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チャンスフラワーとは? 生産者も消費者もWin-Winな戦略

チャンスフラワーとは? 生産者も消費者もWin-Winな戦略

新型コロナウイルスの流行でおうち時間が増え、花に親しむ人が増えています。最近では売り場の活性化も兼ねて、アパレル大手のユニクロや無印良品などのように生花販売に参入するケースが目立ってきました。株式会社hanane(はなね)では、約2年前から「花のある生活」がより身近になるよう独自の事業を展開。通常の生花販売に加え、「規格外生花」を取り扱い、それらを「チャンスフラワー」と名付けて花に触れるきっかけを多くの人に提供しています。もっと気軽に花を楽しむきっかけとなるチャンスフラワー。その魅力や扱い始めた経緯など、花業界では画期的な取り組みについてせまります。

チャンスフラワーとは何か

チャンスフラワーとは規格外の花を指します。野菜でいうところの「曲がったり、太すぎたりするキュウリ」をイメージすると分かりやすいかもしれません。花の場合は茎の長さや太さがまばらなもの、花の輪の大きさに差があるものが規格外として市場で値がつけられず、通常は廃棄されてしまいます。そのような花をhananeで仕入れ、「チャンスフラワー」と名付けて1本100円で販売。これはおよそ半値以下の破格です。

ラナンキュラスのチャンスフラワー

茎が曲がっているラナンキュラスのチャンスフラワー

hananeは当初、神奈川県内の契約農家へ直接足を運んで集荷していましたが、2020年5月から葛西市場を運営する東京フラワーポート株式会社との連携・協力に始まり、現在では複数の市場から全国のチャンスフラワーを集荷するようになりました。種類も本数も拡大し、消費者にとっても楽しむ幅が広がりました。

「チャンスには『偶然の好機』や『可能性』という意味があり、お花を手にとった人が笑顔になるきっかけになるようにという願いを込めています」

そう話すのは株式会社hanane代表の石動力(いしどう・ちから)さん。

株式会社hanane石動

株式会社hanane代表の石動力さん

石動さんは高校卒業後、車の運転がしたいと思い、ドライバー募集をしていた生花店に就職しましたが、当時は花への関心は一切ありませんでした。このままずっと運転を続けられたらと切に願っていましたが、配達は花屋の下積みの一環。1年経ち、いよいよ店頭に立って花を束ねる立場になりました。チューリップがどの花かも分からない状態でスタートしたものの、もともと物作りが好きだったこともあり、花を束ねて気持ちを表現できる花屋の仕事に瞬く間に魅了されました。6年間の勤務を経て、さらなるスキルアップのためドイツへ渡りました。そこでの経験こそが、hananeを作る原点となります。

「買い物帰りの主婦の方が、普通にお花を買っていく」

石動さんは、ドイツで目の当たりにした日常の光景が今でも脳裏に焼き付いていると言います。
日本ではまだまだ花は特別な存在。花屋には入りづらいし、日頃買うには高く、何を選べば良いかも分からない。このように思ったことがある人は多いかもしれません。ドイツでは、1輪でも気軽に花を手に取る文化が根付いていました。帰国後、偶然出会ったチャンスフラワー。これを革新の武器に、「世界にたくさんの笑顔を咲かせる」という理念を掲げ、日本で文化作りに邁進(まいしん)しています。

チャンスフラワーの魅力

実際にお客さんから聞いたチャンスフラワーの魅力は、手に取りやすく分かりやすい「価格」、一本一本違う「個性」、そして気軽に選べる「体験」です。hananeではチャンスフラワーを購入できる機会を「花つみ」と呼び、並べられたチャンスフラワーの中から自由に選ぶことができます。お気に入りを探し、自分ならではの組み合わせを考えていく過程が楽しいと評判を呼んでいます。

hanane店頭での花つみ

hanane店頭で行われている花つみ

東京・虎ノ門の実店舗では火曜・金曜の曜日限定で開催され(2020年12月より月曜・木曜に変更)、なんと多い日には1日100人を超えるお客さんがチャンスフラワーを求めて店舗に訪れます。ランチタイムには外で並ぶ人の列が見られ、男性客も3割を占めるそうです。種類を問わず、どの花も1本100円という分かりやすい価格で店頭で選べる花屋はこれまでになかったかもしれません。花を購入する消費者の悩みを解決し、より身近に感じてもらう工夫がうかがえます。

チャンスフラワーを取り扱うまでの経緯

石動さんは修行をしていたドイツからの帰国後、フリーランスのフラワーアーティストとして活動をしていました。しかし花を広めるアイデアは一向に浮かびません。そこで、まずはビジネスを学ぼうと花に関連する仕事は一切やめ、ベンチャー企業に就職。入社4年後に取締役管理部長に就任し、東証マザーズに上場を果たして退任、その4年後には転職したベンチャー企業のCFO(最高財務責任者)に就任して再度東証マザーズ上場を果たしました。花業界を離れて約10年が経ち、いよいよ花の事業を始めようとベンチャー企業勤務の傍ら業界の勉強を再開しました。
その中で出会ったビジネスの種こそが、チャンスフラワーでした。2015年頃、友人から規格外の野菜があるという話を聞き、「野菜にあるなら、花にもある」と思い、東京農大の教授に相談したことがきっかけです。そこで紹介をしてもらったJAいせはら(現JA湘南)の職員と現地の花農家のハウスを回り、ある軒先で運命の出会いが訪れました。玄関の軒先で生産農家と話をしていると、ふと足元に花が入ったダンボールを発見。これは何かと尋ねたところ、市場で値がつけられない規格外生花だったのです。確かに茎の太さや長さにばらつきはあるものの、どれもきれいなものばかり。捨てられるとは忍びなく、その場ですべて買い取りました。

奇跡的な出会いを果たしたものの、農家の理解を得ることは平坦な道のりではありませんでした。賛同してくれる農家がいる一方で、規格外生花の存在を聞いても「そのような花はない」「あっても販売するなんてプライドが許さない」「規格内の花が売れなくなったらどうする」などの声も多くあがりました。しかし熱心に思いを伝えるうちに、かたくなに拒んでいた1軒の生産者が一転。非常に協力的に応援してくれるようになり、徐々に紹介も増え、理解を得られるようになっていきました。そこから約1年、チャンスフラワーの認知も少しずつ広がり、飲食店やカフェなどの店頭で扱いたいという声が次第に増えてきました。

初期の花つみ

初めて外部で開催した花つみの様子

販路拡大に伴い、仕入れ先の確保を急ピッチで進めていかなくてはいけない状況となりました。その時協力してくれたのは、なんと市場でした。当初、規格外の花の仕入れに協力してもらえるとは思ってもみなかった石動さんはとても驚きましたが、2020年5月には東京フラワーポートとの連携・協力がスタートし、量も種類も5倍へと拡大。物流が効率化したことで、より多くの花を集める仕組みが整いました。2019年と2020年の6月で比較すると、仕入れ量は700本から9000本へと増加。現在では北足立市場や姫路生花卸売市場など新たに連携する市場が増え、仕入れ量の拡大とさらなる販路開拓へ向けて勢いをあげています。

初期契約農家にインタビュー

初期の契約農家の大貫亘(おおぬき・わたる)さんは、カーネーション農家の2代目です。さまざまな品種のカーネーションが一面に広がる農園に足を踏み入れると心が躍ります。
最初にhananeの取り組みを知ったのは、JAいせはら(現JA湘南)の紹介だったそうです。

初期農家の大貫さん

hananeの初期契約農家の大貫さん

なぜ契約したのか

契約しようと考えた理由について、大貫さんはこう説明してくれました。「これまで市場に出せなかったお花を回収に来てくれる(※)というのは大変助かる話で、すぐに快諾しました。10月の時期だと規格外として廃棄する量は大体1〜2割です。これまでそのような花は細かくして肥料にしたりと、表立って販売することはなく処理していました。ですが、その中でも短いものなどはアレンジメントや曜日限定で販売するなど有効活用するという話だったので、収入が増えるという点で生産者にとってはありがたい取り組みでした」
※ 現在は市場に出荷し、市場からhananeが入荷しています。

実際にサービスを利用してみて

カーネション農園

大貫さんのカーネーションハウス

では、実際にサービスを利用してみて、どのように感じているのでしょうか。「この活動によって多くの方がお花に触れている姿を見るのはとてもうれしいですね。手塩にかけて育ててきた花を捨てるということは、今までの作業が無駄になるということです。やはり寂しさもあります。ですがチャンスフラワーとして出荷することで皆さんがお花を楽しむきっかけになり、利益も出るためやりがいにもつながります」(大貫さん)

生産者へのインタビューを通し、チャンスフラワーは消費者、生産者双方が笑顔になる循環を作っていることが分かりました。花業界では斬新なhananeの取り組みで、花に触れる裾野が広がっています。そこを入り口として花に触れ、さらに興味が湧いた人が規格内の花も楽しむようになっていると石動さんは話します。かつて憧れたドイツの日常が、今やhananeの実店舗がある虎ノ門を中心に根付きつつあります。まずは日本全国へ広げ、ゆくゆくは世界へ。「世界にたくさんの笑顔を咲かせる」日はそう遠くないかもしれません。

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