営農再開への架け橋に。出荷制限解除を目指すベテラン生産者が未来に託すこと

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営農再開への架け橋に。出荷制限解除を目指すベテラン生産者が未来に託すこと

営農再開への架け橋に。出荷制限解除を目指すベテラン生産者が未来に託すこと
最終更新日:2020年09月28日

2020年8月 27日、福島県双葉町両竹(もろたけ)地区の一角に設けられた畑。
東日本大震災及び東京電力福島第一原子力発電所の事故から10年近くたったこの日、双葉町は営農再開に向け大きな一歩を踏み出しました。
両竹地区農地保全管理組合が中心となって行われた試験栽培の様子と、出荷制限解除への意気込み、さらには営農再開に向けた率直な思いをお聞きしました。

荒地の一角に畑が!待望の試験栽培始まる

福島県双葉町両竹地区。かつてこの地には春から夏にかけて萌える緑の稲、秋には黄金に輝く稲穂の風景がありました。東日本大震災による津波被害と東京電力福島第一原子力発電所の事故によって甚大な被害を受けたほ場は現在、ほとんどが荒地となり、わずかにかつての面影を残すにとどまっています。
「営農再開は難しいのでは……」という不安を打ち消すかのように現れた一角の畑。同地区で野菜栽培の安全性を確認する待望の試験栽培が2020年8月27日に始まりました。

もともと水田が広がっていたところに、計6aの畑が作られ、畝(うね)が立ったほ場に小松菜、ほうれん草、キャベツ、ブロッコリー、カブの5品目が植えられました。
気温30度を超える炎天下の中、熱心に作業をする『両竹地区農地保全管理組合』のメンバー5人。故郷の双葉町での農作業にそれぞれの表情は明るく、笑顔も見受けられました。

30度を超える炎天下の中、試験栽培のほ場で農作業を行う『両竹地区農地保全管理組合』のメンバー

30度を超える炎天下の中、試験栽培のほ場で農作業を行う『両竹地区農地保全管理組合』のメンバーら

昨年、同地区では避難指示解除前にも試験栽培を行いましたが、収穫を目前に控えた10月、台風19号による被害で畑が冠水し、収穫に至らなかった経緯があります。「やっとここまできたのに、、、というのが正直な気持ちでした」と、谷充(たに・みつる)組合長は当時の心境を振り返ります。待望の試験栽培を終え、「営農再開への道のりはまだ険しいが、仲間と農業をやるのはやはり楽しいですね」と、笑顔を見せていました。台風に備え、今年は畝をカマボコ型にして高くする工夫が施された畑の野菜は、順調に生育すれば10月下旬から11月上旬に収穫を迎える予定です。

試験栽培のほ場を見つめる『両竹地区農地保全管理組合』の谷組合長

試験栽培のほ場を見つめる『両竹地区農地保全管理組合』の谷組合長

試験栽培を機に、営農再開に向けて動き出した双葉町ですが、本格的な再開には乗り越えるべき課題があるのも事実です。それらと向き合い、未来に託す思いについて、生産者、行政それぞれの視点でお話を伺いました。

双葉の農業を次世代につなぐことこそが使命

両竹地区農地保全管理組合は、除染後のほ場管理を目的に2018年に発足しました。メンバーの多くは避難先のいわき市などから同地区に通い、除草作業などを行ってきました。

「私の家は今回試験栽培が行われた畑のすぐ近くにあります。現在はいわき市で避難生活を送っていますが、双葉に戻るたび、雑草だらけの農地を目の当たりにするのは苦しかったです」。
こう話すのは佐藤孝(さとう・たかし)副組合長。震災前、兼業農家として水稲栽培を行っていた佐藤さんは昨年、定年退職を迎えました。震災から10年という月日は生産者の生活環境をも大きく変えました。

『両竹地区農地保全管理組合』の佐藤孝副組合長

「両竹地区にかつてのような田園風景を取り戻したい」と、今後の展望を語る佐藤孝副組合長

「生産者の多くは高齢化が進み、試験栽培を無事に終えて野菜の出荷制限が解除されても営農を再開するのは難しいでしょう。そんな現状で私たちができることは、次世代に双葉の農業を託すための準備を進めることです」。
厳しい現実を受け入れると共に、未来への希望を言葉にする谷組合長は、震災後に身を寄せた埼玉県で、農機のオペレーターの手伝いをしていました。その時に、胸によぎったのは懐かしさと生きがいである農業への思いだったと言葉を続けます。

「出荷制限が解除されても、かつてのように自分の代で田畑を耕すのは難しいでしょう。しかし、私たちには長年の経験と農業への情熱があります。その思いを試験栽培を通じて広くアピールして、次の世代につないでいきたいと考えています」。

全ては双葉の未来のために−。谷組合長と佐藤副組合長は両竹地区を皮切りに、試験栽培の取組みを町内の他の地区に広げ、2022年春頃に予定されている避難指示解除区域の拡大と居住の再開に弾みをつけたいと、抱負を語ってくださいました。

「結(ゆい)」の精神で農業復興を目指す、行政の取り組み

「結」の精神で農業復興に取り組む双葉町は2022年春以降の営農再開を目指しています

収穫した野菜の安全性が放射性物質検査で確認された場合、双葉町は県を通して、両竹地区を含む本年3月に避難指示が解除された地域での野菜の出荷制限の解除を国に求める予定です。それに向け準備を進める同町ですが、農業復興のためには担い手育成が最重要課題となります。
「町民にアンケートを取った結果、営農再開希望者は少ないことがわかりました。これを受け、町としては今後、農業法人の誘致や新規就農者を迎え入れる体制を整えていきたいと考えています」と、双葉町役場 農業振興課 農業振興係の佐藤照智(さとう・てるとも)さんは語ってくれました。

2020年8月27日双葉町両竹地区で行われた試験栽培に参加した佐藤さん

2020年8月27日に双葉町両竹地区で行われた試験栽培に参加し、生産者の方々と一緒に汗を流した佐藤さん

壊滅的な被害から再び立ち上がろうとしている双葉町は、生産者と行政が力を合わせ、前進しています。それは日本の農村社会に古くからあった共同労働「「結(ゆい)」の姿によく似ています。
「田植えや稲刈りといった繁忙期は、複数の農家が協力し合い、それぞれの家の田植えを順番に行っていました。高齢化や担い手不足が深刻化する今こそ、集落ごとに組織を作り、『結』の力でこの難局を乗り越えていきたいですね」と、谷組合長も行政に期待を寄せます。また、佐藤副組合長は、農地の保全管理を進めながら、将来的に稲作ができる環境を整えたいと展望を話します。
「水路の整備など、現段階で稲作を再開するのは難しい状態です。まずは畑からスタートし、田園風景を取り戻すことができたらと考えています」。

双葉町両竹地区の試験栽培で植えられたブロッコリーの苗

双葉町の営農再開の大きな1歩となる試験栽培で植えられたブロッコリー

今もなお、住民全員が避難を続けている双葉町では地元農家とともに町内で営農できる環境作りを進めながら、帰還開始の目標である2022年春頃までに新規就農者支援制度等を整え、農業の再生に取り組んでいく方針です。

「畑に長雨は禁物。台風が心配だけれど、収穫が楽しみだね」と、笑顔を見せる谷組合長。
わずか6aの試験栽培。しかし、その存在は町の復興に向けた大きな第一歩となることでしょう。

■お問合せ先■

〒974-8212
福島県いわき市東田町2-19-4
双葉町役場 農業振興課 農業振興係 
TEL:0246-84-5214  FAX:0246-84-5212

福島県双葉町ホームページはコチラ

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過去掲載記事:福島県双葉町は復興再生へ向け、確かな一歩を踏み出した。

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