“クリーントイレ”で人手確保! 収穫アルバイトの農作業環境改善に効果

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“クリーントイレ”で人手確保! 収穫アルバイトの農作業環境改善に効果

“クリーントイレ”で人手確保! 収穫アルバイトの農作業環境改善に効果
最終更新日:2020年04月23日

四国の西南部に位置し、愛媛みかん栽培発祥の地として知られる宇和島市吉田町。海と陸地が複雑に入り組んだリアス式海岸の山間に沿って柑橘(かんきつ)畑が続く、普段は静かなこの地域ですが、柑橘の収穫シーズンには、全国各地から大勢の期間アルバイトが集まり、周辺のミカン山は一気に人でにぎわいます。大勢のスタッフが快適に農作業ができるよう、吉田町では「みんなのクリーントイレ」として農繁期にミカン山にレンタルトイレを設置する試みを2017年より始め、大変好評を得ています。

収穫中のミカン山で活躍のトイレ

猫の手も借りたい秋~冬の収穫時期、柑橘農家の大切な戦力になってくれるのが全国から集まる期間作業員、すなわちアルバイトの人たちです。都会から来る若い女性も多く、アルバイトの人たちが安心して収穫作業に打ち込めるように、宇和島市吉田町のミカン畑には、農繁期限定でレンタルトイレが設置されます。

2019年度はJAえひめ南設置分が4カ所、宇和島地区農業改良普及事業推進協議会(以下、推進協議会)の設置分が3カ所、合わせて7カ所のトイレが設置されました。

上資料のピンク色にマークされたJAえひめ南設置のトイレは2019年度は8月20日~12月、黄色マークの推進協議会設置のトイレは10月下旬から12月下旬にかけて設置されており、誰でも利用することができます。

中で着替えもでき、洋式で水洗という「みんなのクリーントイレ」。酒井農園設置(黄色マーク・法花津2ブロック)のトイレをのぞかせていただきました。

山に設置してある簡易トイレというと少々怖いものを想像してしまいますが、内部はこのようにキレイ!

吉田町のミカン山に設置されている7カ所のトイレには各々管理者が任命されており、こまめに掃除が行われています。そのおかげでいつも清潔に保たれ、気持ちよく利用することができるんですね。

水洗式といっても水道がひかれているわけではないので、ポリタンクの水を使用しています。水洗トイレの命であるこの水。これが補給されていないと大変なことになってしまうので、こちらも不便がないように管理者が日々チェックしているそうです。

トイレ設置の背景、トイレがないという困りごと

こちらが先ほどのトイレをキレイに保っている、酒井農園の酒井いせよさん。酒井さんのところでも、毎年大勢のアルバイトを雇ってミカンの収穫を行っています。

「今の子は、女の子だけじゃなく男の子だってトイレが近くにない園地は嫌がりますね。いい働き手の方に来てもらおうと思ったらやっぱりトイレ環境は整えておかないと。
近頃は初冬になっても昼間は暑いですし、トイレが心配で水も飲まずに作業して脱水症状になったりしたら大変です。以前は車で往復20分もかけてわざわざ家まで戻らなきゃならなかったから、畑にトイレを設置してもらってホント助かってますよ。
時間を有効に使うためにも、アルバイトの人に安心して作業に打ち込んでもらうためにも、きれいなトイレに自由に行ける環境はありがたいですね」(酒井さん)

そもそも、ミカン畑にトイレを設置する運びとなったのは、柑橘指導農業士でもある酒井さんが、2016年にある若手の農業女子の会に向けて講演を行った時に「畑にトイレが欲しい」との声があがったのがきっかけなのだとか。

その後、酒井さんを中心に、農業に従事する女性たちが「快適な農作業環境づくり」のスローガンのもとに宇和島市やJAに働きかけ始め、モデルトイレとして「みんなのクリーントイレ」が導入されることになりました。

酒井さんの園地では以前はこの場所にトイレが置かれていたが、2018年の西日本豪雨災害による大規模な土砂崩れのため現在の場所に移動。災害以前は樹園地のトイレ設置の必要性の意識が低い男性農業者が多かったが、後片付けと復興のために多くのボランティアや期間作業員が園地に入って活動したことで、労働環境改善への意識が高まったという

トイレ設置場所の選定理由や事情

高さ239センチ、重さ約250キロのトイレを設置するためには、クレーンがついた3トンユニック車が入れる平らな場所がなければなりません。それに複数の農家が使える分かりやすい場所でなければならず、ポリタンクに供給できる水が近くに豊富にあるところであり、と選定していくと、トイレが設置できる場所は限られてきてしまうのだそうです。

宇和島地区農業改良普及事業推進協議会発行の資料より

また、こまめな掃除が必要なため、しっかりした管理者を決めておかなければならず、推進協議会では管理者と場所とを合わせて候補地を選び、地権者と管理者の両方から承諾が得られた場所にトイレを設置しています。

「ユニック車や汲み取り車が入れる広めの農道がついていて、水道が近くにある平らで分かりやすい場所。それはここみたいなスプリンクラー制御室の隣がピッタリなんですよ。スプリンクラー制御室なら、どんな山奥でも柑橘畑があるところでしたら必ずありますからね。ですが制御室の代表者が高齢の男性だったりすると、トイレの必要性の意識が低くて許可がもらえなかったりします。みなさんに満足してもらえるように場所を選ぶのって、実はなかなか難しいんですよ」と言うのは、推進協議会事務局の小笠原さん。

小笠原さんが水を補給していた奥浦地区のスプリンクラー制御室敷地内のトイレ。水やりが必須な柑橘栽培には欠かせないスプリンクラー制御室は吉田町内には数十カ所にあるとのこと。だが、昭和の農業環境基準で建てられているため建物内にトイレ設備はない

利用状況と今後のトイレ設置について

利用状況を把握するため、トイレ内部には使用簿兼アンケートを置き、利用者に記入してもらうシステムになっています。

2018年度に推進協議会が設置したトイレ3カ所のうち、最も使用回数が高かったものは、集落から最も離れた場所に設置されたトイレでした。集落から約2キロ離れた場所に置かれたそのトイレは、他2カ所のものより約2倍の利用者数があり、近くの園地のアルバイトの募集にもかなりの効果があったとのこと。

トイレ1台の設置費用は、運搬・設置費用が約10万円、1日あたりのレンタル料が1500円ですが、アルバイトの定着率や作業効率を考えると費用対効果は高いといえそうです。

宇和島市吉田町の「みんなのクリーントイレ」は、快適な農作業環境実現のためのモデルトイレとして期間限定で2019年度まではレンタルで設置されていましたが、今後はレンタルにするか据え付けにするか利用者の声を聞いて決めていく予定です。

取材協力:南予地方局産業振興課 地域農業育成室

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