実践しやすく効果バツグン! 農家直伝の事故対策

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実践しやすく効果バツグン! 農家直伝の事故対策

実践しやすく効果バツグン! 農家直伝の事故対策
最終更新日:2020年03月26日

危ないと注意していても起こってしまう農作業事故やヒヤリハット体験。農業現場で事故件数が減らない理由の一つには、農家にとって事故対策は手間のかかることで、しかも作業効率が落ちる、収益につながらない……など農業経営のメリットが感じられないからではないでしょうか。鹿児島県の大吉(だいきち)農園では、事故対策によってスタッフの職場環境が改善され、コストの削減や作業効率のアップにもつながっています。今回は大吉農園の大吉枝美(おおよし・えみ)さんに、どの農家も簡単に実践ができ、経営も改善する事故対策を聞きました。


【大吉枝美さん プロフィール】
看護師として働いていたが、夫の就農を機に農家に転身。地元の鹿児島県指宿市にて女性スタッフ10人とともにキャベツ22ヘクタールを生産する。JGAP指導員の資格を持ち、女性目線のきめ細かさに配慮した快適で効率の良い職場環境づくりを行うとともに、地域で女性が活躍できる農業を目指している。

ヒヤっとした! 農作業中の出来事

──農作業中にヒヤっとした出来事ってありますか?

一番ヒヤっとしたのは、トラクターを運転していた時ですね。夕方にあともう一枚できるかな〜と思って、入口が急な下り坂になっている畑に入ろうとしたら、一瞬トラクターが傾いてうわっと思いました。それですぐに後ろに下がって、もう無理です!と思って帰りましたね。まだトラクターの経験が浅い時期だったので、どの角度で入ったらいいかとか分からなかったんですよね。それで怖い思いを一度したので、自分でできる範囲のことしかやらなくなりました。

──それは怖いですね。大吉農園さんでは女性スタッフが多いそうですね。

はい、スタッフの多くは女性で、30代から80代まで10人ほど在籍しています。採用してまず最初にやったことは、フェースカバーを買い揃えること。顔に傷をつけてはいけませんから。特に草刈り機の操作に慣れないうちは、小石が跳ねてきて痛いし、怖いんです。経験上、目を守るゴーグルだけでは足りないと感じました。その他の農作業でも、不安感をなくし、万が一体に当たっても痛くないよう、道具でカバーできるものはなんでも試して、良ければみんなの分を買って揃えていきました。

すぐにできて効果的な事故対策ポイント3選!

積極的に職場の環境改善に取り組む大吉さんに、誰でもすぐに取り組めそうで、特に効果的な事故対策を3つ教えてもらいました。

対策①機械が旋回するスペースを広めにとる

大吉さんのワンポイントアドバイス
私は空間把握能力に疎いところがあるので、トラクターや機械を運転している時に、どれくらいのスペースが必要か分からない時があります。
例えば手押しの移植機で旋回する時に、機体だけでなく作業者の体も回りきれるように、畑の周囲の辺には全て2.4メートルの「旋回スペース」を設けています。また、畑の角でも旋回しやすいように、直角ではなく丸くなるように野菜を植え付けています。収量を考えると畑のギリギリまで作物を植えたくなるのですが、ギリギリまで植えてしまうと野菜を踏みつぶしたくないという思いから土手のギリギリのところで旋回してしまいがちです。私自身、トラクターで怖い思いをしたので、周囲にスペースをとることをルール化しています。

対策②障害物にポールを立てる

大吉さんのワンポイントアドバイス
まずは畑の図面を持って、スタッフ全員で畑を見て回ります。「ここは側溝があるので注意した方がいいですね」とか、「この土手は急傾斜で危ないですね」など、気になった場所を書き込んで、後で対策を立てます。例えば、側溝や境界杭などの障害物が草に埋もれて見えにくい場所で草刈り機を使うと、障害物が当たって刃が欠けて破片が飛んでくる危険性があります。この対策として赤いインクを塗ったポールを立てたことで、当たって刃が欠けるという事故が大幅に減りました。

対策③農具は一人一台制で紛失防止!


大吉さんのワンポイントアドバイス
収穫や剪定(せんてい)、ひもを切るときに使うような刃物は、うっかり落としたり、出荷する箱の中に混入してしまうと危険です。そのため本数を毎日確認して管理しています。ちょっとした休憩の際も置きっぱなしにしないよう、収納箱を用意し必ず指定の場所に置くことをルールにしています。
キャベツの収穫時に使用する包丁はスタッフ全員に用意し、自分の名前を書いてもらいマイ包丁を使ってもらっています。草刈り機も一人一台ずつ支給し、フェースカバー、サロペットとセットで個人が管理します。必ず自分の道具を使い、使い終わったあとはメンテナンスをして所定の場所に戻すところまでがスタッフの責任。スタッフも自分の道具としてとても大事に使ってくれますし、メンテナンスや片付けの時間まで考えて農作業を行うようになり、効率もアップしました。

草刈り機には購入した日付と持ち主が分かるように記入している

スタッフが働きやすいルールの決め方は?

──スタッフ間でルールをしっかり決めておくことが安全対策として大切だと感じました。このルールはどのように決めていますか?

ルールはみんなで話し合って決めます。スタッフミーティングの時に、各自で課題を出して話し合って決めることが多いです。私が独断で決めて指示を出すより、皆で話し合って決めたルールの方が長続きします。一人一人の意見を尊重することが大切です。

また、私たちの農園では起きていない事故でも、事例からルールや対策を考えることもあります。
例えば草刈り機を使用している際、人が近づいていることに気が付かず、相手にけがをさせる事故。私たちの現場でも起こり得る事故なので、休憩に入る時に声をかける際も、絶対に近づかないことをルールにしました。また、道具の収納場所など細かい点も、どういった配置なら働きやすいかを考えてもらいながら、スタッフに全て決めてもらいました。

──スタッフが決めることで、実現可能で持続できるルールになっているんですね。事故対策は、面倒で作業効率が落ちてしまうイメージがありましたが、細かいルールまで決めておくことでルーティン業務が増え、大事な農作業に集中できそうです。

コスト削減や作業の効率化にもつながっている!

──他にも事故対策を行うことでの意外なメリットはありますか?

まずは草刈り機の刃が欠けることが少なくなったので、刃の交換回数が3分の1以下に減りました。側溝に当ててしまったら、1日でダメになってしまうこともありますから。また、道具や機械の掃除やメンテナンスも毎回行うので、故障が少なくなりました。作業の途中で機械が壊れてしまって何もできなくなってしまうという無駄もなくなりました。売り上げに直結することはありませんが、私はこれらの取り組みを踏まえて2016年にJGAPを取得しました。客観的な信頼指標もできて、取引先が増えたので、間接的ではありますが、利益につながっています。

──事故対策をすると働きやすい環境作りやコスト削減、作業効率のアップにもつながって一石三鳥ですね! お話を聞いて、事故対策へのイメージがガラッと変わりました。

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