日本の風習に欠かせない花文化を支える『花き農家』とは
東北でありながら積雪がほとんどない福島県相馬市。冬は暖かく、夏は涼しい恵まれた気候は、米や野菜など豊かな農産物を育んでいます。そんな相馬市で古くから栽培されている「花き」。食用ではない花きは必需品ではないものの、日本では冠婚葬祭には欠かすことができない存在です。また、近年では趣味としてガーデニングを楽しむ人も多く、多少の推移はあるものの出荷数は安定しているといえます。
食品のように継続して消費するものではない花きは、品質にこだわる業者、消費者が多い傾向にあります。高品質な花きを市場や消費者が求めるニーズに合わせて出荷する。そこに付加価値をつけ、安定した経営を図っているのが福島県相馬市の『陽光園』の代表高玉恵治(たかだま・けいじ)さんです。その仕組みを紐解くとともに、花き栽培の魅力についてお聞きしました。
市場価格を見据えた栽培方法で価格の安定を図る経営手腕
ハウス面積700坪、露地100坪のほ場で「クレマチス」や「シクラメン」などの鉢植えを中心に花き栽培を手がける高玉恵治さん。米農家だった父が、経営安定のために露地栽培の「キク」を始めたのが花き農家としてのスタートだったと話します。
「水稲の場合、作付け面積がある程度大きくないと利益は取れないため、農業で食べていくためには、集約的な栽培をする施設栽培との併用が必要でした。私の代になって、施設栽培の花き専業農家としてスタートしたのが昭和60年頃のことです」。
と、当時を振り返る高玉さんですが、実は家業を継ぐつもりはなく、東京農業大学で花を専門に研究し、卒業後は教員を目指していたとのこと。両親の高齢化を考え30歳の時に地元に戻った高玉さんは、大学で学んだことを活かしながら徐々にハウスを増設。現在8名のスタッフと共に美しい花きを育てています。
露地とハウスの併用栽培で出荷時期の長期化に成功
そんな高玉さんが徹底しているのが「戦略的計画生産」です。市場が求める品種を最良の状態で市場価格が高い時期に出荷することを目的に、技術を磨き工夫してきたと言葉を続けます。
「1つのハウスで作ると開花時期が同じになるため、出荷が集中します。出荷時期を長くするためには、開花の時期をずらすことがカギとなります。そのため当園では、開花を遅らせるために露地で花きを寒さにさらしてからハウスに移すことを繰り返し行います。こうすることで市場価格が高い時期を狙った出荷ができるようになりました」。
花は開き過ぎると価格が下がるため、時期によって価格にバラ付きが生じます。そこにビジネスチャンスを見出した高玉さんは、露地とハウスの併用栽培で他の生産者との差別化を図ることに成功。これこそが「戦略的計画生産」だったのです。
「中でも贈答品として人気の高いクレマチスは、蕾の状態で出荷し、消費者のもとで開花するように計算して栽培をしています。また、『四季咲きクレマチス苗』も出荷しており、消費者が花を育てる楽しみが付加価値として生まれ、花屋さんの商品ロスも少なくなると考えています」。
この戦略は花の開花状態によって商品価値が変動する従来の出荷方法に比べ、価格が安定することから、経営の観点からも安定を図ることができます。しかし、開花時期を逆算して出荷するためには、綿密な栽培計画が必須であり、難しい面があるのも事実です。
「開花時期を日時単位で合わせることはプレッシャーもあり、栽培管理も大変です。しかし、その挑戦こそが花き栽培の楽しさでもあります」。
花き農家にとって、高品質の花を育てるのは最低条件。経営の安定化に重要なのは、市場が求める品種を、売れる状態でコンスタントに出荷すること。そのため、高玉さんは常に情報を収集し、市場にアピールすることを心掛けています。
新品種への挑戦! 『エール フクシマ』を世界へ
「花きをやるからには自分の手でオリジナル品種を作りたい」そんな目標を掲げてきた高玉さんは、2015年の春、クレマチスの新品種『エール フクシマ』の育成に成功します。白と濃いピンクの2色の美しい花弁を持つその花は、発見からおよそ5年の歳月をかけて育成。現在、農林水産省に品種登録を出願中で、2020年秋には認可される見込みです。
「名前は妻のアイディアから名付けました。震災や原発事故を乗り越える福島の人たちの希望になればという思いが込められています」。
花きの産地化が進む中、福島県を代表するオリジナル品種は生産者の悲願でもありました。その思いを美しい花となって伝える『エール フクシマ』は、国内品種保護のため、現在EU諸国や中国での品種登録も進められています。
「花は生活必需品ではありません。しかし、花を育て、飾ることによって心にゆとりが生まれます。新型コロナウィルスの感染拡大で私たちの日常は変わりつつありますが、そんな時代だからこそ、花を愛で、育てる気持ちを大切にしてほしいですね」。
花を育てる人たちが仕事に追われて、疲れてしまうようでは良い花は育たないという思いから、労力に余裕が持てる雇用形態を取っている陽光園。8名のスタッフが笑顔で、そして愛おしそうに苗を扱う姿がとても印象的でした。
「花にはたくさんの品種があり、自分の感性でいろんなことにチャレンジすることができて、楽しいですよ」
と、新規就農検討者にメッセージを寄せた高玉さんのその表情は、満開の花のような明るさと希望に満ち溢れているよう。
戦略的思考で安定した経営を実現する背景にある、花を愛する思いと福島の復興への願い。その輝きは色あせることなく、大輪の花のように輝き続けることでしょう。
取材協力
陽光園
〒976-0003
福島県相馬市塚部字内城226
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福島県相馬市中村字北町63番地1福島県相馬市 産業部 農林水産課 農業振興係
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