脱プラスチック。野菜を包む“ひと工夫”は環境のためにも差別化にもなる?

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脱プラスチック。野菜を包む“ひと工夫”は環境のためにも差別化にもなる?

脱プラスチック。野菜を包む“ひと工夫”は環境のためにも差別化にもなる?
最終更新日:2020年06月22日

環境を考慮しよう!SDGsの達成に協力しよう!という世界的な潮流もあり、脱プラスチックの動きが広まっています。2020年7月には日本でも小売店でのプラスチック袋の有料化が始まります。また、消費者の意識も変化しています。では、このSDGsって農業にどう関係あるのでしょうか。今回は、SDGsと農業との関係、そして脱プラスチックのアイデアなどを紹介します。

SDGsとプラスチック。脱プラスチックで持続可能な社会の実現を

2020年7月1日から、プラスチックバッグ、いわゆる「レジ袋」が全国の小売店で有料になります。

一部のお店では先んじて有料化されているところもあり、エコバッグの利用が日常的になっている人も多いのではないでしょうか。

世界のプラスチック生産量は2015年の時点で約4.07億トンで、廃棄されるプラスチックのうち、14〜18%がリサイクル、24%が焼却、残りが不法に投棄・焼却されているという報告があります。

また、回収されたプラスチックゴミの79%が埋め立て、または海洋などへの投棄がされており、2050年には海洋中のプラスチックの量が魚の量を上回るという推計もあります。

「SDGs(エスディージーズ)」という単語を聞いたことがあるでしょうか。
SDGsは「Sustainable Development Goals」の略で「持続可能な開発目標」という意味になります。

SDGsは2015年9月の国連サミットで採択され、国連に加盟している193カ国が2016年から2030年までに達成するとして掲げた17の目標の総称です。

このSDGsには持続可能な食糧の生産やフードロスの削減などの課題が含まれ、農業と深くかかわっています。

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設定された17の目標=ゴールのうち、ゴール12では食糧生産や消費時に排出される廃棄物の削減が、ゴール14ではプラスチックゴミの削減が掲げられていることから、プラスチックがよく使われる農業資材、野菜の梱包資材についても対応が求められています。
つまり、野菜が流通するときのプラスチックの包装やレジ袋の削減は、国際的な流れと言えそうです。
ということで、プラスチックでも特に「プラスチックバッグ」(レジ袋)と「包装用の袋」に焦点を当ててみたいと思います。

農産物・食料品の流通に関わるプラスチック製品削減

プラスチックゴミ問題に対する世界的な意識の高まりから、各国はさまざまな対策を講じています。

例えばUNEP(国連環境計画)が2018年に出したレポートによると、アジアでは7カ国、アフリカでは実に26カ国がレジ袋の利用を禁止しています。他の地域でも多くの禁止国があります。

さらに、レジ袋だけではなく他のプラスチック製品の利用についても制限を設ける国が出てきています。

台湾では2020年に無料のプラスチック製ショッピングバッグ・使い捨て容器等を小売店で提供することが制限、禁止され、2025年には使用に対して手数料の支払い義務が課され、2030年には全面禁止が計画されています。

フランスでは2020年1月から使い捨てプラスチック容器の使用が禁止されています。

こうしたプラスチック問題に関する全世界的な取り組みを受けて、消費者側も「人や社会、環境に配慮した商品だから買う」という「エシカル消費」という価値観が広がりを見せています。

実際、マーケティング会社であるニールセンが行った60カ国3万人を対象にしたアンケート調査では、「持続可能性に配慮した商品には多少お金を多く払ってもいい」という消費者の割合が2013年は50%、2014年は55%、2015年には66%まで増加しています。

他国の「野菜を包装するプラスチック袋」に代わるもの

このように、他国ではプラスチック製品の規制が日本よりも厳しいところが多く、また消費者の意識の高まりも受けて「野菜を包装するプラスチック袋」に代わるものが開発されています。

それらをちょっとご紹介します。

タイ、ベトナムの「バナナの葉」包装

タイのリンピンスーパーマーケットでは、2019年3月に野菜の包装をプラスチックからバナナの葉に変えました。

バナナの葉を使い包装された野菜たち(画像提供:Perfecthomes.co.th)

画像提供:Perfecthomes.co.th

この取り組みは、ビジネス誌Forbes(フォーブス)などにも取り上げられ、多くのポジティブなコメントを集めています。
同様の動きは隣国にも広がり、ベトナムにも野菜をバナナの葉で包装するスーパーが現れています。

タイでは昔お弁当をバナナの葉に包んでいたそう。
今ではそのシンプルさと環境への配慮が「クール」だと、バナナの葉で包んだお弁当を再現して販売している業者も出ているそうです。

バナナの葉で包まれた「タイの昔ながらのお弁当」を再現したもの。確かにかっこいい

インドでは「食べられるビニール袋」

「食べられるビニール袋」も実用化されています。
原料はジャガイモ、タピオカ、トウモロコシ、天然でんぷん質、植物油、バナナ、花油など12種類。
見た目はビニール袋にそっくりですが、生分解性があり180日以内に自然に帰るそう。

また、室温の水の中では1日以内に、さらに沸騰したお湯に入れると15秒で分解されるとのこと。

色鮮やかなショッピングバッグ。インクも自然素材とのこと(画像提供:EnviGreen Biotech India)

プラスチックは少ない方がいい? 野菜の包装で差別化も

ここまで、SDGsと農業の関係、各国のプラスチック問題への対応と消費者の意識の変化、そして新しい包装方法を紹介してきました。
しかし、日本の消費者はどれくらい環境、脱プラスチックを意識しているのでしょうか。

それを示す一つの調査があります。タキイ種苗が全国の20歳以上の男女600人(※)を対象に行った「2019年度 野菜と家庭菜園に関する調査」です。
※ 農業関連従事者、食料/飲料(酒類除く)の卸売・小売業従事者を除く。

このアンケートには「野菜」に関するさまざまな設問があり、その中には「プラスチックゴミと野菜」に関するものもありました。

「野菜を購入するとき、包装がない(少ない)ものに対して抵抗を感じるか」という設問に対しては「抵抗を感じない」が30.2%、「あまり抵抗を感じない」が50.2%と合わせて80%以上の人が野菜の包装がない、または少ないことに対して抵抗感を覚えないという結果でした。

タキイ種苗「2019年度 野菜と家庭菜園に関する調査」より

また、別の設問「野菜を購入するとき、包装がない(少ない)方がいいと思うか」では「そう思う」が21.0%、「ややそう思う」が39.0%という結果でした。

タキイ種苗「2019年度 野菜と家庭菜園に関する調査」より

包装がない(少ない)方がいいと思うかに対して「そう思う」「ややそう思う」と回答した人にその理由を尋ねると、最も多かった理由が「地球に優しいと思うから」でした。

野菜に包装がない(少ない)方がいいと思う理由(タキイ種苗「2019年度 野菜と家庭菜園に関する調査」より)

これらのアンケートから、環境のことを考慮して、野菜を買う時に包装がない(少ない)方が望ましいと考えている人が多いことがわかります。

こういった消費者の意識の高まりを受けて、販売時の野菜の包装を見直すことは、環境への配慮だけではなく他の商品との差別化にもつながるのではないでしょうか。

日本では「食べられるインク」で実験

日本では「包装せずに、手に取ってもらいやすくするように」と野菜に文字や顔を書いて販売するという実験が行われました。

この実験は東京都練馬区で350年続く農家・白石農園と、コンテンツ企画やプロデュースなどを手掛けるノウ株式会社が協力して行ったものです。

白石農園の直売所。木材は練馬区の古民家で出た廃材を利用しているそう。これもエコ

食用色素などを使った食べられるインクのペンを使い、野菜に直接手書きしたり、ステンシルで転写したりします。

食べられるインクで生産情報を記した練馬大根(画像提供:ノウ株式会社)

食べられるインクで顔を描いたニンジン。かわいい(画像提供:ノウ株式会社)

この実験を受けて、ノウ株式会社の担当者は「プラスチック問題への興味や関心を喚起するのに一役買ったという印象」を持ったとのことです。

脱プラの方法を考えてみた

プラスチックの利用を控えた野菜の販売方法とは、どんなものがあるでしょうか。
筆者が具体的に考えてみました。

量り売り

画像はイメージです

ファーマーズマーケットなどでは取り入れられていますが、量り売りは「販売者は個別包装が不要になる」「消費者は自分の好きな量が買える」と、win-winですよね。
毎回計量するのが手間ですが、それならスーパーのように「1個○円」として陳列すればお会計も楽になりますね!

新聞紙を有効活用

昔は、日本でもお店の人が新聞紙でいろんな商品を包装していましたよね。
野菜が英字新聞に包まれているだけで、オシャレでフランス映画の主人公になったみたいでテンションがプチ上がりませんか?
そんなお店があったら通っちゃう!!

日本の身近な天然素材も使える?

ここからは他国インスパイアです。日本で身近にあって包装に使えそうな葉っぱを考えてみました。

すると、ササの葉、ハスの葉、サトイモの葉、朴葉(ほおば)など意外に選択肢があることに気がつきました。
昔は精肉店で竹の皮や経木(きょうぎ)を包装紙の代わりに使っていました。
また、ちまきや柏餅、朴葉味噌(みそ)、桜餅など私たちの周りには「葉っぱで包んだ食品」も多くあります。

これは、竹の皮で包まれた羊かん

であれば、野菜を何かの葉っぱで包んでもいいのではないでしょうか。
いろんな葉っぱがあるので、可能性が広がりますね。

脱プラスチックには消費者側の意識の変化も重要

一方で、脱プラスチックには消費者側の理解も必要になります。

特に葉物野菜に言えることですが、野菜は、しおれます。
野菜は収穫された後も呼吸をしていて、それにより水分が蒸発ししおれていきます。

また、ただのプラスチック袋に野菜を長時間入れると、蒸発した水分が野菜に付着して結果野菜が腐りやすくなるという問題もあります。

スーパーなどの店頭に並ぶ野菜が入っている袋は、そういった問題を解決するために特殊な加工が施されています。

さらに、プラスチック包装をして陳列することには、野菜同士が触れ合って傷がついたりそこから劣化するといった事象を防ぐという意味合いもあります。

「プラスチック包装がされていないものを買う」ときにはこういったことを理解する必要があります。

では、なるべくプラスチックを減らしつつも新鮮な、おいしい野菜を買うにはどうすればいいのでしょうか。

買う側ができることとしては、例えば直売所やファーマーズマーケットのように「農家さんから直接買える」場所で野菜を買う、ということが挙げられます。
こういった場所では収穫から比較的間もない野菜を購入することができます。
収穫から経過した時間が短いほど野菜の呼吸量も少ないので、鮮度を保つための包装がされていなくても鮮度がいいものを手に入れられます。

ここの農家さんのお野菜はおいしいし、価値観も合うんだよね!という「マイ農家さん」を見つけられると、普段の食生活もぐっと楽しくなるのではないでしょうか。

脱プラスチックへ、小さなことから意識をしていこう

野菜を生産、販売する側にとっても、世界的な脱プラスチックの動きは把握する必要があるでしょう。
この動きは、消費者の意識を変え、「エシカル消費」に代表されるように消費行動も変える可能性があります。

私たちが「包装を工夫している農家さんを選ぶ」というのも脱プラスチック、環境保全につながる一つの手かもしれません。

SDGsは2030年までの達成が目標です。小さなことでも意識して、達成に協力できたらいいですね。

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