世界の注目を集める昆虫食は、危険? デメリットばかりではないメリットとは?

マイナビ農業TOP > 食育・農業体験 > 世界の注目を集める昆虫食は、危険? デメリットばかりではないメリットとは?

世界の注目を集める昆虫食は、危険? デメリットばかりではないメリットとは?

世界の注目を集める昆虫食は、危険? デメリットばかりではないメリットとは?
最終更新日:2020年09月28日

昆虫食とは、文字通り昆虫を食べることです。
日本でも昔からイナゴの佃煮など昆虫を食べる文化がありましたが、今では一部の地域で生産されているのみ。
しかしこの昆虫をハリウッド女優が食べ始めるなど、近年世界で注目を集めています。なぜ昆虫食が注目されているのでしょうか。その理由と昆虫食のメリット、味などについてレポートします。

昆虫食とは?

昆虫を食べる、と聞くと「奇異なこと」と感じる人もいるのではないでしょうか。
ところが、日本でも大正時代にはハチ、カミキリムシ、カイコなど50種類以上の昆虫が日常的に食べられていたという記録もあり、現在でも一部の地域ではイナゴの佃煮などが生産、販売されています。

今、この昆虫食が世界的に注目を集めています。
その注目度を反映してか、日本でも「昆虫自動販売機」が都内数カ所などに設置されているんです。

昆虫の自動販売機

左が高田馬場、右が中野にある昆虫食の自動販売機

昆虫食が注目されるきっかけになったのは国連食糧農業機関(以下、FAO)が2013年に出したレポートです。
そのレポートでは「今後、昆虫食が食料・飼料になり得る」というものでした。

そこで筆者は考えました。

世界の人口が増えたら、肉や魚の代わりに昆虫を食べるのね!

と。

しかし、FAO林業局の林業経済政策・林産品部長エヴァ・ミューラーさんは、「FAOは、人々が昆虫を食べるべきだ、と言っている訳ではない」と述べています。
「昆虫はひとつの資源である」とし、食料・飼料への可能性など、食料安全保障にとって重要なものと見ているのは確かですが、昆虫を食べるよう求めているわけではないのです。

また、昆虫食についてFAO駐日連絡事務所からは次のようなコメントをもらっています。

「現在、世界では健康的な食事を経済的に入手できない人々が約30億人存在します。持続可能な方法で、栄養のある食べ物に皆がアクセスできるようにするために、これまで通りの食料の生産方法や食事の仕方からの転換が求められています。
昆虫は、安価に入手できる食材の一つとして、すでにアジアやアフリカ、ラテンアメリカを中心とした約20億の人々の食事の一部となっており、今後私たちが環境面でも健康面でも、そして経済面でも持続可能な食のあり方を追究する上で、一つの有望な栄養源であると考えられます」

やはり、昆虫を一つの選択肢として捉えていることがわかります。「持続可能」という点で期待を寄せているようです。

では昆虫食は具体的にどのような観点で注目を集めているのでしょうか。

昆虫食が注目されている理由は? どんなメリットがあるの?

アフリカ・コンゴで昆虫を売る女性

アフリカ・コンゴで昆虫を売る女性 ©︎FAO/Giulio Napolitano

FAO調査によれば、世界中で1900種以上の昆虫が食用として消費されていて、最も多く消費されている昆虫は甲虫(31%)で、続いてイモムシ(18%)、ハチ、狩ハチ及びアリ(14%)、バッタ、イナゴ及びコオロギ(13%)ということです。

こんなにたくさんの種類が食べられている昆虫ですが、どんなメリットがあるのでしょうか。
FAOのレポートを参考に、以下の3点にまとめてみました。

  1. 地球環境に優しい
  2. タンパク質などの栄養面が優れている
  3. 生産・加工がしやすい

昆虫食のメリット1:地球環境に優しい

昆虫食が「地球環境に優しい」とはどういうことでしょうか。
まず「温室効果ガス」について触れます。

たとえばミールワーム(ゴミムシダマシの幼虫)の場合、下図のように他の家畜と比較するとタンパク質1キロあたりの温室効果ガスの生産量が少なく、環境負荷が低いと言われています。

昆虫と家畜の温室効果ガス排出量比較のグラフ

©2012 Oonincx, de Boer(日本語部分は筆者訳)

続いて、1キロのタンパク質を得るために必要な「エサの量」を比較します。
これは、肉の種類や製造工程などによって左右されますが、おおむね1キロの牛肉を作るには8~10キロほどの飼料(エサ)が必要だと言われています。

一方、1キロのコオロギ肉(可食部の量を比較していることがわかるよう肉とつけています)を作るのに必要な飼料は2キロと大きな差があることがわかります。

また、「出荷までの時間」も考慮してみます。
牛は出荷までに30カ月、豚は6カ月ほどかかるところ、コオロギなどの昆虫は1週間から1カ月ほどと生産から消費までの時間が短いことが特徴です。

以上から、昆虫は家畜と比較すると

  • 生産時の温室効果ガス発生量が少ない
  • 少ないエサで早く食べられる状態になる

ということが言えます。

この「生産時の環境負荷が小さいこと」が一番のメリットであり、FAOが強調している点です。

また、昆虫は生活廃棄物(食材、人間廃棄物、動物廃棄物、堆肥)をエサにすることができます。
つまり、本来は廃棄するものからタンパク質などを生産することができるということです。
この点からも、昆虫食は環境に優しいと言えるでしょう。

昆虫食のメリット2:タンパク質などの栄養面が優れている

昆虫食。日本産コオロギのロースト

これは日本で養殖された「日本産」コオロギ。エサにナッツ類を与えていて味もナッツ風味

昆虫が家畜と比較して環境効率が良いことは理解できました。では、栄養価ではどうでしょうか。
昆虫食品の製造・販売を手がける合同会社TAKEOが公開している「コオロギと食肉との栄養比較」の図を見てみます。

昆虫食。コオロギと食肉の栄養比較のグラフ

こうしてみると、生のコオロギの栄養価(タンパク質)は他の食肉とほぼ同等であることがわかります。

以上から、コオロギは「環境負荷が小さく、効率的にタンパク質を摂取できる食品」である
と言えるでしょう。

また、多くの昆虫が魚と比較して脂肪酸が多く「栄養不良の子どものための栄養補助食品」として期待することができます。
さらに繊維、銅、鉄、マグネシウム、マンガン、リン、セレン、亜鉛などの微量栄養素も多く含まれているため、偏った食生活の改善にも役立つのではないでしょうか。

昆虫食のメリット3:生産・加工がしやすい

昆虫は「生産時の環境負荷が低い」「栄養価が高い」という点がわかりました。
最後に「生産・加工のしやすさ」というメリットに触れます。

イギリスの昆虫食製造・販売会社のEAT GRUBによると「可食部1キロ」の生産に必要な農地の面積はそれぞれ以下の通りです。

鶏肉 45平方メートル
豚肉 50平方メートル
牛肉 200平方メートル
コオロギ 15平方メートル

昆虫は家畜と比較して「狭い面積」での生産が可能です。

また、上でも触れたように生産時に使う飼料の量も(家畜と比べて)少量で済みます。

気温など天候条件が昆虫生産に合致している地域であれば、バケツなどを使った小規模な養殖をすることも可能です。

加工についても、素揚げをする、ゆでてペーストにする、乾燥させて粉末にするなどの際に、家畜と比べて容易に扱えます。

こういった生産・加工の容易さから、途上国、先進国どちらにおいても収入の向上、起業機会の創出につながると期待されています。

昆虫食は危険? 気になるデメリット

昆虫食。セミのアイスクリーム

セミのアイスクリーム(画像提供:佐伯真二郎)

日本人にとって今はなじみの薄いものになってしまっている昆虫食ですが、近年の環境意識の高まりなどを受けて世界的に注目を集めていることは前述しました。

しかし、昆虫を食べる習慣がない人にとっては昆虫食への漠然とした不安があって当然です。アレルギーや病気への不安、見た目への抵抗、未知の味への戸惑い、さらには「本当に昆虫を食べることのデメリットはないのか?」といった不安にはどう対処したらよいのでしょうか。

昆虫食で病気やアレルギーになる?

昆虫食。バッタのピザ

バッタのピザ(画像提供:佐伯真二郎)

デング熱やマラリアなど一部の病気を昆虫が媒介することから、「昆虫を食べると病気になってしまうのでは」という不安を抱く人もいると思います。
この点は、FAOが以下のようにはっきりと否定しています。

昆虫が他の食材のように衛生的な環境で扱われる限り、病気や寄生虫が人間に伝染された事例は知られていません。

一方で、アレルギーについては昆虫が甲殻類(エビ・カニなど)と同じ無脊椎動物のため、それらに対してアレルギーを持つ人は症状が起きる可能性があることに言及しています。

昆虫食。注意書き。甲殻類アレルギー

筆者が自動販売機で買った「昆虫ミックス」の裏面には「甲殻類アレルギーがある人は食べないで」と記載がある

見た目への抵抗がある

昆虫を日常的に食べたことがなければ、その姿形を見て食欲がわかなくなることもあるでしょう。
タコや納豆などが海外の人に受け入れづらい食材であることと同じですね。

しかし、こんなに昆虫食が注目されているのであれば「チャレンジしたい!」という気持ちになるのもわかります。
そんな時におすすめなのが「コオロギうどん」です。

昆虫食。コオロギうどん

先ほど紹介した自販機の中にもありました

「コオロギが100匹練り込まれたうどん」と銘打たれたこのうどんならば、昆虫の姿を見ずとも風味を感じることができます。

さらに、「タガメサイダー」というものもあります。

こちらはさわやかなタガメの香りがふんわり鼻腔をくすぐります。

タガメサイダーは筆者も飲みましたが

おいしいメロンサイダー

でした。

昆虫食。タガメサイダー

虫が食べられない人でも「これはおいしい!」と言うタガメサイダー。昆虫感なし!

味に抵抗がある

形はなんとか受け入れられるんだけど、未知の味に戸惑うという人にはこちらのスナックがおすすめです。

昆虫食。コオロギスナック

Roasted Cricketsは「ローストコオロギ」

これも、食べてみましたが

普通のスナック菓子

です。

バーベキュー味がきっちりついているので、昆虫を食べている感じは全くありません。
超絶ビールが欲しくなります。

昆虫食。スナック菓子

コオロギ以外にもサゴワームやミックス(バッタ・オケラ・カイコ等が入っている)を試してみた。どれも揚げたエビみたいな食感と味でした

また、輸入元を見ると他のものがタイ産だったのに対してローストコオロギはイギリス産でした。国によって好まれる味付けとかもあるのかしら?

昆虫食。イギリス、ヨーロッパのもの

イギリスでも生産されていることにも驚き!

昆虫食の未来は明るい? メリットたくさんの昆虫食にトライしてみては

昆虫食。タイのレストランでタガメのラビオリ

タイの高級レストランで出される「タガメのラビオリ」。なんと一皿1000円以上する(画像提供:佐伯真二郎)

今世界で注目を集めている昆虫食ですが、その理由は

  • 生産時の環境負荷が低い
  • 栄養価が豊富
  • 生産・加工がしやすい

というものでした。

今後も世界的な環境意識の高まりを受けて昆虫食のさらなるニーズ増加が予想されます。
実際イギリスの世界的金融大手バークレイズは2030年の昆虫食市場を80億ドルほどになると推定しています。

昆虫食文化のある東南アジアなどではもちろん、ヨーロッパやアメリカ、そして日本でもこれをビジネスチャンスととらえた新しい企業がどんどん出てきています。

もしかすると、日本でも食材の選択肢として「昆虫」が普通に選ばれる日が来るかもしれません。

タンパク質豊富で地球にも優しい昆虫食、一度試してみてはいかがでしょうか。

実は、昆虫食のレシピがすでに多く開発されています。専門のレシピ本も出版されていますので興味がある人は調べてみてください。

ただし、昆虫には毒のあるもの、食に適さないものがあり、場所によっては昆虫の採集を禁じているところもあります。

また、調理する際には必ず「中心温度が75度以上で1分以上加熱」するようにしましょう。

というように注意事項もあるので、昆虫を自分で調理するのにはハードルがありますよね。まずは昆虫食が食べられるレストランや自動販売機で気軽に昆虫食にチャレンジしましょう!

参考文献:
「昆虫は美味い!」内山昭一
「昆虫食入門」内山昭一
「世界をすくう虫のすべて」文研出版
「おいしい昆虫記」佐伯真二郎

関連記事
サバクトビバッタの日本への影響は? 世界の農産物への影響は?
サバクトビバッタの日本への影響は? 世界の農産物への影響は?
2020年、新型コロナウイルスによって世界が打撃を受けていますが、もう一つ大きな危機がすでに起こっています。その危機とは、サバクトビバッタの大量発生です。2020年の初めごろから東アフリカ諸国などで確認され、国連食糧農業機関(F…
脱プラスチック。野菜を包む“ひと工夫”は環境のためにも差別化にもなる?
脱プラスチック。野菜を包む“ひと工夫”は環境のためにも差別化にもなる?
環境を考慮しよう!SDGsの達成に協力しよう!という世界的な潮流もあり、脱プラスチックの動きが広まっています。2020年7月には日本でも小売店でのプラスチック袋の有料化が始まります。また、消費者の意識も変化しています。では、この…

関連キーワード

シェアする

  • twitter
  • facebook
  • LINE

関連記事

タイアップ企画

カテゴリー一覧