企業の農業参入は成功するのか~勝敗を分ける4つのポイント~

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企業の農業参入は成功するのか~勝敗を分ける4つのポイント~

企業の農業参入は成功するのか~勝敗を分ける4つのポイント~
最終更新日:2020年09月15日

近年、企業が農業参入する件数は増加傾向にあります。農地法の改正をきっかけに農業参入して、新たな業種でも成功を収めている企業も少なくありません。しかし、中には参入に失敗し、撤退してしまう企業も後を絶たないのが実情です。今回は、企業の農業参入を成功させる秘訣(ひけつ)について、「食・農業界と異業種のつなぎ役」を意味する「フードカタリスト」として活動している中村圭佑(なかむら・けいすけ)さんに話を聞きました。

中村圭佑さんプロフィール

中村さんプロフィール
福岡県久留米市生まれ。明治大学農学部卒業後、日本農薬株式会社で約7年勤務。その後、大手経営コンサルティング会社を経て、FOOD BOX株式会社を2019年7月に起業。一般企業向けに農業参入のサポートを行うなど、「農家の皆さんがより自由度の高い農業経営を実現する」ことを理念として活動している。(写真提供:中村圭佑)

企業による農業参入は加速する

畑の中村さん

茨城県つくば市・ふしちゃんファームにて(写真提供:中村圭佑)

企業による農業参入は年々増加していて、農地を利用して農業経営を行う一般法人は、2003年末にはわずか10法人でしたが、2018年末には3286法人まで増えています(農林水産省調べ)。増加した理由の一つには、2009年の農地法改正によって、リース方式による参入が全面自由化されたことがあります。

また、中村さんは新型コロナウイルスの流行によって農業参入のトレンドにも変化が起きていると考えていて、「これまで農業参入する業種は、建設業や教育、食品、医薬品、不動産関係などが多い傾向でした。ただ、感染症の流行によって、食への意識も変化したため、あらためて原材料である農作物を作ることの重要性が高まっています。企業側の『農業に参入したい』という思いの強まりを感じるので、今後はさらに農業参入が盛り上がっていくと思われます」と話します。

企業による農業参入が加速することによるメリットとは?

それでは、そもそも企業の農業参入にはどのようなメリットがあるのでしょうか。中村さんにいくつか挙げてもらいました。

既存事業と農業がお互いの価値を高め合える

企業が自らの専門的な領域と、他業種である農業を同時に行うことで、その相乗効果が期待できます。例えば、以下のようなことが想定できると言います。

    ・自らが運営する飲食店や施設で農作物を提供できる
    ・農業体験の場を提供できる
    ・福利厚生として農作物を配ることができる
    ・元々持っていたものづくりの技術やノウハウが生かせる
    ・未利用資源や有機肥料などが活用できる

地域に貢献できる

また、企業による「地域への思い」も重要なポイントです。特に地方の企業の多くは、地域の人口が減少したり、働きたくても仕事がなかったり、耕作放棄地が増えたりする様子を目の当たりにしていて、問題解決に一役買いたいという企業が多いと中村さんは言います。そして、その問題解決の手段の一つとして、農業参入を決める企業もあるそうです。

会社としてのCSRやIRでPRに繋がる

さらに、農業参入することが会社にとってのCSR(社会的責任)やIR(投資判断に必要な情報を提供すること)に良い影響をもたらし、結果的に企業のイメージアップにつながることも期待できます。ただ、それだけを目的とするわけでなく、後からついてくるメリットと言えそうです。

企業の農業参入の具体的事例

ビニールハウス

写真提供:中村圭佑

企業の農業参入には、さまざまなメリットがあることがわかってきましたが、ここからは実際に農業参入を行った企業の具体的な事例について見ていきたいと思います。

製造業の技術を生かした株式会社ひむか野菜光房

宮崎県日向市の株式会社ひむか野菜光房は、株式会社日向中島鉄工所(現在は株式会社MFE HIMUKAに社名変更)を中心とした異業種の4社が連携して2012年に創業されました。ビニールハウス内の湿度、温度など、全てをコンピューターで管理する「植物工場」を導入し、一年を通じてレタスの水耕栽培をしています。元々持っていた“ものづくり技術”や“企業経営のノウハウ”を生かして、IoTを活用した新たな農業スタイルを確立し、農業参入する企業のモデルケースになっています。
4_ひむか野菜工房

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鉄工所経営者、ガス販売経営者、ハウス栽培技術会社役員、水耕栽培のトマト農家だった4人が「工場のように安定生産できる環境で、地域に貢献しよう!」と2012年に設立。農場長の岸本さんを取材しました。

地域ぐるみで取り組む北海道の株式会社谷組

北海道・下川町で建設業を営む株式会社谷組は、新規事業の開拓と、冬季に除雪作業を行う社員の夏季の仕事を確保する目的で農業に参入したそうです。その後押しをしたのが下川町役場で、研修先の紹介や、農地のリースなど、谷組の農業参入を支援したと言います。「農地の確保が大きなハードルになることが多いので、自治体によるサポートは大きな力になったはずです」(中村さん)

農業参入に成功する秘訣とは

企業参入イメージ

農業参入した企業の実例について見てみると、成功させるための秘訣が見えてきます。中村さんに、農業参入に成功する秘訣をまとめてもらいました。

目指すビジョンや農業にかける思いがある

企業側に農業参入した上での目的やゴールがあることが大切です。農業は利益が出るまでに時間も手間もかかります。どんな農業がしたいのか、他業種から参入して何をしていきたいのか、しっかりしたビジョンが必要です。

シナジーがある

自社が行っている既存の事業と農業のシナジー(相乗効果)があることも重要です。例えば、IT企業が自社で培った技術をスマート農業に生かす、再生可能エネルギーメーカーが自社発電をして栽培をするなど、何がシナジーになるかわかりません。技術に限らず、販路や加工での相乗効果も考えられます。自分たちだからこそ、農業でどのようなことができるのか、どんな強みを生かせるのか、考えた上で参入することが大切でしょう。

地域への思いがある

農地を借りる地域において、「地域に貢献したい」「地域をより良くしたい」「農業を通じて地域を盛り上げたい」などの思いは不可欠です。離れた場所に土地を借りて農業を始めるよりも、できれば自分たちの基盤がある地域で行うのがおすすめです。協力してもらえる地元の農家さんや、農業経験者とのネットワークがあるとなお良いでしょう。

農業を理解して長期的な時間軸で考えられる

農業は、一朝一夕には利益が上がらず、ビジネスとしてきちんと成り立つまでにそもそも時間がかかります。農業は地道に農地を耕し、作物を育て、日々管理し、その結果として農産物が収穫できます。

さらに、災害などが起きると、収穫量がゼロになってしまうこともあるため、中長期的な視点が必要です。農業参入した企業の中には、既存事業と比較して、すぐに採算性や利益率の上昇を求めてしまい、数年で事業撤退を決断するケースも多いです。しかし、参入する上では、時間軸を中長期的に捉えることが大切です。

参入企業は農業に新たな風を吹かせる

ビニールハウスの中で作業

写真提供:中村圭佑

最後に、農業参入する企業がどのような心構えをすればいいのか中村さんに聞くと、「農業は楽をして一気に利益が上げられるビジネスではありません。農家さんは、地道に農作物を作り、中長期的な視野を持っている。そこに参入する企業には同じようなマインドが必要です」と答えてくれました。農業に参入する以上、企業には農家さんと同じマインドが必要だということは、ささいなことのようで、実は一番大切なことなのかもしれません。

そして、農業参入に秘められた可能性について、「参入する企業にとって、農業は異業種だからこそ、第三者的な目線で見て、『ここは改善できる』と感じる部分が多いと思います。きっと農家さんには見えていないことが、企業側からは見える場合もあるでしょう。それは企業にとってのビジネスチャンスとも言えるんです」と話していました。

農業に携わる人の平均年齢は年々上がっていて、農業人口は減りつつあります。そこに対して、「企業の農業参入が新しい風を吹かせてくれる」と中村さんは目を輝かせて話してくれました。異業種からの農業参入は最初は敬遠されがちですが、地域全体にとってプラスの効果がもたらされることもあります。中村さんは、農業参入の可能性の大きさを期待を込めて語っていました。

中村さん

写真提供:中村圭佑

ここまで、企業の農業参入を成功させるための方法について、中村さんにお話を聞いてきました。マイナビ農業では、農業参入を検討している企業向けに、中村圭佑さんに直接相談できる商談会を予定しています。気になった人は、ぜひ直接相談に来てみてくださいね。


【取材協力】FOOD BOX株式会社

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