有効性が高い『クロルピクリン』を扱いやすく錠剤化
クロルピクリンは、長年にわたり農業現場で使われてきた実績のある薬剤です。萎黄病、炭そ病、センチュウ類、雑草などの発生抑制に高い効果が認められ、特にイチゴ栽培に欠かせない土壌消毒剤として農家からの信頼を集めてきました。
「太陽熱消毒や土壌還元消毒など、薬剤を使用しない方法もありますが、雨や曇りが続くと日照量・積算温度の不足で消毒効果は薄れてしまうリスクがあります。安定した消毒効果を得たいということで、クロルピクリン処理を選ぶ人が多いです」。そう話すのは、南海化学株式会社のアグリ営業部の佐伯尚高さんです。
慣行のクロルピクリン液剤は、すぐに気化してガスが発生するため、専用の注入機を使って土壌に打ち込んだら、速やかに地表面をシートで被覆しなければなりません。こうしてガスを土壌に封じ込めるのです。しかし、被覆作業が少しでも遅れたり不十分だと、眼、のど、鼻に刺激を感じたり、近隣へガスが拡散してしまうおそれがあります。
こうした不安を解消し、専用の注入機がなくても、安全で簡便に作業ができるように開発されたのが、『クロピク錠剤』です。液体のクロルピクリンを特殊技術で固形化し、ガスバリア性の水溶性フィルムで一錠ずつ包装。ガス化の速度が抑えられ、散布してから被覆するまでの時間を稼ぐことができます。
錠剤は、土壌中の僅かな水分でフィルムが緩んでガス化が始まるため、液剤とくらべて作業者の安全が確保しやすく、業務の負担も大幅に軽減されます。被覆に手間取ってガスを逃してしまう失敗も少ないので、クロルピクリンの高い土壌消毒効果を十分に発揮できるというわけです。
「近年の温暖化で東北や北海道でも萎黄病の発生が見られます。全国的に見ても頻発する集中豪雨で外からの菌が圃場に流入することもあり、病気が発生しやすい環境になっています。こうした背景もあり、従来のやり方では通用しなくなったという農家さんから『クロピク錠剤』への問い合わせが増えています」と、同アグリ営業部の福永一博さんは話します。
イチゴ農家が編み出した「うね上げ後土壌消毒法」で安定生産
『クロルピクリン錠剤』の有効な使い方に、栃木県のイチゴ農家の声から生まれた「うね上げ後土壌消毒法」があります。2008年の栃木県農業試験場で行われた検討試験では、慣行のうね上げ前土壌消毒と比べて定植後の初期生育が旺盛になる傾向が認められました。また、土壌中の無機態窒素含有量とそれに伴うイチゴの窒素吸収量も高く、1株あたりの販売果収量が約10%アップする結果となりました(※試験場データ値)。
- 残さを取り除いて圃場を整地します。
- 堆肥・基肥を入れてうね立てをします。※基肥の窒素は20~50%減らします。
- うねの表面が白く乾いたら、ベッド1mあたり8~10個の錠剤を散布します。地中4~5cmの土を軽く握って放したときに2~3個に割れる程度が適正な土壌水分です。
- ポリエチレンやビニール製の厚さ0.05mm以上のシートで被覆します。
- 平均地温25~30℃で約10日間くん蒸した後、灌水を行って定植します。※くん蒸期間は平均地温によって異なります。
実はクロルピクリンが効くのは地表面から深さ30cmくらいまで。慣行のクロルピクリン液剤の全面消毒法ではうねを立てる際に土を掘り起こすため、表面が消毒済みであっても、地中深い部分の消毒されていない土が混ざった結果、発病することがあったのです。
うね上げ後土壌消毒法では、土壌消毒後に土を動かさないため、より効果を発揮できます。
「この方法においては、土の乾燥が大切です。水分が高い土壌にはガスが行き渡らないので、栽培する部分の土をしっかり乾燥させて、条件を整えて錠剤を撒いてください」と,
佐伯さんは作業のポイントを話します。
『クロピク錠剤』はイチゴ高設栽培にも利用できます。液剤の機械注入ができないため、土壌消毒の数少ない手段として広まっています。方法は、培地に適当な湿り気があり、表面が乾いた状態で散布。培地の幅が30cmの場合は30cmごとに1錠を置き、軽く覆土して速やかにポリエチレンやビニール製の厚さ0.05mm以上のシートでベッド開口部まで覆い、ガスが漏れないようにします。水分が足りない場合は灌水チューブから適度の水を送ります。また、ロックウール、ヤシ殻、杉の皮を使った培地でも有効性は検証されています。
処理後は必ず被覆! 準備万端で安心・安全・確かな土壌消毒
より安全・簡便・効果的に処理を行うためには準備が大事です。まず安全面として、防護マスク、保護メガネ、ゴム手袋等を着用し、必ず乾いた手で作業します。散布後速やかに土壌を被覆できるようにシートは近くに用意しておきます。被覆シートは、ポリエチレン、ビニール等で厚さ0.05mm以上、もしくはガスバリア性フィルムを使用しましょう。
「クロルピクリン処理による事故は、無被覆の状態で起きています。周辺への配慮のためにも処理後は必ず被覆をしてください。被覆しなければ効果を発揮できません」と福永さんは使用上の注意を喚起します。
『クロピク錠剤』を正しく使えば、労力軽減・作業短縮になり、ガスを吸い込むリスクも低減できます。効果を最大限に発揮させるためにも準備を整えてから作業に入りましょう。また、外包装を開封した薬剤は保管せず全量を使い切ってください。
「萎黄病が出てしまったら、株ごと植え替えるしか手立てがありません。土壌消毒はやっておけば安心できる保険のようなものです。『クロピク錠剤』なら部分的に被害があった場所のみを消毒することも可能です」と佐伯さん。
イチゴ以外にも、施設栽培のキュウリ、トマト、ピーマン、ショウガ、花きなど、高収益を目指す作物の土壌消毒に『クロピク錠剤』が選ばれています。限られた農地を活用する日本の農業に欠かせないクロルピクリン。誰もが安全に土壌消毒を行える『クロピク錠剤』が、これからの農業を土壌病害から守ります。南海化学アグリ営業部では、全国の現場へ、使い方の説明や処理の立ち会いも行っています。使用に不安があれば、まず相談してみてください。
<お問い合わせ>
南海化学株式会社 アグリ営業部
(本社)〒550-0015 大阪市西区南堀江1丁目12番19号 四ツ橋スタービル
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Tel:03-5817-5851
※お電話の際に「マイナビ農業を見た」とお伝えください
※同社による立ち合いは、購入者が正しい方法で事故なく安全に製品を使用するために行われるものであり、消毒効果を保証するものではありません