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働きながら農業を勉強したい! 社会人向け農業学校の種類と研修制度を解説

働きながら農業を勉強したい! 社会人向け農業学校の種類と研修制度を解説

仕事をしながら新規就農を目指す人にとって、農業知識や技術をどう身につけるかは大きな課題の一つです。そもそも、何から学べばいいのか、どこで学べばよいのかもわからない、という人も少なくないでしょう。しかし、今のライフスタイルをできる限り変えずに、少しずつ農業を学んでいく手段があります。本記事では、社会人が働きながら農業を勉強するためには、どのような方法があるのかをまとめました。自分に合った方法で農業を学びたいと考えている人は、ぜひ参考にしてください。

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社会人が農業を学ぶ方法には何がある? さまざまなパターンを検討しよう

農業を学ぶ場として、一番に思いつくのは農業高校や農業大学、大学の農学部などではないでしょうか。ほかにも、学校形式で通学して農業を学べる教育機関として、農業大学校などがあります。

しかし、平日昼間は働いているという場合、毎日通い続けるのにはどうしても無理があります。また、「通学している間の生活費や学費などで、就農時に使いたい自己資金を取り崩したくない」という人もいるでしょう。

学校形式以外でも、社会人が農業を学びやすい方法には、農業法人が行っている週末インターンシップや、就農センターなどの農業体験があります。さらに、一部の農家では、研修生として働ける場合もあります。

また、農業の知識に関しては、通信講座やeラーニングなどで自宅学習することも選択肢の一つですし、農業大学や就農センターなどが開催しているセミナーや社会人向け農業スクールなどを利用する方法もあります。

このように、近年、社会人として働きながら、少しずつ農業について学ぶことができる環境が整ってきています。社会人が続けやすい農業の学び方について、詳しく説明していきます。

働きながら農業を学びたい人はどう勉強する?

社会人が仕事を続けながら農業を学ぶためには、まず週末など休日をうまく利用することを検討しましょう。週末を利用したおすすめの学び方を中心に紹介します。

農業体験

農業体験は、各自治体でさまざまな形で行われています。たとえば、以下のような体験が人気です。

・週末1日だけの農業体験ツアー
・1年を通して週末に何度か通い、農作業を体験できる
・農家民泊として週末だけ泊まり込み、農業だけではなく地域の人との触れ合いも体験できる

農業体験では、稲作、畑作、畜産など、幅広い農業の形態に触れられる点も大きなメリットです。「自分が気になっている農作業や農作物を、自分の好きなタイミングで選べる」という点は、農業体験ならではの醍醐味(だいごみ)といえます。

一方、短期間の体験なので、どうしても深くまで学べないところは農業体験のデメリットです。新規就農するかどうかを検討するために、もっと深く農作業を体験したいと考える段階になったら、別の方法で農業を学ぶ機会を増やしましょう。

週末を利用できるインターンシップ

「農業体験だけでは、どうしてもレジャー感覚になってしまう」「もっと本格的な農業を体験したい」という人は、インターンシップを活用することも検討してみてはいかがでしょうか。全国新規就農相談センターで毎年実施されている農業インターンシップには、社会人が参加しやすい「週末等コース」があります。週末等コースの体験期間は、2日間以上の連続した日数を組み合わせ、1カ月以内で合計5日間以上になることが原則。通年実施していますが、定員に達した場合は募集を終了することもあります。

インターンシップは、全国各地の農業法人が行っています。農業の種類も農作物、畜産など多岐にわたり、選択肢が豊富です。自分が作りたいと考えている作物の農作業を体験しやすいという意味では、おすすめの学習手段といえます。

インターンシップでは、農作業以外にも直営レストランや直売所の手伝い、試験場・選果場・近隣農家の見学、ビニールハウスの解体組み立てなども学べます。純粋な農作業だけでなく、農業に関連するさまざまな作業も体験できるので、自分が就農したときのイメージが湧きやすいのも、インターンシップ制度の特徴です。

農業酪農インターンシップサイト「AGRiiN」はこちらから

週末だけ通う社会人向け農業スクール

社会人向けに、週末のみ開講している農業スクールもあります。オンライン通信コースを選択できるスクールもあります。インターンシップ制度よりも、さらに体系的に本格的な農業を学ぶことができ、農作業だけでなく農業経営についても学べることが魅力です。また、同じような立場の仲間ができる点も大きなメリットとなります。

新規就農希望なら取得しておきたい! 役立つ資格

新規就農を目指す際に、役立つ資格がいくつかあります。資格取得のための学習を通して、より農業に関する知識が得られますので、農作業の実地体験と並行して勉強を始めるとよいでしょう。以下に、就農時に役立つ資格について簡単に説明します。

◆日本農業検定
栽培・農業全般・環境・食の4分野について基礎知識を学ぶための検定。農業への理解を深めたい人におすすめ。

◆農薬管理指導士
農薬の適正な使用について助言や指導を行うための資格。農薬販売者、農薬使用者、その他農薬の管理指導上必要と認められた人が取得の対象となる。

◆農業機械士
農業機械に関する安全知識とその構造、基本的な操作技術、保守管理等に関する知識を習得していることを認定する資格。

◆農業簿記検定
農業用の実用的な簿記知識を学び、理解するための検定。


日本農業検定は、農業の基礎知識を問う検定のため、農業知識がない人が初めて学ぶための資格として、おすすめしたい資格です。
また、日本農業技術検定という検定試験もあり、合わせて学習すればさらに農業技術に関する知識を身につけることができます。農業の基礎的な知識を身につけるには、これら2つの資格取得から始めましょう。

農薬管理指導士と農業機械士は、所定の養成研修を受講して認定試験に合格したあと、都道府県知事から認定を受ける資格です。いずれも、農薬と農業機械に特化した知識を身につけるのに役立ちます。

最後の農業簿記検定は、独立就農して自分で農業経営をしたいと考えているのなら重要な資格です。農業の会計処理を学ぶことで、農業経営の基礎的な知識も身につきます。

いずれの資格も、特に学校などに通わなくても独学で受験し、取得できる資格です。社会人でも時間を見つけて学習を進め、農業に関する知識を深めていきましょう。

社会人におすすめの学び方をいくつか紹介しましたが、この他にもさまざまな農業学習方法があります。時間やお金を確保しないと難しい面はありますが、どんなことが学べるかなど、知識として知っておくとよいでしょう。

“農業の専門学校”農業大学校とは?

農業大学校は、農業のことを実践的に学ぶ教育機関で、2020年時点で全国42道府県にあります。全国どこに住んでいても比較的通いやすい点が大きな特徴です。

農業大学校と農業大学の違いは、学ぶ内容、期間、学費にあります。
農業大学校は、新規就農を目指す人や親の農業を継ぎたいという人が、農業について実践的な知識を身につけるための学校です。一方、農業大学はもう少し研究寄りのため、就農希望なら農業大学校や農業スクールのほうが適しています。

通学期間は、農業大学校は1~2年間、農業大学は4年間通学することになります。農業大学校という名前ですが、特殊専修学校であるため、大学卒の資格を得られるわけではありません。

年間の学費は、農業大学校は寮費などの生活費も含めて100万円以下のところが多く、平均的な4年制大学の学費・生活費と比べると半分ほどになっているようです。

農業大学・農学部も検討してみよう

農業大学や、大学の農学部の特徴は、農業に関することを広く学べるというところです。農業技術を磨くというよりは、最先端の農産・畜産技術を身につけ、自身でも研究するという点が農業大学校とは大きく違います。バイオテクノロジーやAI技術を使った農作物の研究など、よりアカデミックな勉強を進めたい人には、農業大学がおすすめです。

農業大学や大学の農学部では、社会人を受け入れている学校もあります。たとえば、京都大学大学院農学研究科付属農場が社会人履修プログラムとして行っている「次世代農業マイスター育成プログラム」はその一例です。隔週土曜日に通って、農業の基礎知識と実習を履修できます。受講料は15万円と、農業大学校の授業料と同程度となっています。

このように、社会人向けのプログラムは、働きながら受講できるような日程が組まれていることが多いため、時間と自己資金を投資できるようであれば検討してみてください。

自治体の募集による農家での研修

昨今では、地方自治体が農家での研修制度を設け、研修生を募集しています。農家での研修とは具体的にどのようなものでしょうか。また、研修生として働くことのメリットとデメリットには何があるのかについて解説します。

農家での研修制度

この研修制度では、会社で働きながら学ぶのではなく、その土地での就農を希望する人を対象に、地域の先進的な農業法人や農家で農作業を学びます。栽培技術や農業経営の講義が含まれている研修や、テーマ別の複数の研修を用意している自治体もあります。
修了後は、「雇用就農にするか」「新規就農をするか」を選ぶことになります。
研修期間は自治体やコースによって変わりますが、3カ月~1年間の研修が多いようです。
農業法人に直接就農して実践的に農業を学ぶ方法もありますが、その場合との違いは、農業経営や作物の生理・生態などの知識も学べるところにあります。
また、自治体によっては就農準備のためのサポートがついている研修があります。サポートの内容はさまざまですが、農地や農業機械、住宅などの準備を支援するという自治体もあります。

独立・雇用就農を目指して自治体が認めた研修制度を利用すると、「農業次世代人材投資資金」として、研修期間(2年以内)および就農直後(5年以内)に資金面で支援を受けることができます。研修期間には年間150万円の支給を2年間受けるか、1年目は月5万円、2年目は月7万円の支給を受けるかを選択できます。
研修を経ずに農業法人に就職・転職する場合は最初から一定の給料がもらえますが、研修を受けてから就農する場合は、資金の支援はあるものの研修期間中や経営が安定するまでの就農直後の生活費をどう確保するかを考えなければなりません。

研修生として働くことのメリット・デメリット

研修生として働くことのメリットは、農業に関するノウハウがまったくない中、一定の収入を得つつ農業に関するノウハウを実践して身につけられる点です。あまり自己資金が用意できないけれど早く就農をしたい、という人で、ある程度どのような作物を作るか、どのエリアで就農したいかということが決まっている場合、研修制度を活用するメリットは大きいと言えます。

一方、デメリットは、研修を受けた地域で就農しなければいけないこと。そのため、就農することまでを考えて研修場所を決めることが必要です。

どの場所で就農したいのか、どの作物を作っていきたいのかが明確でない場合、研修制度の利用は慎重に考えたいところです。まずは、お金をかけずに、実際の農業を知ることができる農業体験などを利用し、どのような農業をするのかについてある程度のめどが立ってから、研修制度を検討してみてください。

自分が就農したいと思える自治体で、自分が作りたい作物の研修制度が導入されていれば、検討してみる価値はあります。研修制度を開始してしまうと後戻りはできないため、他の方法と合わせてじっくりと検討しましょう。

自分のペースで農業を学べる通信教育・講座

「農業を独学で学びたいが週末外出する余裕がない」「可能な限り自宅で勉強を進めたい」という人は、通信教育や通信講座を検討しましょう。たとえば、NECソリューションイノベータ株式会社では、「NEC 農業技術学習支援システム」というeラーニングシステムを提供しています。このようなシステムを利用すれば、熟練者の技術やノウハウをパソコンやタブレットから効率よく学習することができます。

通信教育や、eラーニングで農業を学ぶメリットは、時間や場所の制約がなく自分のペースで学習が進められる点です。通勤電車の中でも勉強はできますし、休日はあまり出歩かず体を休めたい場合でも、学習を進めることができます。毎日が忙しく、なかなかまとまった時間が確保できない人には、特に有効な勉強方法です。

自分のライフスタイルなどを考えて農業の勉強を始めよう

働きながら農業を学ぶ方法はさまざまです。現在の日本の農業は、農業従事者の高齢化や後継者不足といった課題があります。そのため、会社で働きながら農業をしたいと考える人を支援する制度は、以前よりも整ってきている状況です。

とりあえず現在の仕事は続けながら農業を体験・学習したい人は、農業体験やインターンシップ、資格取得から始めてみるという方法があります。

しっかり知識を身につけてから就農したいと考えている人は、農業大学校や社会人向けスクールに週末通学するという方法が向いています。通学できない人は、通信教育を検討することになりますが、現状ではあまり選択肢がないため、何とか週末に出かける時間を確保して、社会人向けスクールに通いたいところです。

すぐにでも農業を始めたい人は、各自治体が募集している農業の研修制度を利用するのもよいでしょう。独立就農を考えている人にとっても、研修制度は便利な制度です。

自分のライフスタイルや就農への決意の度合いなどによって、最適な選択肢は変わってきます。農業の学び方には、どのような方法があるのかを把握して、自分に向いている勉強方法を見つけてください。


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