臨時休校で牛乳が余るのはなぜ? 知っておきたい牛乳流通の仕組み。

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臨時休校で牛乳が余るのはなぜ? 知っておきたい牛乳流通の仕組み。

臨時休校で牛乳が余るのはなぜ? 知っておきたい牛乳流通の仕組み。
最終更新日:2020年04月09日

伊豆の国市地域おこし協力隊、農家志し中のちだです。新型コロナウイルスの影響で突然小中学校が休校になる、という事態が発生しました。その際に「学校給食が中止になり牛乳が余ってしまった!」という問題が起こりました。しかし、毎年夏休みや冬休みはあります。その時には余らないのに、なぜ急な休校になると余ってしまうのでしょうか。今回は、意外と知らない?牛乳の流通の仕組みを乳業メーカーに行って聞いてきました。

牛乳って、どうやって牧場からスーパーへ行くの? 牛乳流通の基本

今回取材したのは、静岡県東部地域で「丹那牛乳」を製造している静岡県田方郡函南(かんなみ)町の函南東部農業協同組合(以下、丹那牛乳)です。

1948(昭和23)年に地域の酪農家さんたちの「自分たちの牛乳を自分たちで届けたい」という思いから設立。現在は函南町を中心に3町5市の牛乳を集荷しています。1日あたりの生乳処理量は50トンほど。牛乳はもちろん、ヨーグルトやバターなどの加工品も製造販売しています。主な出荷先は、スーパー、ホテルや病院、そして学校給食。学校給食向けには毎日11トン出荷しています。

■お話を聞いた方
函南東部農業協同組合営業部営業課課長
向笠正弘(むかさ・まさひろ)さん

牛乳の流通って、細かーく話すとちょっと複雑なんです。まずは流通の基本ということなので、シンプルにお話ししますね。
最初に牛乳の流通を「1日単位」と「流通全体」という2つの側面から確認しましょう。

向笠さん

牛乳は、毎日作られる!

ここでのポイントは「牛は毎日お乳を出す」ということです。

向笠さん

恥ずかしながら私ちだ、酪農家さんへの取材をするまでこの「牛は毎日乳を出す」という事実を知りませんでした。
乳を搾らないと、牛は乳房炎という病気になり最悪死んでしまうということもあります。

毎日搾られる生乳。酪農家さんは毎日搾乳し、丹那牛乳などの農協が1日1回または2回、各牧場を回って集荷します。
集荷された生乳は、細菌検査、加熱殺菌などを経てパック詰めされ、私たちが目にする牛乳になります。

さらにポイントとして、牛から搾った「生乳」は傷みやすいので何日も置いておけないということがあります。
生乳は毎日作られ、日持ちがしないので私たち丹那牛乳も毎日集荷して毎日牛乳を製造しているんです。

向笠さん

牛乳流通全体を確認!

毎日製造される牛乳ですが、流通全体の仕組みはどうなっているのでしょうか。

ここでポイントになるのは「指定生乳生産者団体」という組織の存在です。
酪農家さんはこの団体に販売を委託し、乳業メーカーはこの団体から生乳を購入する、という流れになります。

向笠さん

この指定生乳生産者団体、

  • 酪農家個人で乳業メーカーに交渉、販売するのではなく、まとまることで価格交渉力をつける
  • 生産と需要のバランスをとって生乳の廃棄をなくす
  • といった機能を持たせることで酪農家さんを守り合理的な流通を行うために1966年から登場したそうです。

私たちは農協でもありかつ乳業メーカーでもあります。
集荷も製造も自分たちでします。みなさんから見ると、私たちが酪農家さんから直接生乳を購入しているように感じるかもしれませんが、関東生乳販売農業協同組合連合会(※)という生産者団体を通して購入しているんです。

向笠さん

※ 関東の指定生乳生産者団体。生産者団体は地方ごとに組織され、全国で10の団体がある。

なぜ、急な休校だと牛乳が余るの?

基本的な牛乳流通の仕組みはわかりました。
では、なぜ急な休校だと牛乳が余ってしまうのでしょうか。通常の夏休みなどでは余らないのに。

まず、通常時の話をします。我々丹那牛乳のような乳業メーカーは、牛乳以外にもバターやチーズ、全粉乳などの乳製品を製造しています。これらの加工品は牛乳よりも賞味期限が長くなります。

向笠さん

ちだ

確かに、丹那牛乳さんの商品で言うと賞味期限は牛乳が10日(※)なのに対してチーズは35日(※)、バターは150日、全粉乳に至っては365日ですね。

※ 一部商品を除く。

パン、菓子製造に使われる「全粉乳」は脱脂粉乳とは違い、牛乳そのものを粉にしたもの。25キロの粉を作るのに200リットル以上の牛乳が必要。

通常時は、長期休みのスケジュールが事前にわかっているのでこういった加工品の製造量を増やします。

向笠さん

ちだ

生乳は毎日入荷するので、加工品の製造量を加減することで生乳が無駄にならないようバランスをとっているんですね。では、休校になってもその加工品をたくさん作れば解決しませんか?
工場での製造も、年間のコストや需要のバランスを考えて稼働スケジュールを組んでるんです。なので、急に工場の稼働率を上げるというのも難しいんです。

向笠さん

しかし、2020年3月13日時点で丹那牛乳では学校給食休止に対応して特に全粉乳の製造ラインを24時間稼働にしているとのこと。
これによって丹那牛乳では牛乳の在庫が過剰になる、という事態は避けられているそう。一方で通常とは異なる工場の24時間稼働をいつまで続ければいいのかわからないことによる製造現場の疲弊は日々積もっていて、やはり事態の早急収束が望まれています。

牛乳を飲んでいただけると、加工に回す必要がなくなるので丹那牛乳としても消費者の方には牛乳を飲んでいただきたいですね。
もちろん、酪農家さんにとっても牛乳を飲んでもらうほうがいいんですよ。

向笠さん

伊豆の原木しいたけバター焼きが大好きなちだは疑問に思いました。

牛乳よりもバターの方が日持ちするんだから、普段からたくさんバター作れば良くね?と。

しかし、ここにも知らなかった事実があったのです。

丹那牛乳が作っているバター。超うまい。

「牛乳を飲んで酪農家さんを応援」は合理的だった

ごくシンプルに言うと、「牛乳として使われた生乳の価格」と「加工品に使われた生乳の価格」は違うんです。

向笠さん

ちだが調べたところによると、生乳の価格は各指定団体と各乳業メーカーとの間で行われる価格交渉で「1年間の価格」が決まります。この価格は、同じ指定団体から出荷される牛乳でも、買い手の乳業メーカーとの条件等によって異なるため、公表されていません。

価格交渉の際「牛乳用生乳」と「加工品用生乳」とでそれぞれ価格が決められます。

そしてこの価格差、かなり大きいことが想定されます。例えば、100グラムのバターを作るのに約2リットルの牛乳が必要です。

スーパーによく置いてあるバターは200グラムなので、使われる牛乳は約4リットルです。

一方、ちだの近所のスーパーでは1リットル入りの牛乳が200円で売られていました。

もし、バターを牛乳用の生乳で作ると販売価格は200円×4リットル=800円以上になっちゃいますね。

ちだ

ちょっと考えても、飲料向けの生乳の価格が高いということがイメージできますね。あれ? でも、酪農家さんは出荷するタイミングでは自分の生乳が「牛乳に使われるのか、加工に使われるのか」ってわからないですよね?
そうなんです。通常時は年間の牛乳と加工品の製造量はある程度決まっているので酪農家さんも売り上げのメドが立てられます。でも、今回のような急な出来事があると酪農家さんも不安になってしまいます。
なので、牛乳を飲んでいただくのが我々にとっても酪農家さんにとっても一番いいんです。

向笠さん

加工に回すのも限界あり。牛乳をたくさん飲んで酪農家さんを応援しよう!

毎日生産される生乳。
牛を守るため、酪農家さんは不安に駆られながらも牛と向き合っています。

乳業メーカーは、牛と向き合う酪農家さんを守るため、酪農家さんの利益が最大化されるようさまざまな工夫をしていました。

学校給食がなくなったことで、乳業メーカーが加工品の増産をするのにも限界があります。
また、生乳が加工品に多く回ることで酪農家さんの収入は減少してしまいます。

いつもより、少しだけでも多く、牛乳を飲んでみませんか?

地元の牛乳、飲んでみませんか?

飲んで、応援しましょう!

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