性は求められません。

――それで“規格”とすることは難しいのでは?

そうですね。そもそも規格とは、誰が見ても同じであるように規格通りに価値づけするためのものです。でも人間は多様であり、同じ人など一人もいません。
ノウフクJASは「多様であること」を規格化するJASであり、それを国の規格に入れていただいたということに私たちは意義を感じています。
また、昨年の9月には「ノウフクフォーラム2019 農福連携×SDGs」を開催しました。農業や福祉分野以外の多数の企業にも参加していただき、農福連携とSDGs(持続可能な開発目標)との関連についてアピールする機会になりました。ノウフクJASはSDGsの6つの目標の達成に貢献できるという点でも価値があります。

ノウフクJASが貢献するSDGsの6つの目標とは

3、全ての人に健康と福祉を
8、働きがいも 経済成長も
10、人や国の不平等を無くそう
12、作る責任 つかう責任
15、陸の豊かさも守ろう
17、パートナーシップで目標を達成しよう

少しでも障害者がかかわった農産物を評価したい

――具体的には、どのようなものにノウフクJASマークが付与されるのでしょうか。

「障害者が生産行程に携わった食品」がノウフクJASの対象です。食品には、生鮮品と加工品の両方が含まれます。
生産行程とは農産物等の栽培や収穫作業に限らず、袋詰めや箱詰めといった作業も入ります。「どこまでを生産行程とするか」についてはかなり議論があったのですが、袋詰めや箱詰めも彼らの大事な仕事ですし、その行程がなければ農産物は流通しません。広く彼らの働きの場を評価するためにも、それらも生産行程としました。

ノウフクJASの認証を受けているいずみエコロジーファームでの野菜の袋詰めの様子(画像提供:日本基金)

――認証の対象には「生産行程管理者」と「小分け業者」がありますが、この違いを教えてください。

まず「生産行程管理者」ですが、実際に農福連携で農作物等や加工品を生産している事業者と農福連携で生産された農作物等を原料に加工品を生産している事業者が対象となります。例えば、生産行程管理者の認証がなされた事業者が農福連携で生産したイチゴにはノウフクJASのマークが付けられますし、その事業者自身がそのイチゴをジャムに加工すれば、それにも当然ノウフクJASがつけられます。農福連携で生産された農作物等を原料に加工品を生産している事業者については、ノウフクJASのマークの付いた農産物等を仕入れてこれを原料に加工食品を生産する加工業者が生産行程管理者となります。
一方「小分け業者」の場合は、流通業者等が箱などにノウフクJASのマークの付いた農産物等を仕入れ、これを小分けして販売する場合には、改めてノウフクJASマークを付け直す必要がありますので、こうした小分けを行う業者が小分け業者となります。

――加工業者がノウフクJASのイチゴとそうではないイチゴを混ぜてジャムを作った場合はどうですか?

その場合は、ノウフクJASのイチゴの割合を示せば大丈夫です。たとえ少しでも農福連携にかかわった商品を評価することで、農福連携の普及を後押しするという意味もあるからです。

――つまりは、様々な食品メーカーがノウフクJASの加工業者として生産行程管理者の認証を取得し、ノウフクJASの農産物を原料として仕入れて食品加工することで、ノウフクJASの商品が世の中に多く流通する可能性があるということですね。

はい、そうなればいいなと。企業にはCSR(企業の社会的責任)やCSV(共通価値の創造)といった面でメリットがあるでしょう。また、これからはそうした社会的な活動も投資判断の指標となっていくと思います。

ノウフクJASのもたらすもの

――もうすでに10団体が生産行程管理者としてノウフクJASの認証を受けていますが(2020年3月現在)、その効果について、農福連携の現場から反応はありますか?

最初に認証した団体の一つ、長野の株式会社ウィズファームさんからは、「地元の松川町営の温泉施設に、町内のリンゴ農家で唯一、商品を置けるようになった」と報告がありました。
松川町はリンゴ農家が多いため、取り扱いに不公平が出ないよう、リンゴの町なのに町営の施設ではリンゴを売らなかったそうなんです。でも「ノウフクJAS」という社会貢献度の高いリンゴだということで、置いてもらえるようになったということでした。
また、東京の銀座にある長野県のアンテナショップでは、ノウフクJASリンゴは1個350円で販売されています。

ウィズファームのみなさん(画像提供:日本基金)

――ノウフクJASが付加価値となり、リンゴの売上が増えたということですね。
このようにノウフクJASによって農産物が高く売れるようになれば、農福連携に関わる障害者の皆さんの工賃の向上にもつながるのでは?

はい。それも狙いの一つでした。農福連携は、障害者の工賃を少しでも上げることも目標としています。昨年11月に認証を受けた就労支援事業所「さんさん山城」では、来年度は2割ほど工賃を上げられそうだとおっしゃっていました。もちろん、JASという国の規格で評価されたものを作っているという誇りも彼らのモチベーションになり、いっそう仕事に力が入っているそうですよ。

さんさん山城の皆さんの農作業の様子(画像提供:日本基金)

――働きが工賃に反映され自分たちがつくったものが評価されるとことにつながる――。さらにこうした商品の国際的な評価も上がっていくと良いですね。

はい。農福連携の商品の規格は世界でも例がないと聞いています。世界的にエシカル消費の動きは高まっていますから、ノウフクJASの商品の国際競争力も高まると思います。
オリンピック・パラリンピックの選手村の食材の調達に関しても、「持続可能性に配慮した調達コード」に該当する食材として評価していただけました。今回の東京オリンピック・パラリンピックに納入するのには間に合わなかったのですが、私たちにとっては農福連携の農産物が認められたという「レガシー」ですね。

さらに広がるノウフクJAS

――現在は障害者が生産行程に携わった農産物やその加工品が対象のノウフクJASですが、その対象が広がる可能性は?

もちろんあります。「農」の範囲を広げて、農業に限らず水産業や林業の分野の食品にも広げていきたいと思っています。また、食品に限らず農福連携で作られた商品、例えば花などにも広げたいです。
また「福」の部分も広げて、現在は障害者が携わったもののみを対象としているのですが、これを触法者や高齢者といった方々が携わったものにも広げていけたらと思っています。
また、農福連携でさらに「栽培期間中無農薬」などの農産物であれば、別途表示できるような仕組みもあればと思います。このようなこれからの多様な広がりを包括していけるよう「ノウフク」というカタカナの表記を使用しています。

――ノウフクJASのこれからの課題は何でしょうか?

なんといっても普及啓発と認知拡大です。
3月13日に農福連携等応援コンソーシアムが発足し、経済団体などにもご参加いただいて農福連携をより世に広めていこうという動きが始まりました。今年「ノウフクアワード」で優れた事例なども表彰し、もっと農福連携をアピールする機会とする予定です。
このコンソーシアムには一般企業も参加していただけるので、ぜひ多くの企業の皆さんにご賛同いただき、一緒に農福連携を盛り上げていただければと思います。

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