農業体験やインターンシップ後に研修を。まずはジョブカフェに相談を!
京都府では、就農希望者などに対する情報提供や相談活動を、京都ジョブパーク内の『農林水産業ジョブカフェ(以下 ジョブカフェ)』などで行っています。
さまざまな情報が集まるジョブカフェは、農業を始めるのに必要なスキルや心構え、新規就農者への支援策など、欲しい情報がワンストップで得られるのが特徴です。
「これまで農業経験が無い方の就農に向け、1日~3日程度の農業体験や最大6カ月間のインターンシップを経て、本格的な研修に入るのが京都府のスタイルです。この期間に自身の適性などを判断してもらい、就農を目指す方には『京都府立農業大学校』や『担い手養成実践農場』、『宇治茶実践型学舎』、『畜産人材育成研修』などにより、栽培技術や農業経営について、ご本人の方向性に応じた環境で学んでいただけます。研修を終了し就農されてからは、農業改良普及センターや関係機関により、早期に経営が安定するようにフォローしています。なお、雇用就農を目指す方もジョブカフェにて相談を行っています」と話すのは、京都府農林水産部の太田典宏さん。
一定の条件はありますが、研修期間中の2年間、就農からの5年間は国の『農業次世代人材投資資金』を活用すれば、年間最大150万円の助成を受けることができ、生活費はもちろん、研修費用や研修用地の確保、施設の賃貸料などにも充てることが可能です。
ミュージシャンから農家に転身。農業では栽培スキルと経営センスが重要
最初にお話を伺ったのは、京都府の研修制度を活用し、野菜農家として就農を果たした日下部裕一さん(40歳)。
東京でミュージシャンとして活動していた日下部さんは、東日本大震災が転機となり、京都府亀岡市にUターン。震災で食べ物の重要性を改めて実感し、農業への関心を深めます。
「2013年から亀岡市内の農家で研修を受け、2014年から京都府の支援制度である『担い手養成実践農場』を活用しての研修がスタート。就農予定地と専属で技術指導をしてもらう地元の農業者を確保し、そこで実際に栽培を行いながら栽培スキルを身につけます。もともと実家は農家だったのですが、父は公務員でしたので、頼れるのは技術指導者のみ。栽培のコツなどを教えてもらいながら自分でも積極的に勉強しましたね。地域の篤農家(先進農家)に飛び込みで教えてほしいと頼みこんだこともあります」と日下部さん。
2016年に就農しましたが、軌道に乗ったと感じたのはごく最近のことだと話します。現在は約2haの畑でトマトやナス、ブロッコリー、ハクサイなどの野菜を中量中品目で栽培し、JAの直販部会を通じて流通チェーンストアとの安定取引を続けています。
次の目標は「法人化して、売上1億円を目指す」と話す日下部さん。「農業は1年に1回しか結果が出ないので、自ら実践して検証する主体性が不可欠だと思います」―と就農を考える方にエールを送ります。
会社員より茶業に魅力を。研修後は地域に根ざした茶農家に
次にお話を伺ったのは、『宇治茶実践型学舎』で一期生として学ぶ谷口義昌さん(23歳)。
大学で情報系を専攻していた谷口さんは、就職活動と並行し、自分が本当にやりたいことは何かと考える中でジョブカフェを訪れ、茶農家でのインターンシップを勧められます。
「京都府南部の南山城村の茶農家で、3日間のプレインターンシップに参加後、すぐに2カ月間のインターンシップに入りました。2019年12月からは京都府の研修制度を活用し『宇治茶実践型学舎』での2年間の研修に臨んでいます。ここでは茶の栽培管理から摘採・製茶加工までの流れを学ぶとともに、施肥や防除、茶樹の剪定なども行います。研修先の南山城村の茶農家では農閑期にしいたけの原木栽培も行っているので、それも学んでいます」と教えてくれた谷口さん。
1年目の現在は、宇治市にある茶業研究所での研修に加え、年に50日ほど茶農家で研修を受けており、2年目にはそれが100日に増えるといいます。
「ほとんどの茶農家は個人経営なので雇用就農という道は少なく、研修終了後は茶園を引き継ぎ、1人ですべてを担うことになります。加工に関しては、共同加工場をお借りできますが、栽培管理や摘採が課題です。最近は、少数ですが新規就農者の方も現地におられ、彼らと協力関係が築ければ良いなと思っています」と谷口さん。
就農後は茶業に携わりながら南山城村での生活が始まります。「まずは農家として生活できることが先決ですが、将来はお茶の品評会で上位入賞できるような実力を身につけたいですね」と瞳を輝かせていました。
畜産でも非農家から挑戦! 家族の応援を背に、将来は育てた牛で最高の料理を
最後にお話を伺ったのは、『畜産人材育成研修』の一期生として学ぶ大同哲也さん(36歳)。
料理人として15年以上のキャリアを持つ大同さんは、地域のより良い食材を探す中で京都の和牛ブランド『京都肉』を知り、畜産で生産段階から携わってみたいと研修への参加を決めました。
「非農家かつ家族がいる状況での研修参加は、相応の覚悟が必要でした。脱サラと思われるかもしれませんが、私の中では素材である畜産経営から調理までが一本の道であり、今も料理人を辞めたつもりはありません。いつかは自分が育てた牛を素材にした一皿を提供したいと考えています」と語る大同さん。
2020年4月から一期生として乳牛・肉用牛の生態や飼養、加工などを座学で学ぶとともに、綾部市の畜産センターや京丹後市の碇高原牧場での実習、畜産農家への見学やインターンシップ実習など、幅広い経験を積んでいます。
「2年目からは就農に向けた具体的なビジネスモデルの立案に入ります。繁殖か肥育か、何頭飼うか、土地の確保はどうするのかなど、決めることは盛りだくさん。実際に学んでみて重要だと感じるのは、大きな夢よりも小さな目標を着実にクリアする堅実さです。これから就農を目指す方には畜産を生業にする覚悟が必要だと伝えたい」と大同さん。
今回、取材して感じたことは「教えられたことをこなすだけでなく、自ら考えて行動すること」の大切さ。3名の働きぶりや学び方を参考に、みなさんならどうするかを考えてみてはいかがでしょうか?
興味を持った方は、ぜひ、京都駅近くのジョブカフェに足を運んでみてください。
お問い合わせ
農林水産業ジョブカフェ(就農と田舎暮らしに関する相談窓口)
【住所】
〒601-8047
京都市南区東九条下殿田町70
京都テルサ西館3階 京都ジョブパーク内
【TEL・FAX】
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【E-mail】
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