長野発のブドウが「機能性表示食品」の仲間入り
「ナガノパープル」は、長野県果樹試験場が「巨峰」に「リザマート」を交配して開発した黒系の品種。種無しの大粒ブドウで、皮ごと食べられるのが特徴です。高い人気を誇る白系品種の「シャインマスカット」、2022年に本格的に市場デビューする赤系品種の「クイーンルージュ」と並び、“長野県のぶどう三姉妹”の一角を占めています。
大きくて食べ応えのある粒は糖度18%以上と甘く、長く人気が続いた巨峰の次代を担う黒色ブドウとして、長野県は「一押しの品種」(園芸畜産課)としています。
そのナガノパープルに、高めの血圧を下げる効果がある「GABA」(ガンマアミノ酪酸)が含まれていることが分かり、2019年10月、「機能性表示食品」として消費者庁に届け出が受理されました。
JA全農長野と長野県、信州大の三者が協力
機能性表示食品の申請は、JA全農長野に長野県と信州大が協力して行いました。
県内全域で収穫されたナガノパープルを無作為で選び、30~40の検体でサンプル調査を実施。その結果、いずれのブドウもGABAを含んでいることが分かりました。
さらに信州大は、GABAを含む食品についての過去の研究データを解析。計11の論文に当たり、GABAを含む食品の摂取が血圧低下に有効であることを確認しました。このことから、GABAを含むナガノパープルにも、同様の効果があるという結果を導き出しました。
JA全農長野によると、生のブドウの機能性表示食品は他にはないそうです。以前からブドウの健康効果に期待する声はありましたが、消費者庁に「機能性表示食品」の届け出が受理されたことで、その効果を立証する形となりました。
「毎日グレープ」の習慣を、目安は一日11粒
高めの血圧を抑えるために必要なナガノパープルの摂取目安量は一日11粒(約110グラム)で、その中に12.3ミリグラムのGABAが含まれるそうです。
継続的に食べることでその効果が期待できることから、商品名は「毎日グレープ」とし、専用のパッケージを用意しました。
ナガノパープルの収穫ピークは例年、9月上旬から中旬にかけて。毎日グレープは、露地物が市場に出回り始める8月終わりごろから関東・関西エリアで販売する予定でいます。
1パック=1房で1300~1500円を想定。通常のナガノパープルより3割程度高い価格設定としています。販売初年は1万房を販売することを目指しています。
輸入ブドウへの巻き返し、健康志向の消費者獲得に期待
ブドウを巡る販売情勢は今、大きく変わりつつあります。
東京税関のまとめによりますと、生鮮ブドウの輸入数量は2009年から増加傾向にあり、18年には過去最高を更新して3万7000トンに上りました。これは08年の7000トンの5倍以上の規模です。
2018年の原産国別輸入数量では、1位が米国、2位がオーストラリア、3位がチリとなっており、これら3カ国が大半を占めています。
輸入ブドウの強みは何と言っても値段の手頃さです。ナガノパープルのように、種無しで皮ごと食べられる品種が多く、一般の消費者の支持を急速に集めているようです。
しかし、JA全農長野の担当者は「ナガノパープルのコクのある味わいは、ブドウのコアなファン層を確かに引き付けている」と言います。
おいしさに血圧抑制という新たなセールスポイントが加わったナガノパープル。長野県の担当者も「最近は健康志向が高まっている。消費者のニーズと合致して新たな需要を掘り起こすことができればいい」と期待していました。
「毎日グレープ(ナガノパープル)」機能性表示食品の届出受理について