生産者の高齢化は待ったなし。省力化の実現がコメ作りのカギ!
農業従事者が高齢化しているとはよく耳にする話です。生産者の平均年齢は67歳。約7割を60歳以上が占め、50歳未満は約1割に過ぎません。このままでは、5年後、10年後に、多くの生産者が続々と引退し始めると同時に、ますます多くの農地が耕作放棄地になってしまいかねません。今のうちに、担い手に農地を集積・集約化していく必要があります。
ただ、農地を引き継いで規模を拡大しようにも、複数の小さな圃場が分散しているようでは効率的な営農はできません。農地の集積・集約化と並行して、少ない担い手でも従来以上の圃場を管理できるよう、いかに農作業の省力化を図るかが喫緊の課題となっています。
メリットの大きい直播栽培
米づくりにおける省力化の方法の一つが、種籾を水田に直接播種する直播栽培です。あらかじめ育てた苗を植える移植栽培に比べ、育苗と田植えの労力を大幅に減らせるという利点があります。
育苗のプロセスだけとってみても、移植栽培ではハウスや育苗箱を準備する手間がかかり、その後の代掻き、苗運びや苗補給など、実に多くの作業が必要です。その点、直播ならこうした作業を大幅に簡略化できます。農水省の調べでは、10aあたりの労働時間を比較すると、移植では約20時間かかるところ、直播では15時間で済み、およそ20%も省力化できるというデータもあります。
直播栽培技術の習得と実践に壁
しかしながら、直播栽培を取り入れている水田の面積は全体の2.3%とごくわずか。作業の省力化につながるにも関わらず、なぜ移植のほうが一般的なのでしょうか。それは直播には技術的に難しい部分があるためです。
湛水直播には2つの代表的な手法として「鉄コーティング」と「カルパーコーティング」があります。鉄コーティングは、「表面播種」において代表的な手法です。表面播種は還元障害(※)を回避するため土壌表面に播種する方法ですが、種子が水中で浮かないように「おもり」として、鉄粉をコーティングする鉄コーティングが必要です。
※土壌還元の進行により発生した有害物質によって生育が阻害されること。
一方、カルパーコーティングは、「土中播種」において代表的な手法です。還元障害を受けやすい土中播種では、出芽・苗立ちを安定させるためカルパーという酸素発生剤のコーティングが欠かせません。コーティングには専用の機械を導入する必要があり、大泉さんによると、まずこのコーティング作業が直播導入の最初のハードルになるそうです。
そして、鉄コーティング(表面播種)では、いくら種子コーティングがうまくできても圃場が均平になっていなければ、出芽・苗立ちが安定しません。「レベラーという機械である程度は均平になりますが、大型の機械であるので使用できる圃場が限られ、どうしても水尻側が下がり水たまりのようになってしまうところが出てきます。そうすると、苗腐病(※)を起こして苗立ちが大きく低下してしまいます」(大泉さん)。この苗腐病を防ぐには、頻繁に圃場を見回り、イネの成長ステージに合わせたこまめな水管理が求められます。
※ピシウム菌に感染することで引き起こされる病気。苗立ちが不安定になる主要因。
「播種時の土壌の硬さの調整も重要です。土壌が柔らかく種子が土にもぐってしまうと還元障害を受けやすく、逆に硬すぎると根が土中に活着せず、浮き苗となってしまいます」と大泉さん。こうした点でも直播は難しいと感じる生産者が多く、移植が一般的に根付いてきたのです。
独自コーティング種子で安定した出芽・苗立ちを実現
「課題を解決し、より多くの人が直播のメリットを享受できるようにしたい」。そう考えたシンジェンタ ジャパンでは、2012年から直播に適した種子処理技術の開発に着手しました。その結果、湛水直播に関するさまざまな課題を解決する新ソリューション『RISOCARE(リゾケア)』が誕生しました。
『RISOCARE』ではコーティング済みの種子が届くので、コーティング機や技術の習得は不要です。生産者は代掻きした圃場に種子を播くだけで、移植栽培における育苗から田植えの作業を省力化することができます。
ソリューションを推進する製品の第一弾としてリリースされたのが、独自のコーティング処理を施した『リゾケアXL』と呼ばれる種子です。『リゾケアXL』では「酸素供給」の機能と「おもり」の機能を有する独自コーティング剤が使われており、さらに苗腐病の予防やイネミズゾウムシやイネドロオイムシなど初期害虫を防除するための成分が配合されています。これまでよりも安定した出芽・苗立ちを期待できるうえ、水管理の負担を大きく軽減します。
「『リゾケアXL』なら、従来の直播を断念した方や、未経験の方も気軽に取り組んでいただけるはずです」と大泉さんは話します。
『リゾケアXL』にはまた、ドローンを活用したスマート農業にも対応できるというメリットもあります。通常の鉄コーティングをした種子は、鉄粉が目詰まりしてドローンでは使いづらいという声を聞きますが、ダストが出ない工夫を施した『リゾケアXL』は、ドローンによる播種にも向いているそうです。
もちろん通常の乗用型の播種機や背負式動力散粒機を含め、圃場のサイズや条件に合わせた播種方法を選ぶことができます。乗用型であれば苗用のアタッチメントを種子用に変えるだけで済み、しかも苗より種子のほうがいったん充填すれば大面積をカバーでき、苗補給が必要な移植に比べて圧倒的に手間も省けます。「2人でやっていた作業が1人でできますから、直播の省力化というメリットを大きく生かせます」(大泉さん)
移植と直播の好バランスで持続可能な米づくりを
「移植栽培しかしてこなかった方もぜひ直播に挑戦してほしい」と大泉さんは言います。「例えば、高齢になりこれまで同様の作業が難しくなってきた方や、離農する生産者から圃場を引き継ぎたいものの、人を雇用する余裕がない方こそ、ぜひ省力化を図りやすい直播を試していただきたいです」と続けます。
もっとも、シンジェンタ ジャパンが提案するのは、全面的な直播への切り替えではありません。「まずは『リゾケアXL』を試していただき、生産者の事情や地域の特性に合わせ、省力化や収益性アップに最も効果のありそうな移植と直播のバランスを選んでいただけたら」と大泉さん。一部に直播を取り入れることで、過重労働を見直したり、規模拡大を図ったりするための選択肢の一つとして捉えてほしいと話します。
「水田には食料生産の基盤という意味だけでなく、生物多様性の保全、また自然災害から集落を守る治水機能など、多面的な機能があります。持続可能な米作りの在り方を探るお手伝いを通して、地域の未来にも貢献できたらと考えています」と大泉さん。
これからの米作り、そして地域の未来を考える際に、『RISOCARE』が提案する新しい直播栽培は一つの道を示してくれるはずです。
お問い合わせ
シンジェンタジャパン株式会社
アグリビジネス事業本部 RISOCARE事業部
〒104-6021 東京都中央区晴海1-8-10 オフィスタワーX 21F
HP:https://www.risocare.jp
お問い合わせはこちら