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「被害株4~5割でも秀品を作る」サツマイモ基腐病と闘う『宮崎紅』の伝統産地

「被害株4~5割でも秀品を作る」サツマイモ基腐病と闘う『宮崎紅』の伝統産地

サツマイモの「基腐病(もとぐされびょう)」が、産地に大きな打撃を与えています。カビの一種の病原菌が、茎葉を枯らして塊根を腐敗させる伝染病で、2018年の夏から秋にかけて沖縄県、鹿児島県、宮崎県で発生が確認され、決定的な防除策が見つからないまま、全国各地に拡大しています。サツマイモ(かんしょ)の一大産地、宮崎県のJA串間市大束では、特産品の「宮崎紅」に甚大な被害が。地域の年間収穫量は4~5割減少し、離農も進んでいます。地域の農業を守るために、あらゆる防除策を試しながら基腐病と戦う産地の現状を聞きました。

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畑にまん延する基腐病、特産品の「宮崎紅」に深刻な被害

宮崎県最南の串間市は50年以上の歴史があるサツマイモ(かんしょ)の産地です。JA串間市大束管内で栽培される「宮崎紅」は、きれいな紅色で形はすらりと美しく、ホクホクとした食感と上品な甘さが特徴。さまざまな料理の材料に適し、焼酎や菓子などの加工用にも需要の高い品種です。「ヤマダイかんしょ」のブランド名で地理的表示(GI)に登録され、知的財産として保護されています。

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宮崎紅

今、産地を悩ませているのがサツマイモの「基腐病」です。2018年に国内で初めて発生が確認され、南九州に甚大な被害をもたらしました。現在、全国22都道県で発生が報告され、拡大が懸念されています(2021年11月時点)。

JA串間市大束管内の被害は特に深刻です。感染による被害は地域平均で4~5割にのぼり好転が見られないまま3年が経ちました。営農課の島田慎也さんは、「基腐病は解明されていない部分が多く、いまだ防除の決め手がありません」と苦境を明かします。発生後の作付け面積は280haに半減、30~40戸が離農して生産者は125名に減少しました。それでも「宮崎のサツマイモ文化を守る」と、かんしょ部会長の川崎博樹さんは前を向きます。

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JA串間市大束 営農課の島田慎也さんと、かんしょ部会長の川崎博樹さん

未知の病気を解明、防除対策に3つの基本

産地での基腐病の発生を受けて、九州沖縄農業研究センター、宮崎県総合農業試験場などが共同で研究チームを立ち上げました。発生生態を究明しながら産地に防除を呼びかけています。いまだ全容を解明するには至りませんが、発生地域への聞き取り調査で、いくつかの特徴がわかってきました。

基腐病の侵入とまん延について、宮崎県総合農業試験場の櫛間義幸さんは、「初期発病株はしおれや黄化、生育不良として現れますが、特徴的な基部の黒変は株元なので、最初は気付かれにくく、収穫間近になるまでにわからずにまん延を許してしまうことがあります」と話します。

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基腐病に罹患した圃場とイモ(写真提供:宮崎県総合農業試験場)

基腐病は連作障害のひとつです。「前年に被害があったほ場で繰り返し発生することから、土壌の残渣が大きな原因だと考えられます。このほか、発病株に形成された胞子が排水不良で拡散したり、見かけは健全な罹患塊根を種イモに使用することで汚染苗を通じて健全なほ場に感染が広がることもあります」と説明してくれました。

研究チームでは、防除対策の基本として、「持ち込まない」「増やさない」「残さない」の3点を呼びかけています。土壌消毒を確実に行い、ウイルスフリー苗(健全苗)を使用します。初発確認後は、発病株を早期に抜き取り、生育期に薬剤散布を行います。収穫後は罹病残渣を持ち出すとともに速やかにロータリーをかけるなどして残渣の分解を促進し、地域の病原菌の密度を下げれば、ある程度コントロールできるのではないかと考えられていますが、1~2割以上被害のあるほ場は、まず輪作も検討するべきとしています。

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宮崎県総合農業試験場の櫛間義幸さん

一筋縄ではいかない防除、独自の通年出荷体制を維持するには

JA串間市大束では、県や市の支援も得て、十数項目の新たな防除対策を試みました。主な内容は、未発生地域の種イモへの更新、定期的に巡回をして発病株をすぐに抜き取る、明渠設置などの排水対策、かんしょ以外の畑や休耕地での作付け、土壌の天地返し、ドローンによる一斉防除などです。

防除の肝とされる残渣処理は難しく、1反あたり2~3tにのぼる残渣をほ場から持ち出して焼却していましたが、労力とコストの負担が大きく、現在では、残渣の分解に微生物資材を入れるなど、これまでに使ってこなかった資材や薬剤も取り入れ、苗床からほ場まで防除対策を徹底しています。

本来であれば、管内の収穫は6月の超早掘りに始まり、後半は貯蔵イモとして11月末まで続きます。今年は超早掘りでは被害を1割に抑えましたが、後半は盆の降雨と9月の台風による二次感染で極端に落ち5~7割が被害を受けました。産地では病状が広がる前の早期収穫で10月頭に終え、後半の作付けをやめる生産者も多く、最需要期の量を確保できません。
「産地として築いてきた通年出荷体制の維持を望んでいます」と川崎部会長は思いを語ります。

ハイバリアーで土壌消毒の効果アップ、秀品を作りながら伝染病と戦っていく

防除対策を試行錯誤して3年間。よさそうな農薬や資材があれば率先して試してきた川崎部会長は、土壌消毒剤の効果を高めるために、徳島県でサツマイモ立枯病の克服に寄与した機能性多層フィルム「ハイバリアー」に注目。ほ場17町に導入しました。

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岩谷マテリアル株式会社の機能性多層フィルム「ハイバリアー」

これまでも行ってきたクロルピクリンによる土壌の燻蒸処理では、ガスを揮散させないために畝をフィルムで覆いますが、一般的なポリエチレンや塩化ビニール素材では、被覆した直後からどんどんガスが漏れてしまいます。岩谷マテリアルが開発した「ハイバリアー」は、多層構造で非常に高いガスバリアー性を実現。土壌消毒の効果を高め、農薬の使用量低減が期待できます。徳島県では立枯病で前年度収量8割減のほ場が、ほぼ完全に復活しました。基腐病には、これに加えて畝間の土壌消毒も行う必要があると、前出の研究チームより報告されています

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徳島県内の収量を比較した写真。10aあたりの収量は約1.8倍と増加、立枯病発生率は80%から1%ほどにまで減少しました

「前半の発生はかなり抑えられました。後半は基腐れがあっても、ハイバリアーのほ場では色形のよい秀品が穫れました。やったほうがいいことは確実に行っていきたい。誰かが挑戦しないと」と、川崎部会長は言葉に力を込めます。

全国的に広がっている「基腐病」は、もはや発生地域だけの問題ではありません。JA串間市大束と生産者は、長期戦を覚悟のうえで、行政、研究機関、企業などの協力を得ながら防除方法を打ち出し、苦しい状況下でも産地としてよいものを作っていく構えです。

「串間は過去にもさまざまな病害を克服してきた産地です。今のところはこれだという防除体系は確立していませんが、これからも各農家が力を合わせて、情報収集と試行錯誤を続けます」と、二人から勇気が出る言葉をいただきました。


【取材協力】
JA串間市大束
営農課 島田慎也さん
かんしょ部会長 川崎博樹さん
宮崎県総合農業試験場
櫛間義幸さん

茨城県では立枯病の克服にハイバリアーが貢献

サツマイモ基腐病との闘いに秀品率アップの光明を見出して、伝統ブランド『宮崎紅』を守る一助となりうる「ハイバリアー」。同じくサツマイモの一大産地、茨城県では立枯病からの回復と秀品率向上をアシストしています。5年前、ブランド立ち上げと同時に立枯病が大発生した産地は今--。長期貯蔵芋『旭甘十郎』の生産に取り組む産地、JA茨城旭村へ向かいました。

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